フェイスブックがアプリ内でSpotifyをストリーミングできる新機能を導入、日本でも提供

Facebook(フェイスブック)は先週、アプリ内で直接音楽やポッドキャストを聴く新しい方法を導入しようと、音楽ストリーミングサービスSpotify(スポティファイ)とのProject Boomboxという提携拡大を発表した。そして米国時間4月26日、両社は新しい「ミニプレイヤー」エクスペリエンスとして統合の展開を開始した。この新機能では、FacebookユーザーはiOSとAndroidのFacebookアプリを通じてSpotifyからストリーミングできる。無料のSpotifyユーザー、プレミアム購読者いずれも利用可能だ。

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ミニプレイヤーそのものは、Spotifyのアプリ内ですでにサポートされているソーシャルシェアリングオプションの拡張機能だ。現在、SpotifyユーザーがFacebookで共有したいコンテンツを聴いているとき、既存の「シェア」メニュー(スクリーン右上の3つのドットのメニュー)をタップし「Facebook」か「Facebook News Feed」を選べる。

ユーザーが個人のトラックやポッドキャストエピソードをシェア機能を通じてFacebookに投稿するとき、投稿は新しいミニプレイヤーに表示されるようになっている。これにより、ユーザーの投稿を目にした他の人がコンテンツを再生したり、再シェアしたりできる。

Spotifyの有料購読者はフル再生もできる、と同社は話す。一方、無料ユーザーはクリップではなく、シェアされたトラックを聴くことができる。しかし結局、無料ユーザーはSpotifyのアプリでそうしているように、広告入りのコンテンツをシャッフルモードで聴くことになる。

これがどういう仕組みになっているのか、注意すべき大事なことは、統合によって音楽あるいはポッドキャストのコンテンツが実際にSpotifyのアプリから再生するようになっているということだ。ユーザーがミニプレイヤーでプレイボタンを押すとき、ユーザーがSpotifyにログインできるようにアプリの切り替えが起こっている。ミニプレイヤーはSpotifyアプリの立ち上げと再生を起動してコントロールしている。これがユーザーがFacebookをスクロールしたり、Facebookアプリを最小化しても再生が続く理由だ。

この設定はユーザーがスマートフォンにSpotifyアプリをインストールし、ミニプレイヤーを機能させるのにSpotifyアカウントを要することを意味する。初めてSpotifyを使うユーザーは、ミニプレイヤー経由でシェアされた音楽を聴くために無料のアカウントを申し込む必要がある。

Spotifyは、ミニプレイヤーのエクスペリエンスそのものを通じて有料アカウントを申し込むことはできない、と説明する。そのため、新規購読でFacebookと分け合う売り上げはない(ユーザーはSpotifyアプリをダウンロードし、アップグレードしたければさらに有料アカウントに申し込まなければならない)。

この提携でSpotifyは新型コロナウイルス特需による購読者の増加がなくなりつつある現在、配信を増やし、アカウント申し込みとアプリのリピート使用を拡大するのにFacebookのリーチを活用できる。しかし、ストリーミングを行なっているのは実際にはSpotifyのアプリであるため、これまで同様、ストリームで支払われるロイヤルティには責任を持つ、と同社はTechCrunchに説明した。Spotifyはまた、音楽カタログそしてコンテンツとともに流れる音声広告も全面的に受け持つ。

Facebookにとって、この契約はユーザーがFacebookサイトでもっと時間を費やすようにする貴重なツールを持つことを意味する。過去数年、ユーザーがFacebookで費やす時間は減ってきていると報道で指摘されている。

SpotifyとFacebookは、音楽に関する取り組みで協業してきた長い歴史を持つ。2011年にFacebookは、今回のように音楽サブスクのユーザーがFacebook上で直接音楽を楽しめるようにするアップデートを計画していた。しかしそうした計画は後に振り出しに戻った。おそらく音楽の著作権かテクニカル上の問題のためだ。SpotifyはFacebookのティッカーにおける最初のメディアパートナー企業の1社だった。ティッカーはユーザーに友達がFacebookや他のサービスで何をしているのかをリアルタイムに示すというものだ。Spotifyはかつて、モバイルアプリ向けにFacebookログインをデフォルトで提供してもいた。展開されてもう何年にもなるが、Facebookとの統合のおかげでデスクトップのSpotifyユーザーは、Facebookでつながっている友達がSpotifyで何をストリーミングしているのか知ることができる。

今回の提携の更新と拡張のタイミングは興味深い。FacebookとSpotifyには、Apple(アップル)という共通の敵がいる。Appleのプライバシーにフォーカスした変更はFacebookの広告事業に影響を及ぼしており、またAppleのApple Musicとポッドキャストへの投資はSpotifyにとって脅威だ。ここ数年のFacebookの自社による音楽の取り組みは、音楽レーベルとの合意による音楽ビデオの統合など、提携へとシフトした。Facebookの収益化ツールとクリエイター経済をターゲットとするサービスに関する幅広い取り組みを支える新しいストリーミング機能を稼働させるのに、Spotifyのようなパートナーに目を向けるのは理に適っている。

ミニプレイヤー機能は4月26日のグローバル展開の前にメキシコとタイでテストされた。

今回のインテグレーションは、米国に加えてアルゼンチン、オーストラリア、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、ガテマラ、ホンジュラス、インドネシア、イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、南アフリカ、タイ、ウルグアイで展開されている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookSpotify音楽ストリーミングSNS

画像クレジット:Spotify

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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