メルセデス・ベンツが描く未来像、航続距離約1000kmの超高効率ラグジュアリーEV「Vision EQXX」

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は米国時間1月3日、同社の電気自動車の未来を紹介するためのコンセプトカー「Vision EQXX」を発表した。結論は?目を見張るようなデザインと、コンパクトでスポーティーなパッケージにパワーと効率と走行レンジを詰め込んだ最新エンジニアリングとの融合だ。

EQXXはブランドを象徴する「ハローカー」であり、MercedesはCESに先立って行われたデジタル発表会で、アイデアからプロトタイプまで18カ月かかったと説明している。このクルマは同社の将来の電気自動車の基盤になるために作られた。狙いは、外装スタイリングを向上させたり、巨大なインフォテイメントディスプレイを搭載することだけではないが、実際EQXXには搭載されている。

同社はEQXXを、デザインとエンジニアリングをどこまで追究できるかを証明する実験の場として使った。会社が焦点を当てたのは、バッテリーのエネルギー密度の向上とバッテリー・ケースやブレーキ・ディスクなどに軽量な材料を使うことによる車体重量の減少、抵抗係数Cd 0.175を生み出す空力設計、超低転がり抵抗タイヤ、新型のコンパクトな電動パワートレインなどだ。

電動専用のシャシーには、軽量F1サブフレームが用いられ、パワーエレクトロニクスの開発に非常に有効な研究ツールであるとMercedesはいう900ボルト電動系統を採用している点が注目される。

Mercedes-Benz VISION EQXXのエクステリア(画像クレジット:Mercedes-Benz)

他に、バッテリーシステムに最大15.5マイル(25 km)の走行距離を追加する超薄型ルーフパネルなもある。

最終的に出来上がったのは、一回の充電で620マイル(約1000km)走行可能な電気自動車で、効率95%はバッテリーのエネルギーの95%が車輪に伝わることを意味している。

この未来的で高効率のEVを開発するために、同社は研究開発部門に加えて、フォーミュラ1とフォーミュラEのチームからも人員を参加させた。

「彼らはすでにパワートレインの電動化が進んでいるモータースポーツにおけるイノベーションが、ロードカーの開発に直ちに応用できることを証明しています」とDaimler AG(ダイムラー)の取締役でMercedes-Benz ATの開発・調達担当CTO(最高技術責任者)であるMarkus Schäfer(マーカス・シェーファー)氏は語った。

バッテリーのサイズを大きくするだけでなく、Merceds-Benzと同社のHPP(ハイパフォーマンス・パワートレインズ)チームは、エネルギー密度が400Wh/Lに近い新しいバッテリーパックを開発した。

同社によると、このベンチマーク成績によって、100kWh近い利用可能エネルギーをEQXXのコンパクトな車体に収めることが可能になった。

「実質的に、EQSのエネルギーをコンパクトカーの車体サイズに収めたことになります」とHPPの先進テクノロジー担当ディレクターAdam Allsopp(アダム・アルソップ)氏は、2021年に同社が発売した電気自動車であるEQSを引き合いに出した。「バッテリーはほぼ同じエネルギー量を持ちながら、サイズは半分で30%軽量です。バッテリー管理システムとパワーエレクトロニクスは、損失の減少に最大の焦点を当てて設計されています。この効率化目標を達成するために、将来の開発プログラムに応用できることを数多く学びました」。

このエネルギー密度向上を可能にしたのは、Mercedesがアノードの化学における「重要な進展」と呼ぶもので、シリコン含有量が高く、一般に使われているアノードより大幅に多くのエネルギーを蓄積可能な最新の化学組成からなる。

外観は、傾斜したフロントとグロスブラックのグリルとローズゴールドのハイライトに加えて、フロントパンパーには2Dのスターパターンがあしらわれている。ヘッドライトは2つの星型部分からなり、大きい方のセンターレンズの後方にロービームとハイビームのライトアレイがある。Mercedesは、この星型の配置とバンパーにある2Dスターパターンは、将来のモデルに採用されるフロントエンドデザインのプレビューになっていると語った。

後部にはサプライズがある。リトラクタブルリアディフューザーだ。

Mercedes-Benz VISION EQXXのエクステリア(画像クレジット:Mercedes-Benz)

室内には8K解像度の47.5インチ一体型LEDディスプレイがある。このインフォテイメントスクリーンは応答の速いリアルタイムグラフィクスが表示され、クルマの幅いっぱいまで表示されるとMercedesはいう。同社がNAVIS Automotive Systems(ナビス・オートモティブ・システムズ)と共同で開発した3Dナビゲーションシステムを使って、ユーザーはこの巨大画面をズームインしたりスクロールしたりできる。そして同社の最新モデル車と同じく、EQXXにはユーザーの行動を学習していく最新ボイスアシスタント・ソフトウェアが搭載される。

Mercedes-Benz VISION EQXXのインテリア(画像クレジット:Mercedes-Benz)

EQXXの機能と開発成果の多くがすでに生産モデルで利用されており、コンパクトカーおよび中型車のためのMerceds-Benz Modular Architecture(メルセデス・ベンツ・モジュラー・アーキテクチャー)もその1つだと同社は言った。

画像クレジット:Mercedes-Benz

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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