Donald Trump(ドナルド・トランプ)前米大統領がメディアおよびテクノロジーの会社を立ち上げようと思い立ち、「白紙小切手会社」を通じて上場させるつもりだというニュースが流れたとき、同社の株式を「どれだけ早く空売りできるか」とあなたが直ちに考え始めたとしても、それはおそらく許される。
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その理由を挙げよう。右寄りのソーシャルネットワークはほとんど失敗していること、会社が目指していることの範囲やライバル企業の裕福さを考えると会社の資金が著しく不足していると思われること、将来のモデルとなる過去の収益はおろか、使える製品がないことなどだ。他にも懐疑的な理由はあるが、私が好きなのは上記に挙げたものだ。
だが、問題のSPAC(特別買収目的会社)Digital World Acquisition Corp(デジタルワールド・アクイジション・コープ)」の株価は、そのニュースで急上昇した。そして、米国時間10月22日もその曲芸は続いた。
DWACは同社のクラスA株のティッカーシンボルだ。一方、DWACUは同じ株式だが半分のワラントが付いている。後者の株価はあまり上昇しておらず、少し奇妙だ。
いずれにせよ、Yahoo Financeによると、10月22日のDWACの時価総額は約47億ドル(約5358億円)だ。つまり、Digital World、別名Trump Media and Technology Group(トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ、TMTG)は、メディアとテクノロジーの世界から生まれた最新のユニコーンのようなものだということだ。確かに市場で株価がついているが、Digital Worldと合併する会社があまりにも若く、笑うしかない。とりあえず、スタートアップと呼ぶ他はない。
何もかもが合理的ではない。2021年やSPACの時代の基準から見ても、非常にばかげている。
TMTGが唯一持ち合わせ、同社を薄っぺらな市場統計にくっついている熱い空気以外の何ものでもない存在にしているのは、トランプ氏の名だ。会社のプレゼンで、ポッドキャストの人気の高まりを思い出させてくれたことに感謝したい。鮮烈な洞察だ。TMTGは、SPACの資金を使って事業を行うのであって、トランプ氏のキャッシュを使うわけではない。まして、社名にその名前を冠し、億万長者といわれた男の資金的な支援があるわけでもない。
おそらく、TMTGがあまりにも馬鹿げていることからすれば、同社の株が「memestock(ミームストック、業績に関係なくSNS等の情報で株価が乱高下する銘柄)」や「stonk(ストンク、明らかに合理的とは見えない動きをする銘柄)」になることは、わかっていたはずだ。なぜなら、極めて奇抜な企業だけがそうなるからだ。ゲームグッズのデジタル配信が増え、実店舗の小売が減っている? GameStop(ゲームストップ)を月へ打ち上げよう。レンタカーを借りている人がいない? Hertz(ハーツ)の株を買いに走ろう。そんなところだ。
というわけで、当然に、DWACはほとんど垂直上昇していく。そうならないわけがない。この株の高騰は、まったくもって滑稽であると同時に、効率的な市場理論に対する厳しい批判でもある。ビジネスとしてほとんど意味をなさないことほど、ミームとして優れた「stonk」はない。かくして、TMTGは凄まじい上昇を見せている。それが合理性をもつのは、まさにそこに合理性が見られない状況においてだ。
いつもならこの辺りで寝てしまうのだが、やるべきことがたくさん出てきたので、今はこの辺にしておこう。本日の取引に参加されるみなさま、幸運を。
画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images
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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi)