Analogue(アナログ)のように、自分たちの使命を、ずっと一貫して、しかも高い品質レベルで遂行しているIT企業は、非常に稀な存在となってしまった。Analogueがこだわりを持って開発した最近のゲーム機には、博物館収蔵品かと思えるようなレベルのハードウェア設計が施され、昔のゲーム機のカートリッジをそのまま利用できるようになっている。入念にチューンされたプロセッサを内蔵し、ファミコン、メガドライブ、スーファミ、その他のレトロなゲーム機用のゲームを、現在のHDテレビ上で、完璧に、1ピクセルの狂いもなくプレイできる。そして同社の新製品、199ドル(約2万1600円)のAnalogue Pocket(アナログ・ポケット)は、同様の高品質で、旧いポータブルゲーム機用のカートリッジをプレイするための、最高の環境を提供することを目指したもの。
Analogue Pocketは、ゲームボーイ、ゲームボーイカラー、ゲームボーイアドバンスのゲームカートリッジを、そのまま差し込むだけで、エミュレーションなしでネイティブにプレイできるポータブルゲーム機だ。本物のゲーム機で遊んだ経験のある人にとっては、昔の記憶のままの感覚で動作する。昔のタイトルで初めて遊ぶ人にも、本物のゲーム機と同じ感覚が味わえるはず。しかも、それだけではない。カートリッジアダプターを使えば、ゲームギア、ネオジオポケットカラー、Atari Lynx(アタリ・リンクス)など、他のゲーム機のカートリッジも動くのだ。
Analogue Pocketは、2種類のFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)を内蔵している。これらのFPGAは、ゲームを当時の意図通りに動作させるためのプロセッサとして機能する。各ゲーム機に内蔵されたシリコンチップを模倣して動作し、オリジナルのハードウェアの動きを忠実に再現するのだ。その結果、ほとんどオリジナルのように感じられる、素晴らしいゲーム体験が得られる。ただしゲームは、3.5インチで1600×1440ドットを表示可能な、615ppiという高解像度液晶ディスプレイを備えた、Analogue Pocketの非常に印象的なハードウェア上で動作する。数字が気になる人のために付け加えれば、これはオリジナルのゲームボーイのディスプレイの約10倍の解像度。しかも、驚くほど鮮やかな色と明るさでプレイできる。実のところ、レトロゲーム機としてだけでなく、あらゆるゲーム機の中でも、最高のディスプレイだ。
またAnalogue Pocketは、Analogue Dockと呼ばれる別売り(価格未定)のアクセサリと組み合わせて動かすこともできる。これにより、HDMI出力と、Bluetoothまたは有線のコントローラーが接続可能となる。つまり、大型テレビに接続して遊ぶ家庭用のゲーム機としても使えるようになるわけだ。このドックは、有線コントローラー用に2つの標準USBポートを装備する。またBluetoothを利用すれば、8Bitdoの素晴らしいワイヤレスゲームパッドでも遊べるようになる。8Bitdoのゲームパッドは、基本的にはSwitch用だが、Game Boyシリーズのゲーム用としても十分に機能する。見た目も、なかなか高級なハードウェアのように感じられる。
ポータブルゲーム機としては、これだけでも十分だろう。しかし、Analogue Pocketの世界は、それだけではない。デジタルミュージックを作成するための、シンセサイザーとシーケンサーも内蔵しているのだ。さらに2つ目のFPGAは、特に開発用に設計されている。それを利用して、デベロッパーのコミュニティが、独自のコアを移植することもできる。それにより、将来的には、さらに多くのクラシックゲームや、移植版のゲームがサポートされることにもなるだろう。
Analogue Pocketは2020年中には発売予定だが、具体的な日程は後日発表されることになっている。これまでに、Nt Mini、Super Nt、Mega Sgなどを発売して、優れたゲーム体験を提供してきた会社にとって、これは次に目指すべき、自然なステップだったと言える。それでも、同社がポータブルゲーム機のきらびやかな歴史に取り組んでくれていると分かったのは、ワクワクするような嬉しい驚きだ。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)