プリシラ・チャン、インタビュー――移民の両親の苦闘からチャン・ザッカーバーグ基金のビジョンまで

今回のTechCrunch Disrupt SFにはチャンプリシラ・チャンが登場した。チャンはFacebookのファウンダー、CEO、マーク・ザッカーバーグの妻だというだけの存在ではない。チャン自身が教師、小児科医であり、さらには世界最大の慈善家の一人だ。チャンは恵まれない人々を助けようとする断固たる決意を持っている。

Facebookがハーバード大学の寮の一室で誕生したことは広く知られているが、チャンのインパクト投資への決意は教師として経験した貧しい子どもたちの遊び場から始まっていたという。

チャンによれば、遊び場で見た歯の治療を受けていない子供がヘルスケアの問題に取り組もうと考えたきっかけだった。「どうやったらそんな悲しいことが起きないようにできるのか? 誰が悪いのか? きちんとヘルスケアを得ているのだろうか? ヘルスケアには痛みや感染の防止を含めて適切な歯の治療が含まれているだろうか? …こういう問題に取り組むためにもっと高い能力が必要だと私は思い知らされたました」とチャンは涙ぐみながら語った。

この決意がやがて慈善を目的する総額450億ドルのChan Zuckerberg Initiativeの設立へ、なかんずく疾病対策のための30億ドルの拠出へとつながる。 難民としてアメリカにやって来た中国系ベトナム人の両親が苦闘しながら娘を大学に進ませてくれたことに常に感謝しつつ、「誰かが私を難民の娘からすくい上げてハーバードに進ませてくれました。私は幸運でした。しかし助けが必要な子供たちがもっともっとたくさんいるのです」とチャンは述べた。

ここでチャンは明確な目標を持った慈善活動が重要だとしてビジョンを語った。チャンはFacebookの裏町ともいうべきボストンのベイエリア地区でヘルスケアの欠陥や家庭の問題によりスタートからハンティキャップを背負われている大勢の子どもたち見てきた。そうした子どもたちに機会の平等を保証するのがこの投資の目的だという。

CZI(Chan Zuckerberg Initiative)の非政治的アプローチについて説明し、政権の政策がどうあろうと、超党派的な協力を得ていくことが重要だと強調した。CZIは特定の政策を推進するために公職への立候補者に献金することはしないという。チャンはデジタル・ウェルビーイングの考え方についても触れ、祖父母にビデオを通話することは「スマートフォン中毒」ではないという例を上げた。チャンは幼い娘のマックス、オーガストにも正しい使い方を教えているという(今回のインタビューはマーク・ザッカーバーグの作り上げたプロダクトの是非を問うというよりプリシラ自身の生き方と動機を語ってもらうのが目的だった)。

特に重要なポイントは「誰もがその人に適切な方法で(チャリティーに)参加して欲しい」とチャンが述べたことだろう。誰もがチャリティーへの多額の出資確約をしたり、フルタイムで有意義な社会活動ができるわけではない。しかしシリコンバレーに大勢いる成功者たちに「もう少し深く」関与してもらいたいという。ある場合にはエンジニア、プロダクト・デザイナー、アーティストとしての能力を提供することが良いのかもしれない。問題を解決するための努力が長続きできることが重要だという。ときには富が少数者の手に集中することを支えている社会構造そのものと戦うという困難をもたらしかもしれない。チャンは「なんども既存のルールと戦っているうちに、そんなルールを作ったシステムのほうが壊れているのだと気づくのです」とチャンは結論した。

〔日本版〕CZIは節税可能な非営利団体ではなく、営利、政治活動も自由な有限責任会社(LLC)の体制をとっている。インパクト投資とはおおむね「利益を得つつ社会的に有意義な結果を得るような投資」を意味するとされる。

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滑川海彦@Facebook
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投稿者:

TechCrunch Japan

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