ブロックチェーンの実際のユースケースの中でも、美術市場における所有権証明の再編はもっとも明白なもののひとつだった。しかし最近の数か月は、高名なオークションハウスがNFTを採用し、人気アーチストたちがこの暗号媒体を試みるようになるに伴い、その未来がかつてなく現実味を帯びてきたようだ。
クリスティーズとサザビーズの出身者たちが作ったスタートアップLobusは、SuperRareのようなNFTマーケットプレースのクリエイターフレンドリーな仕組みを実物アートの世界に導入した資産管理プラットホームで、ブロックチェーンの技術を日常化しようとしている。彼らはそれによって、美術品のオーナーが彼らが売る作品の部分的な所有権を持ち、今後の取引からも利益を得られる仕組みを実現するつもりだ。実物アートの売り手は、自分の作品を100%売ることと、その価値が今後の取引で増えていくことを、今では当たり前と思うようになっている。しかしLobusの目標は、それらの売買の全過程においてアーチストも所有権の一部を保持し、毎回手数料を得られるようにすることだ。それは、ブロックチェーンを用いる所有権方式によって可能になるラジカルなアイデアであり、悪夢でもある。
LobusのCEO、Sarah Wendell Sherrill氏は本誌の取材に対し次のように語った: 「私たちがやろうとしているのは、NFTが所有権というものに関してもたらした最良のものを利用して、どうやったら所有権の形や構造を多様化してこの資産クラスに介入し制御できるのか、という問に答えることだ」。
彼らのスタートアップはこれらの新しい仕組みをカプセルに収めた対象範囲の広い資産管理プラットホームにより、今日使われている古いレガシーソフトウェアのユーザーを誘い出すことを狙っている。堅固な所有権証明にCRMとアナリティクスのプラットホームと動的プライシングのようなツールを組み合わせてLobusは、美術市場にエクイティ管理のCartaのような独自のソフトウェアプラットホームを導入して、もっと広い市場にアプローチできるようにしたいのだ。
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Lobusによると同社は、Upside Capitalと8VC、Franklin Templeton、Dream Machine、Weekend Fund、およびBoostVCらから600万ドルを調達している。そのラウンドに参加したエンジェルは、Rob Hayes氏、Troy Carter氏、Suzy Ryoo氏、Rebecca/Cal Henderson氏、Henry Ward氏、そしてLex Sokolin氏だ。
チームの大きな目標は、ブロックチェーンの理解をもっと容易にして、それが美術品のオーナーのネットワークにもたらすものに、目を向けさせることだ。過去数か月のNFTブームで巨額の売り上げがが計上されたが、Lobusのような努力が挑戦しているのは、すべての権利者や利害関係者を同じ土俵に乗せて、暗号化アートのさまざまな仕組み(めしべ)をグローバルな美術市場(おしべ、花粉)で他花受粉していくことだ。すでにおよそ300の熱心なアーチストのパートナーがいるLobusは、そのプラットホームを蒐集家やアーチスト共同体、資産マネージャーなどにも売り込んでいる。
今現在、Lobusのデータベースにはおよそ45000点の美術作品物件があり、そのフィジカルとデジタルの物件の全体の価値は約54億ドルに達している。
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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)
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