中国のゲイ専門デートアプリ「Blued」がNASDAQにIPO申請

20年ほど前のことになる。Baoli Ma(バオリ・マー)氏は中国でゲイであることに絶望と孤独を感じ、寝室に隠れていた。

その後、マー氏の人生は大きく変わった。6月16日、同氏が立ち上げたゲイを専門とするデートとライフスタイルのプラットフォームBlueCity(ブルーシティ)がNASDAQ(ナスダック)にIPOを申請したのだ。

「私にとって、インターネットの力が大きい。インターネットによって私たち自身の存在を高めることができ、また性的指向のために孤独や絶望感の中で暮らしている世界中の全ての人に思いやりを届けることができる」とCEOのマー氏は米国証券取引委員会への趣意書に書いた。

IPOで5000万ドル(約53億円)の調達を目指すとしたが、米国預託証券(ADS)の公募価格は決めていない。上場で調達する資金は新たなテクノロジーや国内外マーケットの拡大にあてる。現在は月間ユーザーの半分が海外マーケットだ。

ゲイであることを公表していなかった元警官のマー氏は、 LGBTQにフォーカスしたオンラインフォーラムとしてDanlan.orgを2000年に立ち上げた。そして2011年にBlued(ブルード)を設立するために仕事を辞めた。Bluedはゲイ専門のデートアプリでBlueCityが親会社だ。

当初は、多くの人がBluedをGrindrのコピーキャットとして見ていた。Grindrはカリフォルニアのスタートアップで、セキュリティ問題で売却を余儀なくされる前は中国企業が所有していた。Bluedは差別化を図るために数多くの機能を考案した。Bluedは主に同性愛の男性が使用していて、チャットやライブブロードキャストができるようにデザインされている。ただ、このアプリにはあらゆるLGBTQの人々のためのサービスが含まれ、6月には中国のレズビアンデートアプリを買収するための株式投資の落札内示書を出した。

3月時点のBluedの月間アクティブユーザーは600万人、登録ユーザーは4900万人だ。インドや韓国、タイ、ベトナムといった海外マーケットのファンも引きつけている。

Bluedの売上高の大半はライブブロードキャスティング中のバーチャルアイテムの販売によるものだ。1億700万ドル(約114億円)だった2019年売上高の88.5%がバーチャルアイテム販売だ。他の収入源は広告と会費で、会費を払うとユーザーはアプリ内のプレミアム機能を利用できる。

近年同社はLGBTQコミュニティのためのヘルスサービス提供を模索している。HIV相談や、クライアントへの海外の代理母の紹介(Blue Babyサイト)などだ。

BlueCityが想定しているビジネスリスクは、政府の政策と、さまざまな地域のマイノリティコミュニティに対するネガティブな社会の目だ。2018年初め、インドネシア政府はGoogle Play Storeに、Bluedを含むその部門の何十ものアプリを削除するよう求めた。ユーザーの安全を確保するのも極めて重要だ。2019年にBluedは未成年のユーザーに性的搾取をさらし、年齢確認に不備があったとして非難され、ユーザー登録の一時停止を余儀なくされた(Caixin記事)。

中国は1997年に同性愛を解禁し、2001年に精神疾患のリストから同性愛を除外したが、同性愛の公表はまだ微妙だ。中国で人気のミニブログサイトのSina Weibo(新浪微博)が同性愛に関連するコンテンツの禁止を発表したとき、同性愛コミュニティや多くの市民の間で大きな抗議が起こった。Sina Weiboは後に禁止を撤回(The Guguardian記事)した。

画像クレジット: Blued via App Store

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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