ライブコマースプラットフォーム「PinQul(ピンクル)」を提供するFlattは4月17日、7人の個人投資家を引受先とする第三者割当増資により総額2700万円を調達したことを明らかにした。
今回のラウンドに参加したのは、Fablic代表取締役CEOの堀井翔太氏、メルペイ代表取締役の青柳直樹氏、個人投資家の三木寛文氏を含む7人。Flattでは2017年5月にもヘイ代表取締役社長の佐藤裕介氏やペロリ創業者の中川綾太郎氏らから数百万円を調達。同社に出資する個人投資家は合計で11人になったという。
今回調達した資金を元に取り扱い商材の拡大、インフルエンサーの起用、流通の最適化に加え、関連サービスの新規開発やWeb版の開発を進める。
ユーザーとの接触数を増やすための“メディア性”がキモ
冒頭でも触れたとおり、PinQulはインフルエンサーがライブ配信をしながらお気に入りの商品を販売できる、ライブコマースプラットフォームだ。ライブコマースは中国で一足早く普及し、2017年の1年間で日本でも一気に広がった。2018年に入ってもKDDIとエブリーが共同で事業開発に取り組むと発表するなど、すでに複数の企業が新規で参入。引き続き注目を集める市場になりそうだ。
PinQulの正式リリースは2017年の10月。コアなファンを抱える「マイクロインフルエンサー」を地道に開拓し、限られた配信者のみがライブ配信をできる仕組みとして運営してきた。11月中旬からはプライベートブランド「P.Q. by PinQul」を提供、2018年2月にはTOKYO BASEが手がける新ブランドのライブ販売を実施。合わせてPinQulを活用したい企業のサポートや、配信者の公募も始めている。
Flattの代表取締役CEOを務める井手康貴氏によると、プロダクトリリースからの約半年間は最低限の仮説検証のため、さまざまなことに取り組む期間だったという。今回の資金調達はその結果をもとに一層アクセルを踏むためのものだといえそうだ。
「ライブコマースについて良い点も悪い点も明確に見えてきた。悪かった点は改善しつつ、今後は取り扱い商材の拡大やインフルエンサーの起用を継続しながら関連サービスの新規開発にも取り組み、事業の拡大を目指していく」(井手氏)
井手氏の話では今後のPinQulで特に重要テーマとなるのが「接触数、視聴数を増やすための場所の確立」だ。配信ごとのCVR(購入率)やPBの売り上げが順調な一方で、ライブ配信だけではユーザーとの接点が限られる。今後スケールさせていく上では、いかにユーザーと接触する機会を増やし、PinQulへ誘導できるかがキモになる。
「最初はアーカイブ動画をコンテンツとして残しておくことで接触数を増やせるのではないかと考えていたが、実際はあまり上手く機能しなかった。今は別の手段でメディア性をもたせることを考えている。具体的には常に見ていて楽しいコンテンツをアプリ内もしくは外部のプラットフォームとして育て、相性のいいものをライブで扱うといったスキームだ」(井手氏)
Flattでは最近PinQulのAndroid版をリリースし、現在はWeb版の開発にも取り組んでいる。同時にサイトの設計も商品情報をベースとした「ECっぽい感じのUI」に変えていく予定。あくまでも軸はコマースの部分におきつつもメディア性を加え、その中で最適なライブの見せ方を模索していくという。
企業との取り組みを強化しキャッシュポイントを作る
またキャッシュポイントを作るという観点では、今後法人との取り組みも一層強化する方針。キーワードになりそうなのはリアル店舗とPBだ。
「日本のEC化率はまだまだ今後伸びる余地がある中で、リアルも含めた購買行動の設計を考えている。ポップアップショップにライブコマースとインフルエンサーを絡めた取り組みなど、具体的に話を進めている段階だ」
「扱う商品としては既存の商品よりもPBに注力していく。たとえばYouTuberなど影響力のあるインフルエンサーとPBの相性がいいことはわかっている。今後は『PBの請負人』のような形で、インフルエンサーがオリジナルの商品を作って売りたいと思った際に選ばれるポジションもとっていきたい」(井手氏)
最近資金調達をした「ShopShops」のように、配信者がブランドの店舗でライブコマースを行うというプロダクトも海外では登場し始めている。これはあくまで例にすぎないが、リアル店舗×ライブコマースという切り口はまだまだ発展の余地がありそうだ。
今回井手氏の話の中で、Flattとして将来的にはコマース領域以外でも複数の事業を展開し、多角化を図っていきたいという話もあった。とはいえまずはEコマースに注力し「10年以内にEコマースで最大のプラットフォームになる」ことを目指していくという。