藤川真一(通称えふしん)氏は2007年、まだ日本でiPhoneが発売されていなかった時代にフィーチャーフォン向けのTwitterクライアント「モバツイ(当初はモバツイッター)」を開発し、その後会社を設立、ユーザー数が160万人に達した昨年5月にjig.jpへ会社ごと売却した。
このような経緯を持つえふしん氏が本日新たなiOSアプリ「ShopCard.me」をローンチした。このアプリは訪れたレストランやカフェといった店舗情報をカードとして保存したり、共有したりできる。このカードは「ショップカード」と呼ばれ、表面と裏面が用意されており、表はアプリ利用者全員で共有される店舗名、住所、電話番号といった情報が、裏はプライベートなもので自分が何を食べたか、店に何回訪れたかといった情報が記録される。
もちろん店を記録するだけではなく、店を発見するために近場の店舗情報を一覧で表示してくれる機能なども備えられている。だが、えふしん氏がこだわるのはリアルでの行動のようだ。
例えばこのアプリでユーザーに何を体験してもらいのかというと、「お気に入りの店を友達に教える時に使えること」だという。会話の中でオススメの店名を思い出せなかったり、調べようとしても店舗内で電波が繋がらなかったりする時*に、このアプリで簡単にその店の情報を取り出し共有してもらいたいそうだ(*: ショップカードはオフラインでも閲覧できる)。えふしん氏はこのようなリアルでのコミュニケーションを取ることに価値を見いだしている。
実はえふしん氏は前社を売却後、今年4月から慶應義塾大学メディアデザイン研究科に入学し、このようなモバイルを活用した近距離コミュニケーションメディアをテーマに研究をしている。具体的には飲み屋に入った時に知らない人と会話することは難しいけど、3.11震災時には話したこともない近隣住民とコミュニケーションを取れたのはなぜかといった具合だ。それは共通の不安な気持ちが互いに話しかけても良いという状態を産み出したからで、こうした状況を作りリアルでのコミュニケーションをもっと豊かにできないかという研究をしているという。ShopCard.meは友達などすでに面識のあるユーザー同士が使うアプリではあるが、リアルでのコミュニケーションを豊かにするという点ではこのような研究が活かされてくるのだろう。
また、冒頭で述べたモバツイもその頃から同じ思想で開発されていたようだ。モバツイを作ろうと思った理由はTwitterを「持ち歩ける」ようにしたいという気持ちだった。今でこそ皆がスマートフォンを使ってリアルタイムにTwitterを利用しているが、2007年の当時はPCからの利用が多かった。そこでモバツイが登場し、リアルタイムの情報を持ち歩けるようになった。今回のShopCard.meも同様にショップの情報を「持ち歩く」ことで新しい価値を産み出せればとえふしん氏は語る。
今後はユーザー数の拡大とともに店舗側からプッシュ通知を送れる機能や、モバイルに特化したサービスならではの機能 — 移動販売の店舗情報をリアルタイムで更新 — などの追加を検討しているとのこと。なお、Androidアプリは今後開発予定だ。