Pusherはロンドンで、アプリケーションにプッシュ通知やメッセージなどのリアルタイム機能を持たせたいデベロッパーのためのツールやクラウドインフラストラクチャを提供している。同社はこのほど、シリーズAで800万ドルを調達した。ラウンドをリードしたのはロンドンのVC Balderton Capitalで、サンフランシスコのHeavybitが参加した。後者は、デベロッパー向けの製品を作っている企業に成長資金を提供している投資家だ。
2011年に100万ドルというささやかなシード資金で創業したPusherは、Webサイトやアプリケーションにリアルタイム機能を作りこみたいデベロッパーのために、その敷居を相当低くしてあげることをねらっている。そのために同社が最初に作ったのは汎用のリアルタイムAPIと、それを支えるクラウドインフラストラクチャで、それらを使うとアプリケーションのデベロッパーは、リッチなプッシュ通知やコンテンツのライブアップデート、リアルタイムのコラボレーションやコミュニケーションなどを、容易に作ることができた。
しかし最近の同社は、もっと具体的で専門的なリアルタイム機能をデベロッパーに提供するようになった。その最初の製品であるChatkitは、アプリケーションやサービスにチャット機能を加えるために必要な、いろいろな難工事の多くを引き受けるAPIとSDKだ。
協同ファウンダーのMax Williamsによると、シリーズAの資金は新しいデベロッパー向け製品の継続的な開発と、本格的なアメリカ進出による顧客への接近に充てられる。
現時点のアメリカ進出は、Heavybitのサンフランシスコのオフィスに間借りしている小さなチームだ。しかし成長とともにいずれはウェストコーストに大きなオフィスを持ち、年内にはそこに30名の社員を置きたい。営業とマーケティング、そしてカスタマーサポートも含めて、だ。
さらに、かなりの額をR&Dにもつぎ込みたい。そのためには、ロンドンの技術チームも増員したい。現在の社員数は60名だ。
Williamsによると、その目的を早く達成するためには、今回の資金が大いに助けになる。リアルタイムのデベロッパーツールは最近急速に市場が成長しているだけでなく、競争も激化している。でも彼の感覚では、Pusherは機会を先取りして無理なく成長できるだろう。もちろん、売上も並行して伸びる。このシリーズAの前までは最初の100万ドルのシード資金のほかに、250万ドルの(投資ではなく)融資があっただけだ。
Pusherによると、同社製品のユーザーは全世界で20万人以上、そしてそのAPIを使って1日に400億あまりのメッセージが送信されている。“1か月あたり80億あまりのデバイスを接続している”、という。同社の顧客のうち、The New York TimesはPusherを使ってリアルタイムのニューズフィードをアップデートし、メールマーケティングのMailchimpは社内のコラボレーションツールに利用、そしてスポーツゲームのDraftKingsは、リーダーボード(leaderboard, 戦績表, 順位表)のリアルタイムアップデートに使っている。