宇宙航空産業のボーイングは衛星の小型化、組立工程の省力化を進めようとしている。Wall Street Journalの記事によれば、ボーイングは衛星を運用可能にするまでの複雑な手順の多くをオートメーション化して製造を効率化するという。
衛星打ち上げ事業のSpaceXやナノ衛星開発のスタートアップ、Planet、Kepler Communicationsなど、効率に優れた身軽な新企業の参入はボーイングのような既存の大企業に圧力を与え始めているようだ。
以前から(宇宙航空に民間企業が関与し始めた当初から)、宇宙空間はボーイングのような政府との契約に大きく依存する少数の大企業が独占していた。こうした企業は長年にわたってコストに利益を上乗せすることができる政府契約に守られて楽なビジネス運営を続けてきた。しかしSpaceXのようなスタートアップの参入で事情が大きく変わった。効率的な経営のSpaceXはロケットの打ち上げ費用を大きく引き下げ、これはボーイングの宇宙事業の利益を大きく圧迫した。つまりレガシーの宇宙航空企業もそのあり方を根本的に見直す必要に迫られていたといえる。
ボーイングの衛星事業部の責任者、Paul RusnockはWSJのインタビューに答えて、同社は可能な限りあらゆる部分に3Dプリンティングのような最新テクノロジーを取り入れていくとしている。また衛星自体の設計も見直し、可動パーツを最小化することで組み立ての工数を減らし、信頼性をアップさせていくという。
ロケット同様、衛星もこれまでは個別に特注された部品によって組み立てられていた。こうした部品は非常に高価であり製造にも長時間を要した。これに対して、可動部分を減らし、汎用部品を多用したモジュラー化が進めば衛星の製造コストは劇的に減少する。WSJの記事はさらに、衛星の作動テストについても触れ、コンピューター・シミュレーションをもっと取り入れること、また衛星自身に自己テスト機能を組み込むことでさらに効率化が可能になるはずと指摘している。こうした面でもボーイングなどの大企業には努力の余地が多いにあるようだ。
スタートアップは今やボーイングなどの既存企業が請求していた金額の100分の1程度の価格で同様の機能の衛星を製造可能だとしている。また衛星の開発、製造の期間も数分の一に短縮されると主張している。ビジネスという否応ない現実がボーイングに新しい考え方の採用を迫っている。いずにせよ小さなスタートアップが既存の巨大企業に自己変革を迫るような影響を与えるのは素晴らしい。こうした刺激が産業を前進させていくのだと思う。
画像: Wesley Nitsckie/Flickr UNDER A CC BY-SA 2.0 LICENSE
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)