バイデン米大統領が、4つの主要製品分野におけるサプライチェーンの見直しを要求する大統領令に署名しました。主要製品とは消費者製品向けコンピューターチップ、電気自動車用大容量バッテリー、医薬品とその有効成分、 電化製品で使うためのレアメタルの4種類。大統領令は即時の見直し作業開始を求め、100日間でこれらの入手先を外国、特に中国のサプライヤーに「過度に依存」していないかを判断します。
見直し作業は単なる調査と報告に終わらず「ギャップを埋め」「多様で回復力のある」サプライチェーンの構築に活用されるとのこと。
大統領令を出すきっかけには、パンデミックの初期にマスクなど個人用保護具が広範囲に不足した結果、最前線で対策に当たる医療従事者に必要な物資が行き渡らず、その場しのぎのマスクや手術着に頼らざるを得なくなったことが含まれます。そして、パンデミックが原因のひとつと言える昨今の半導体不足も、サプライチェーン見直しの理由のひとつとされます。
また、この命令は防衛、公衆衛生、通信技術、エネルギー、輸送、食料生産の6分野にひろくまたがるサプライチェーンについて1年間のレビューも要求しています。バイデン大統領は、サプライチェーン問題の解決策は、特定の産業について国内生産を増やすとともに、将来の不足を防ぐために同盟国との協力体制を築くことだとしています。
もちろん、この大統領令がすぐに半導体不足解決につながるわけではありません。ですが将来的に同じことを繰り返さないためにも、脆弱な部分を取り除く重要性はあります。大統領は「特定の問題がすぐに解決されないのは誰もがわかっていることで、いまあるボトルネックを解決するために、サプライチェーンになりうる同盟国の半導体企業などと連絡を取り生産増強に取り組んでいる」としました。
なお、ホワイトハウスはこの大統領令について中国外しが目的ではないことを強調、あくまで特定の供給元に依存していないかを判断するためだとしています。とはいえ、バイデン大統領はトランプ政権における対中政策は深刻な問題があったとしており、習近平国家主席との電話会談でも中国の「強制的で不公正な経済慣行」に「根本的な懸念」があることを伝えています。
大統領令が中国からのサプライへの依存を制限することはできると思われるものの、それを完全に断ち切れるかどうかはわかりません。資材の入手から加工、製品としての組み立てに至るまで一切を中国に依存している場合、企業がそこから脱却するのは難しいことも考えられます。
米国としては、政府と議会の協力でインセンティブや労働者訓練プログラムを用意し、サプライ元を米国内や同盟国に変えさせると言った対策も必要になるかもしれません。
(Source:CNBC、Politico。Engadget日本版より転載)
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