ナイジェリア発のIROKO、2022年にロンドン証券取引所AIMでの上場を計画

ナイジェリアに拠点を置くメディア企業のIROKO(イロコ)が、今後12か月以内にロンドン証券取引所(LSE)のオルタナティブ インベストメント マーケットで株式公開を申請するとみられている。

2011年にJason Njoku(ジェイソン・ンジョク)氏Bastian Gotter(バスチャン・ゴッター)氏によって設立されたイロコは、ナイジェリアの映画産業「ノリウッド」の映画コンテンツを配信し、そのコンテンツ数は世界最大を誇る。

この報道によると、同社は2000万ドル(約21億円)から3000万ドル(約32億円)を調達し、8000万ドル(約84億円)から1億ドル(約105億円)の評価を得ることになるという。 

ンジョク氏は2019年10月に、ロンドン証券取引所またはアフリカ大陸の現地取引所のいずれかで株式公開することになるとほのめかしている。しかし翌年、同社は激動の一年を過ごすことになり、CEOは株式公開のプロセスに関して完全な無言を貫いた。

2020年、同社はビデオオンデマンドサービス「iROKOtv」のアフリカでのユーザー1人当たりの平均収益(ARPU)を7~8ドル(約730円~840円)から20~25ドル(約2100円~2600円)に引き上げる計画を立てていた。最初の4か月間はその目標が達成できそうに思われたが、パンデミックによるロックダウンの恐れがある中、ナイジェリアやその他のアフリカ市場では一般消費財への支出額が減少した。その後、登録者数は70%減少し、5月には同社の従業員の28%が無給休暇を余儀なくされた。しかし、iROKOtvの現地市場の数字とは対称に、ロックダウン中に国際的な加入者数が200%増加し、その結果25~30ドル(約2600円~3200円)のARPUを記録した。

しかし8月、さらなる悲報が同社を襲う。CEOが150人の従業員を解雇すると発表したのだ。ンジョク氏はこの決定の理由として、ナイジェリアの通貨であるナイラの切り下げ、国の放送規制当局による規制の猛攻、アウトバウンドマーケティングチームの縮小を挙げている。

同社は成長を維持するため毎月30万ドル(約3200万円)以上を費やしていたが、アフリカ大陸における事業拡大への取り組みの停止を決め、代わりに米国と英国を中心とした国際市場に焦点を当てた。それが功を成し、年間25ドル(約2600円)から60ドル(約6300円)へと150%の値上げを実現している。ンジョク氏は、この決定によって同社が軌道に乗り、これまでの数年間よりもキャッシュポジションを高めることができたと述べている。 

「アフリカでの成長に費やすコストを劇的に減らしました。私たちはアフリカに集中していましたが、マーケティングやそれを促す何に対しても、結果的には何もできませんでした。そのため、もっと理にかなう市場に集中することにしたのです。当社の国際事業は2020年には有機的に2桁の成長を遂げており、しばらくの間はこの成長が続くと予想しています」と同氏はTechCrunchに語ってくれた。

イロコはアフリカ市場から完全に撤退したわけではなく、ステルスモードに入ったと考えれば良い。過去8年間アフリカで最も強力な独立系SVOD会社の1つとして支配的な地位を築いてきた同社は、アフリカ大陸でのあらゆる改善から必ず恩恵を受けることになるだろう。

とはいえ同社は収益の80%をアフリカ外の国から得ており、海外の取引所での上場が同社の取り組みを強化するために有益になることは間違いない。ナイジェリア証券取引所やその他の現地取引所は、アーリーステージのハイテク企業を上場させた歴史がない。そのため、ンジョク氏にとっては短期的にはロンドン証券取引所の方が理にかなっている。

また、イロコが目指す時価総額は1億ドル(約105億円)程度と一次市場にしては小規模だ。同社がLSEのオルタナティブ インベストメント マーケット(AIM)への上場を選択しているのはこのためだ。LSEのサブマーケットであるAIMは、小資本企業のために特別に作られている。それでも将来的には、英国のスポーツ賭博会社GVC(ジーブイシー)やオンラインファッション小売業者ASOS(エイソス)のように、評価額の成長に応じて主要市場に進出する計画もある。

株式を公開する際、ほとんどの企業はプライベートエクイティの時よりも多くの資金を調達する傾向にある。しかしイロコの場合はそうではない。2016年1月の最後の価格決定ラウンド(シリーズE)で総額約3000万ドル(約32億円)を確保した同社だが、2022年に株式を公開する際にはそれ以下、またはそれと同程度の金額を調達する予定だ。ダウンラウンドのように見えるが、なぜ同社はもっと調達する予定がないのか、ンジョク氏に尋ねてみた。

「これ以上必要ないのです。正直に言うと、1000万ドル(約10億5000万円)から1500万ドル(約16億円)は経営のために使用され、残りは株主のための副次的なものになるでしょう。イロコは未公開企業としての評価額が7000万ドル(約74億円)を超えたことはなかったので、目標の範囲内であればダウンラウンドにはなりません。特に、この間にイロコのために調達した資本金の総額に近い金額でROKをイグジットしたことを考えると、すでに初期投資家と株主に1100万ドル(約12億円)を返却しています。Canal+(キャナル プリュス)によるROKの買収で得た資金はまだ残っており、2023年まで半年ごとに入ってきます」とンジョク氏はいう。

イロコが2019年7月にVivendi(ヴィヴェンディ)傘下のキャナル プリュスにROK Studios(ROKスタジオ)を売却した際、取引条件は非公開のままだった。しかしCEOの発表から買収の見積もりが3000万ドル(約32億円)前後だと推測できる。この取引によって得た収益のおかげで同社は2020年の荒波を乗り越えることができた可能性が高く、2022年のIPO後も同様となる可能性がある。 

イロコと同じく今後2年以内に株式公開を予定しているのは、ナイジェリアに拠点を置く、評価額10億ドル(約1050億円)の決済会社Interswitch(インタースイッチ)だ。しかし2002年に設立されたインタースイッチとは異なり、イロコは設立からわずか10年しか経っていない。10年以内に上場したインターネット企業はJumia(ジュミア)だけで、同社は設立から7年後に上場している。イロコは創業11年目にしてこの偉業を達成させようとしており、株式の18%を保有するンジョク氏は次のステップに進むには十分な時期だと考えている。  

「非上場企業として達成できることは、上場しても同じように達成することができるでしょう。 いつも支えてくださっている会員の皆様にもIPOの機会を提供する予定ですので、会員の皆様にもその価値を享受していただけると思います。常にパイオニアであり、実験的であることを恐れないというのがイロコの特徴です。プロセス全体をオープンソース化していくつもりなので、もし私たちが成功すれば、後に続くアフリカの他の企業も私たちの経験から恩恵を受けることができるでしょう」と、同氏は今後の抱負を語る。 

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:新規上場 アフリカ メディア

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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