フィル・リービン氏のmmhmmがMemixを買収、オンライン会議でのプレゼンをもっと楽しく

近頃は、誰かと話をするのにオンライン会議を利用することがすっかり定着した。今後、新型コロナウイルス感染症の影響を軽減する効果的な方法が見つかったとしても(見つかるかどうかはまだわからないが)、オンライン会議は存続すると多くの人は考えている。つまり、オンライン会議を改良することがビジネスチャンスになるということだ。はっきり言おう。「Zoom疲れ」は現実に起きているし、少なくとも筆者は、誰かのTeamに参加することに正直うんざりしている。

mmhmm(ンーフー)は、Evernote(エバーノート)の前CEOであるPhil Libin(フィル・リービン)氏が設立した動画プレゼンアプリのスタートアップだ。同氏は、オンライン会議というメディアの機能や、それに対する一般的な概念を変えたいと思っている。ンーフーが最初に取り組んだのは、まるでニュース番組のように、動画の中でプレゼンテーションをリアルタイムで操作する機能だ。同社は米国時間10月24日、現在は招待制のベータ版であるmmhmmの一般公開を目指して買収を行ったことを発表した。

ンーフーが買収したのは、サンフランシスコを拠点とするMemix(メミックス)という企業だ。メミックスは、(録画済みかストリーミングかを問わず)動画に適用できるさまざまなフィルター(照明、背景の詳細、画面全体の変更)や、各種動画プラットフォームでそのようなフィルターを使用するためのアプリを開発している。

mmhmmと同様、メミックスも現在、動画プレーヤー本体ではなく、既存の動画プラットフォーム上で使用するツールの開発に注力している。メミックスは、Zoom、WebEx、Microsoft TeamsなどのWindowsアプリを介して、またはChrome、Edge、およびFirefox上で動作するFacebook MessengerやHousepartyといったウエブアプリを介してアクセス可能なバーチャルカメラという形で提供されている。

リービン氏はインタビューに答えて次のように語った。「このバーチャルカメラは現在の形のまま維持し、各種フィルターとメミックスのテクノロジーをmmhmmに統合する取り組みと、mmhmmプラットフォーム上により多くの機能を構築するための土台作りを同時に進めていく」。

市場には現在、動画関連の製品がひしめいており、ユーザーも多いが、どの製品もまだスタートラインに立ったばかりで、テクノロジーも求められる機能も日進月歩だとリービン氏は考えている。同氏によると、この市場は今、(会議などの)既存のエクスペリエンスの焼き直しではなく、まったく新しいエクスペリエンス、さらに優れた何かを創造する方向へと移行している段階だという。

リービン氏はこう語る。「この分野は大きな転換期を迎えており、それはまだ始まったばかりだ。重要なのは、すべてがハイブリッド型エクスペリエンスになっているという事実だと思う。動画プレゼンテーションのエクスペリエンスには、直接会う、オンライン、録画、ライブという4つの形態がある。これまでは、どのプレゼンテーションもこの4つのいずれかに収まっていた。つまり、境界が固定されていたわけだ。ところが今、この境界が徐々に消えつつあるため、すべてのエクスペリエンスを再構築して本質的にハイブリッドなエクスペリエンスを実現できるようになっている。これは、極めて重要な変化だ」。

メミックスの創業者たちは、この概念について頭の中で考えてきただけでなく、それを実現するソフトウェアの構築を進めてきた。
「やるべきことはたくさんある」と創業者の1人であるPol Jeremias-Vila(ポル・エレミアス・ヴィラ)氏は言う。「プロとしてストリーミング配信を行うとなると、高価なカメラ、照明、マイク、スタンドなど、非常に複雑なセットアップが必要になるが、それに代わる選択肢を提供する、というのが我々の基本的な考えだ。しかも、こうした複雑なセットアップを数回のクリックだけで提供できるようにしたい。先ほど挙げたようなハードウェアと同じ効果を実現できるテクノロジーを、膨大な数の視聴者向けに(ソフトウェアだけで)実装できる方法を考案したい」。

メミックスの2人のスペイン人創業者、 Inigo Quilez(インディゴ・キレス)氏とポル・エレミアス・ヴィラ氏は、スペインではなくサンフランシスコのベイエリアで出会った。2人ともメミックスの運営にフルタイムで関わっているわけではないが、同社が開発するテクノロジーの移行や統合には関わっていくつもりだという。

リービン氏が最初にキレス氏のことを知ったのは彼がYouTubeに投稿した「数学で絵を描くための原理」と題する動画だった。しかし、この動画だけでは2人の創業者の人物像はよくわからない。彼らはグラフィックエンジニアリングの達人だ。エレミアス・ヴィラ氏は現在、Pixar(ピクサー)の主任グラフィックソフトウェアエンジニアであり、キレス氏は昨年までFacebook(フェイスブック)でプロダクトマネージャー兼主任エンジニアとして、OculusのQuill VRアニメーションや生産性ツールを開発していた。

テック企業でエンジニアとしての仕事をこなしているだけでは、グラフィックアプリケーションに取り組むための十分な時間を確保できなかったため、2人はBeauty Pi(ビューティー・パイ、Beauty Pieとは異なる)という取り組みを始めた。Beauty Piは2人が本業とは関係のないさまざまな共同作業を行うための場となった。メミックスは、Beauty Piのプロジェクトとして、2人がゼロから作り上げたものだ。Beauty Piには他にもShadertoy(シェイダートイ、3Dシーンに影を作成するコンピュータープログラムShadersを作成するためのコミュニティとプラットフォーム)などのプロジェクトがある。

このように、メミックス誕生の背景を見ると、今まさに動画の世界で興味深いビジネスチャンスが生まれていることがわかる。現在、パンデミックのせいで(少々、言い方が悪いかもしれないが)猫も杓子も動画をメディアとして活用する分野に手を出している。加えて、ブロードバンド、デバイス、アプリ、動画関連の技術が進化しているため、動画ストリーミングの基本概念に面白い変化を加えたり改善を施したりするスタートアップが雨後の筍のように現れている。

テレビ会議の分野だけでも、いくつか有望な企業がある。Headroom(ヘッドルーム)は数週間前、会議中に有意義なメモを取れるようユーザーを支援する機能や、聴衆が退屈したり不快に感じたりしていないかをコンピュータービジョンを使って検出してプレゼンターが聴衆の反応をより正確に把握できるようにする機能などを含む、非常に興味深いAIベースのサービスを発表した。

Vowel(ヴァウエル)が提供している新しいツールは、会議とその文字起こし原稿に有意義な注釈を付けられるだけではない。すべてのセッションを横断的に検索してさまざまな項目を追跡したり、複数のイベントにおける参加者の発言内容を掘り下げて調べたりすることが可能だ。

もともと音声トラックの編集ツールを開発していたDescript(デスクリプト)は今週始め、動画から文字起こししたWord文書を切り取り、貼り付け、修正して動画のビジュアルと発言内容を編集できる動画用コンポーネントを発表した。これらはすべて、mmhmmと同じく、明らかにB2Bを前提として開発されている。そして、上に挙げた企業は氷山の一角にすぎない。

確かに、現在市場に出ている多数の画像処理技術はそれ自体が興味深いものだ。以前より明確なビジネスモデル(と主要企業)がようやく登場した段階にあるため、この分野はまだ成熟しておらず、関連技術がどのような領域で最も活用されるようになるのかは、まだ不明である。

そのため、ズーム、グーグル、マイクロソフトといった大手だけでなく、ゼロからまったく新しいプラットフォームを構築する新規参入組にとっても、面白いビジネスチャンスだと言える。

その意味で、mmhmmは注目に値する存在だ。リービン氏は、不運なチャットボット市場に同氏が進出するというだけで見出しになるほどの大きな影響力を持つ人物だ。mmhmmは、そのリービン氏の名声とインスピレーションが背景にあるというだけでなく、Sequoia(セコイア)をはじめとする有名VCの支援を受けている(セコイアは今月始め、mmhmmに対する3100万ドル(約32億4700万円)の資金調達ラウンドをリードした)。

リービン氏は「mmhmmを通してこの業界における統合を進めようとは考えていないし、この業界で統合が進んでいるとも思っていない」という。統合は、ある程度成熟した分野で行われるものだが、このハイブリッド型オンライン会議市場はまだ誕生したばかりだと同氏は考えているからだ。

「当社が行っているのは、統合というより市場シェアの獲得だ。自分たちが本当に気に入ったチームと一緒に仕事ができるかどうか、それが当社の買収基準だ。メミックスはその条件を満たしていた」とリービン氏は続けた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ビデオチャット 買収 リモートワーク

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(翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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