リノベーション住宅特化のオンラインマーケット「cowcamo」等を運営するツクルバは1月27日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)を引受先とした第三者割当増資および金融機関からの借入による資金調達を実施したことを明らかにした。金額等は非公開だが、数億円規模になるという。また調達にあわせて、GCPの上村康太氏が社外取締役に就任する。
リーマンショックからの起業
ツクルバの創業は2011年。信用金庫から数百万円の借入を行い、渋谷にコワーキングスペース「co-ba」を設立するところからスタートした。代表取締役CEOの村上浩輝氏と代表取締役CCO・クリエイティブディレクターの中村真広氏の2人は新卒でコスモスイニシア(旧:リクルートコスモス)に入社。しかしリーマンショックのあおりを受け、1年も経たずに会社を辞めることになる。
その後村上氏はネクストで不動産関連のビジネスに、中村氏は大学時代に学んだ建築学を武器にデザイン事務所に入社。それぞれキャリアを積んだ後にツクルバを立ち上げた。なお冒頭の写真にいる高野慎一氏はリクルートコスモスの元役員。2人がコスモスイニシアに入社するきっかけになった人物だ。2015年10月にツクルバに参画した。
受託から自社事業への転換
コワーキングスペースの運営からスタートした同社だが、その後は2人のキャリアを生かして空間プロデュースに乗り出す。最近では、六本木ヒルズに移転したメルカリのオフィスなんかも彼らのプロデュースだ。そんな同社だったが、2015年に入ってcowcamoを立ち上げ。社内にエンジニアを置き、自社でウェブサービスを開発するに至った。これにあわせて、2015年2月には、East Venturesとアカツキを引受先とした第三者割当増資も実施した。
「デザインの会社が(資金を調達して)ITの会社になったのは、突然変異ではなくこれまでの延長線上。思いつきで『メディアを作る、アプリを作る』と考えたわけではなく、どんなベンチャーでもテクノロジーを活用することが必須になったと考えたから」——村上氏はこう語る。
ツクルバ創業時から代表2人には「大量生産大量消費でない、『先進衰退国』となった今の日本だからこそできる事業で成長していく」という思いがあったそうだ。もちろんそんなことを言ってもまずは自分たちの食い扶持を稼がないといけない。「『会社を経営する』ということも最初は手探りで、受託もやってとにかく必死でやってきた。3期で黒字になって、より急角度に成長するために受託から自社事業に切り替えようとなった。会社の知見や信用、ノウハウを考えれば、cowcamoのモデルだった」(村上氏)
不動産全体では縮小しているが中古住宅だけは伸びつつあるという市場環境(政策としても2020年に中古住宅流通・リフォーム市場の規模倍増(20兆円)を掲げている)、オフィスの空間プロデュースに加えて住宅リノベーションなども手がけていたことでできた仕入れルート。起業前に不動産仲介を手がけていたノウハウ——これらがあってcowcamoというサービスは生まれたという。最近では360度動画によるバーチャル内覧機能なども実装。月間流通額もサービス正式ローンチから半年で数億円規模に成長した。ツクルバでは今回の資金調達をもとに、開発体制強化や営業人員拡大を進めるほか、各種プロモーション施策も展開していく。
また冒頭に書いた通り、今回の調達にあわせて、GCPの上村康太氏が社外取締役に就任する。このほか公認会計士の服部景子氏が常勤監査役に、同じく公認会計士の小池良平氏が監査役に、GCPの高宮慎一氏がアドバイザーにそれぞれ就任する。
実は上村氏と村上氏は同年代の起業家(上村氏はかつて「ソーシャルランチ」を運営するシンクランチを起業。Donutsに売却している)としても数年来の親交があるということ。両者はビジネスに関する相談はしていたが、もちろん資金調達は私情ではなく「VCとして素晴らしかったのでGCPに引受をお願いした」(村上氏)、「チームだけでなくプロダクトや数値を厳しく判断して、半年ほどかけて投資決定に至った」(上村氏)とのこと。