プラットフォーム化を目指すZoomが約110億円の同社ファンドから資金を受けるスタートアップを発表

1年以上前からZoom(ズーム)は、アプリケーションからプラットフォームへの転換をミッションとしてきた。そのために同社は、この1年間で3つの発表を行った。Zoom Apps(ズーム・アプス)開発ツールZoom App Marketplace(ズーム・アップ・マーケットプレイス)、そして、Zoomのプラットフォーム上でツールを開発する有望なスタートアップ企業に投資する1億ドル(約110億円)の開発ファンドだ。米国時間8月30日、同社は第1回目の投資を締め切ったことを発表した。

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Zoom Appsとその統合における製品責任者を務めるRoss Mayfield(ロス・メイフィールド)氏は、今回の投資ラウンドについて、TechCrunchに次のように述べている。「私たちはこのエコシステムを構築している過程にあります。このプラットフォーム上で優れたものを作り出すためには、起業家と協力してシードステージやAステージの企業に特に注力することが重要だと考えています。今回の第1回目となる十数件の投資は、今後も継続して行われる重要な事業を代表するものだと、私は考えています」と、同氏は説明した。

メイフィールド氏によれば、同社は正確な投資額は公表していないものの、各企業には25万ドル(約2750万円)から250万ドル(約2億7500万円)程度の小切手を振り出しているとのこと。Zoomは投資ラウンドを主導するわけではなく、他の投資パートナーとチームを組んでいる。しかし、これらのスタートアップ企業に協力していないわけではなく、資金以外にも社内のリソースを活用したアドバイスや、経営陣のバックアップを提供している。

「これらの投資先には必ず、その企業の役員やシニアスポンサーがついています。つまり、その土地のことをよく知っていて、彼らの成長を助け、個人的な時間を過ごせる人が社内にいるのです」と、メイフィールド氏はいう。

同社はまた、投資を受けたスタートアップが、お互いの企業やZoom Appsチームから学ぶために、いくつかのZoomチャットチャンネルを運営している。「スタートアップと私のチームの間で、共有のチャットチャンネルを設けています。アナウンスメントというチャンネル、ヘルプというチャンネル、そしてスタートアップ企業が作ったコミュニティというチャンネルもあります」と、メイフィールド氏は述べている。

彼らは毎週、これらのチャンネルを使って、開発者オフィスアワー、ビジネスオフィスアワー(メイフィールドが運営)、コミュニティアワーを開催し、スタートアップ企業が集まって好きなことを話し合えるようにしている。

投資を行う具体的なカテゴリーとしては「コラボレーションと生産性」「コミュニティとチャリティ」「DE&IとPeopleOps」「ゲームとエンターテインメント」がある。「コラボレーションと生産性」カテゴリーのWarmly(ウォームリー)は、会議に参加する各人の背景や情報を事前に提供したり、会議の主催者がイベントごとにカスタマイズしたZoom背景を作成できる営業ツールだ。

そしてFathom(ファゾム)は、ZOOM会議中にメモを取る必要性を減らすものだが、単なる録音や文字起こしをするツールではない。「Fathomは、シンプルなインターフェースで、会議中のある瞬間にタグ付けすることができます。その結果、録画された動画の議事録ができあがります。タグ付けされた瞬間をクリックすると、それがハイライトとして表示され、会議のハイライトのクリップを、Salesforce(セールスフォース)やSlack(スラック)などで共有することが可能です」と、メイフィールドは説明する。

Pledge(プレッジ)は、個人や組織がZoomミーティング内で即座に寄付を依頼し、集めることを可能にする。Canvas(キャンバス)は、企業がDEI目標を設定・達成するためのデータに則り、多様なチーム作りを支援する採用・面接ツールだ。

このファンドの第一次投資の対象となったのは、これらのような企業だ。メイフィールド氏は、今後もZoomプラットフォームを利用するスタートアップを探して、自社のスタートアップを構築したり、Zoomとの統合を進めていくと述べている。

どんな会社も、まずは機能から始まり、そして製品になり、やがて製品のラインアップを目指すと、メイフィールド氏はいう。成功の秘訣は、それを着実に進めていくことだ。この投資プログラムやZoom Appsのツール群の目的は、こうした企業が最初の一歩を踏み出す手助けをすることにある。

「起業家としての技術とは、リソースがない中でそのリスクに対処し、自分の知っていることの最前線を突き進むことです」。Zoomはその旅におけるロールモデルであり、メンターであり、投資家でありたいと考えている。

画像クレジット:Thomas Trutschel / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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