マーケティングプラットフォーム「B→Dash」を提供するフロムスクラッチは11月30日、電通デジタル・ホールディングス、グローバル・ブレイン、日本ベンチャーキャピタルおよび既存株主を割当先とした総額10億円の第三者割当増資を実施した。同社は5月に、Draper Nexus Venture Partnersおよび伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどから総額約3億円の第三者割当増資を実施している。
同社が提供するB→Dashは、企業のマーケティングプロセス全体のデータを統合し、一気通貫で分析するSaaS型のマーケティングプラットフォームだ。ウェブでの集客から顧客管理まで、マーケティングの「入口から出口」までを一元管理できる。
マーケティングオートメーション(MA)なんてキーワードが話題だが、マーケティングの「入口から出口」に至るには、解析ツールをはじめとして、複数のツールのデータを連携する必要がある。だが複数のツールの間でデータ間の断絶が起こり、運用の工数やコストが増える、いわば「ツギハギ」のような状況が起こるケースが多々あったのだという。これに対してB→Dashは集客から顧客管理までの機能を1つのプラットフォームで実装。スムーズなデータ連携を実現する。
理屈は分かるのだが、たとえツギハギだらけであろうが、既存のツール群からのスイッチングコストは気になるところ。B→Dash導入の提案に対する質問もそこに集中するという。フロムスクラッチ代表取締役の安部泰洋氏は、社員約100人のうち30人以上というコンサル部隊を抱えることで、その課題に答えているという。
「導入前の企業に言われるのはスイッチングコストの大きさ。だがスイッチングコストとはかみ砕けば1つはコミュニケーションコストのこと。我々は営業、開発、コンサルを自社に持つ三位一体構造を強みにうたっている。米国のMAツールなどは開発から営業までを自社で行うが、納品は代理店が行うというケースがほとんど。代理店による導入支援後は電話やメールでのサポートが中心になり、『使い切れない』『運用できない』ということになる。我々はB→Dashがいかに運用に載るかを導入企業とともに設計していく。開発会社が自ら『伴走期間』を提供していることがイノベーションだ」(安部氏)
料金はプラットフォーム開発費用が100万円〜、月額課金が50万円〜。2014年11月に販売を開始。当初はBtoC企業の顧客が中心だったが、BtoB企業を含めて約100社が製品を導入している。
同社では今回の調達をもとに、(1)ビジネス上における、あらゆるビッグデータの取得・統合の実現、(2)人工知能によるビッグデータの活用——の2点を進めていく。
MAの仮面をかぶったデータと人工知能の会社に
今後はSMB向けのツール提供や海外市場向けの製品提供を進めることでユーザーの幅を拡大。さらにはその拡大したユーザーのほか提携企業などから、デジタル領域外のデータの取得・統合を進め、さまざまなビジネスデータをB→Dashに一元集約していくのだという。
それと並行して人工知能の開発を強化。前述の通りB→Dash上に集約したデータを解析し、収益の最も高いユーザーの行動法則を可視化できる仕組みを作っていくのだという。「今は(コンサル部隊による)パワープレイで導入企業の伴走をしているが、今後は抽出されたデータを人工知能に渡せば伴走をしてくれるという状況を作りたい。例えばiPhoneのSiriや、Excelのイルカのようなナビゲーションを実現できるだろう。我々はMAという仮面をかぶりながら、裏側ではデータと人工知能の企業になっていく」(安部氏)