ベンチャーキャピタリスト3人が大手ファーム卒業とコロナ禍で自身のファーム立ち上げについて語る

おそらく業界を推進するエンジンでもあるが、テクノロジー業界における最も顕著な傾向の1つは、大手企業で才能を磨いた後にスタートアップを立ち上げ、自身のビジネスを始める人々が絶え間なく現れるということだ。Max Levchin(マックス・レブチン)氏のように意図的に起業家タイプの人材を雇って(未訳記事)積極性の高いチームを作り上げ、そのサイクルを永続させる人もいる。

その傾向は企業だけでなく、企業に投資する投資家にも当てはまるようだ。Disrupt 2020では、そのような道をたどった3人のベンチャーキャピタリストに話を聞いた。彼らは大手ベンチャーキャピタルファームで経験を積み名を上げ、最近、自身の力で自分の「スタートアップ」ファンドを立ち上げている。

マクロレベルでは2020年は、全世界が困難な時期を迎えた。だがこれまで何度も見てきたように、テクノロジーの世界では車輪が回り続けている。

IPOが復活し、プロダクトが展開される。人々は多くをオンラインで購入し、インターネットを利用して「つながり」を維持する。多くのM&Aが起こり、有望なスタートアップが資金を獲得する。

実際、起業家とそのイノベーションがテクノロジーの世界の原動力なら、資金は燃料だ。資金の提供こそ、Dayna Grayson(デイナ・グレイソン。以前はNEAに在籍、現在はConstruct Capitalの創業者)氏、Renata Quintini(レナタ・キンティニ。以前はLux Capitalに在籍、現在はRenegade Partnersの創業者)氏、Lo Toney(ロー・トニー。以前はGVに在籍、現在はPlexo Capitalの創業者)氏が狙う機会だ。

グレイソン氏が共同創業者のRachel Holt(レイチェル・ホルト)氏とConstruct Capital(コンストラクト・キャピタル)を始めた理由の1つは、民間セクターのスタートアップに資金を提供するファーム立ち上げに機会を見出したからだ、とグレイソン氏は語った。

「米国経済のGDPの半分、この国のGDPの半分が実際にはデジタル化されていない」とグレイソン氏はいう。「企業はテクノロジーに対応できていない。投資不足に陥っている。今こそアーリーステージの起業家と一緒に構築するときだ」。

Constructは特定のセクターに絞っているが、Renegadeの狙いは異なる。開発段階のスタートアップ、特に同ファームが「超臨界」と呼ぶシリーズBの会社だ。そうした会社はもはや単に何かを始めるという段階にはなく、規模を拡大するために適切なチームと戦略が不可欠となる。

「どうすれば規模を拡大できるかを理解し、実行に移せる企業を取締役会で何度も見てきた」と、Roseanne Wincek(ロザンヌ・ウィンセック)氏とRenegadeを共同で創業したキンティニ氏は述べた。「人の面に関していえば、そうした企業は実際にさらに前進し、より大きな時価総額と市場シェアをより速く獲得した。そういうチャンスを目の当たりにして手をつけないわけにはいかなかった」。

キンティニ氏は「超臨界」ステージの会社を構築・拡大する方法に特化する現在のミッションと、15年前に発展段階にあったスタートアップエコシステムで特徴的だったアーリーステージの資金調達を比べた。「100万ドル(約1億円)を調達してビジネスを始めたはいいが、本当に顧客に刺さるものが何かを理解する時間が足りなくなっている」と同氏は述べる。「それがまさに今日の姿だ」。

トニー氏はさらに別のアプローチをとった。セクターやステージを絞るのではなく、資金を利用してまったく新しい層の創業者の芽を出す。より多様でインクルーシブな創業者らに資金を提供することは、単に平等な競争環境を用意するためだけではない。幅広いユーザー層に向けたバランスのとれたプロダクトのためにも有効だ。

「私はGVで素晴らしい時間を過ごしたが、この機会を前にして何もしないのは難しいと思っただけだ」とPlexoを創業したトニー氏は述べた。Plexoはスタートアップだけでなく、同氏と同じ投資原則に従うファンドにも投資している。GVもファンドと創業者の両方に投資していたが、社会的要請に応える投資を加えることが重要だった。「エコシステムで多様性とインクルージョンが増す、という副産物を手に入れることに私は情熱を燃やしている」と同氏は語った。

我々はテクノロジーの世界が資本で溢れる時代を生きている。世の中に成功したテクノロジー企業が多いことの副産物の1つは、限られた数のパートナーが多くのベンチャーキャピタリストに投資しようと殺到することだ。多くのファームが記録的な速さと申し込み超過の中でファンドをクローズする。それが資金調達するスタートアップだけでなく、そうしたことがますます頻繁に起こるベンチャーキャピタリスト自体にもノックオン効果をもたらしている。3人全員が、具体的な目的を持つことにより「単なる新しいVC」以上の存在になることができ人の目に留まって良い取引に参加しやすくなると述べた。

グレイソン氏は、世界的なパンデミックの真っ只中にファームを始めるという挑戦は、「ディスラプション(混乱)」という概念に乗じて繁栄する業界では、姿を変えた幸運の一部だということがわかったと語っている(TechCrunchではお馴染みだ)  。

「新型コロナウイルスの世界で投資を始めたことは本当に幸運だった」とグレイソン氏はいう。「非常に多くのことがひっくり返ってしまった。ご存知のように民間企業によるソフトウェアとテクノロジーの採用は10〜20年早まった。働き方も本当に変化した」 。同氏はまた、探しているのはほぼ「新型コロナの環境下で創業した」会社のみだということに気づいたという。そうした会社には戦場の試練をくぐり抜けたビジネスモデルがあるからだ。

資金調達自体に関してトニー氏は、シードステージで企業に資金を提供するベンチャーキャピタリストが急増した時期と、その時に増えた「ソロキャピタリスト(外部からも資金調達する個人投資家)」のことを思い出した。

「ソロキャピタリストについて本当に興味深いのは、彼らが大企業と起業家両方のオペレーションと広い技術者ネットワークへの理解があり、それらを活用してディールフローを見つけ出し、資産家やファミリーオフィス、さらには機関投資家から資金を調達することだ」とトニー氏は述べた。

カテゴリー:VC / エンジェル

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画像クレジット:courtneyk / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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