いくつかの痛い失敗を別としても、CES 2019のNuraLoop(ニューラループ)には大いに失望させられた。前回のCESに出展されたヘッドフォンはダミーだった。それで私は、ちょっと傷ついた。オリジナルのNuraphoneは、私の2017年ベスト製品リストに載っていたので、飛行機の長旅に使えるそのポータブル版というアイデアは、まさに夢の夢だった。
あれからまる1年。それはようやく実現した。この製品を市場に送り込もうとしたオーストラリアのスタートアップが、いくつもの障壁にぶつかってきたことは理解できる。まだ設立から間もない企業なのだが、その第1世代の製品は予想を上回る出来だった。同社のノイズ対応ヘッドフォンは、パッケージに至るまで実によく考えられていた。
そのポータブルなインナーイヤー版の開発の遅れは、正直なところかなりショックだった。まるまる1年かけて、あろうことかNuraは、ケーブルを完全に取り去ることができなかった。どれだけ多くの競合他社が無線化を果たしているかを思えば、訳のわからないダブルの障害だ。無線化しないのは、美観よりも実用性を重視したためだと正面から公言すべきだ。率直に言って、デザイン上の観点からはあり得ないことだが。
CEOのDragan Petrovic(ドラガン・ペトロビック)氏は、今週開かれたブリーフィングで、オリジナルのオーバーイヤー型の顧客ベースには、熱心なプロのミュージシャンの顧客層も含まれており、アナログのヘッドフォンジャックに対応する磁石式アダプターも付属しているため、ステージ上でのモニターにも使えると話していた。有線式が求められる状況はほかにもたくさんある。例えば、今これを書いている飛行機の中とか。それが無ければ、私はただ「ジェミニマン」の画面を眺めることしかできない。
他にも利点がある。その筆頭が、充電ケースを持ち歩かなくても16時間以上のバッテリー寿命がある点だ。使わないときは首に巻いておける。もちろん、そうするのが好きな人の場合だが。
もちろん、製品の発表が遅れるのは面白くない。前回のCESから今回までの間に、Apple(アップル)はAirPod Proを発表した。製品のアプローチはまったく異なっているのだが、同社の製品は、外の音が聞ける機能や優れたノイズキャンセリングでNuraLoopのテリトリーに侵入してきている。しつこいようだが、対象ユーザーが異なる別の製品なのだが、どれだけの人間が逆にNuraLoopからAirPodへ一矢を報いてほしいと考えていることか。
NuraLoopの音質は変わらず非常に優れていることをお伝えできるのは、とてもうれしい。もちろん、イヤーカップがないためオーバーイヤー型のあの包み込まれるようなベースサウンドは失われるが、カスタマイズ可能なサウンドプロファイルは、そのまましっかりと使える。キャリブレーションもほぼ同じだ。カスタマイズが完了したら、プロファイルを切り替えて、カスタマイズでどれだけ変化するものかを確認できる。
このヘッドフォンは、少々大きな作りになっている。ぜひとも、このレビュー用のヘッドフォンを装着したままエクササイズに行って、どれだけしっかり耳に収まっていてくれるかを確かめたい。コントロール方式は実に賢くできている。ヘッドフォンの外側を指で触るだけで、いろいろな機能を操作できるのだ。
1年待たされたことには不満もあるが、辛抱してきた人には、それだけの価値がある。NuraLoopは、小さなオーストラリアのスタートアップが生み出した2つ目の傑作だ。この過密なカテゴリーで、なんとか彼らはブランドを確立できた。価格は200ドル(約2万1900円)で5月出荷予定。
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(翻訳:金井哲夫)