Facebookはイリノイ州の州民をプライバシーの侵犯から護る州法に違反したとして米国時間2月26日に、6億5000万ドル(約693億9000万円)の支払いを命じられた。
Biometric Information Privacy Act(生体認証情報私権法、BIPA)は、近年テクノロジー企業がつまずいて転倒している強力な州法だ。Facebookに対する訴訟は2015年に始まり、Facebookが顔認識を利用して写真の中の人に同意なくタグを付けているのは州法に違反していると同社を告訴した。
カリフォルニアの連邦裁が下した最終示談によると、160万人のイリノイ州住民が1人あたり345ドル(約3万6800円)以上を受け取ることになる。この最終的な数は、2020年にFacebookが提示し判事が不当と判断した5億5000万ドル(約587億2000万円)よりも1億ドル(約106億8000万円)高い。Facebookは2019年に、自動顔認識によるタグ付け機能を無効にして、自動でなくオプトインにし、イリノイの集団訴訟で広まったプライバシーへの批判の一部に対応した。
2020年、イリノイ州住民の顔が同意なく顔認識システムのトレーニングに使われていたため、同法の違反としてMicrosoftとGoogle、Amazonが、それぞれ個別の訴訟で訴えられている。
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イリノイのプライバシー法は一部のテクノロジー大手を紛糾させたが、このBIPA法は、疑わしいプライバシー行為を行っている小規模な企業に対しても効力は大きい。議論の渦中にある顔認識ソフトウェアの企業Clearview AIは現在、州内でBIPAによる独自の集団訴訟に直面している。同社は訴訟を州外に持ち出そうとしたが失敗した。
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6億5000万ドルの示談は、通常の企業を倒産させるには十分な額だが、しかしFacebookは2019年の、50億ドル(約5338億5000万円)というFTCの記録的な罰金のときと同じく、平然と対応できるだろう。しかしイリノイ州の法律には牙がある。Clearviewの場合は、企業の事業活動を州外に追い出すこともできたのだ。
Facebookのような巨大な怪物を同じ方法で罰することはできないにしても、何年間もビジネスを行ってきたテクノロジー世界のデータブローカーたちにとって同法は、今後ますます無視できない脅威だ。連邦、州、そして議会のレベルで規制当局は、テクノロジーを抑制するための強力な措置を提案している。そしてイリノイ州の画期的な法律は、他の州が参考にするに十分な説得力のあるフレームワークを提供している。テクノロジー大手が国の監督に従うことを悪夢と思うならば、テクノロジー企業のやり方を州ごとに決めている先進的な州法の寄せ集めでも十分に彼らの口には合わないだろうが、未来にとって役に立つ規制になりうるだろう。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebook、プライバシー、イリノイ、顔認証、裁判
画像クレジット:Design Cells/Getty Images
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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)