中国の電気自動車メーカーのByton(バイトン)は、世界的なメディア企業であるViacomCBS(バイアコムCBS)など重要な鍵となる企業との提携を進め、動画コンテンツをはじめとする情報やその他のサービスを、間もなく発売される電動SUVであるM-Byte(エムバイト)に搭載する。ドライバーを取り囲む、驚きの48インチデジタル・ダッシュボード上に。
電気自動車スタートアップは、そのダッシュボードを「Byton Stage」と呼び、その他のいくつものディスプレイとともに、娯楽やナビゲーションから、健康状態やPowerPointのスライドのレビューに至るまで、あらゆるものをそこから提供してTesla(テスラ)と競うという大きな目標達成の一助にする考えだ。
「この数年間、テスラが突出した地位にいた世界で、私はみんなからずっと、こう聞かされてきました。テスラは新しい高級電気自動車のもうひとつの選択肢を迎え撃つ準備を整えていると」とBytonのCEOであるDaniel Kirchert(ダニエル・カーチャート)氏は、現地時間1月5日、米国ラスベガスのCESを目前に開かれた記者会見で語った。「Bytonは、そのもうひとつになる準備が出来ています」。
そしてM-Byteの量産型車両を記者会見で公開した。今年後半に大量生産に入ることが期待されている同車は、価格が4万5000ドル(約490万円)になるとカーチャート氏は話していた。同社によると、M-Byteは南京のバイトンの工場で生産される予定で、18カ月以内に発売が開始されるという。まず2020年後半に中国で、続いて米国、そして2021年前半にヨーロッパで発売となる。
また同社は、M-Byteにコンテンツを提供するパートナー企業を発表した。ViacomCBSのほか、Access(アクセス)、Accuweather(アキュウェザー)、Aiqudo(アクイド)、CloudCar(クラウドカー)、Road.Travel(ロード・トラベル)、Xperi(エクスペリ)といった企業が名を連ねている。
こうした提携企業のそれぞれが、インタラクティブなコンテンツのエコシステムを満たしていく。Bytonがその「ステージ」にコンテンツを届けるために使用するプラットフォームはAccess Twine(アクセス・トゥワイン)だ。完全版のCloudCarはクラウドに接続された自然言語認識を行う。AiqudoのVoice to Action(ボイス・トゥー・アクション)プラットフォームはユーザーの音声による命令とスマートフォンのモバイルアプリとの統合を可能にする。Road.Travelは旅の計画や予約を管理し、XperiはデジタルHDラジオとDTS Connected Radioを提供する。
これらのコンテンツのうち、たとえばViacomCBSからの動画などは、M-Byteが駐車中にのみ見られるようになる。これは、数多くのゲームやストリーミング動画が車内で楽しめるテスラの方式に準じている。駐車している間、「シネマモード」に切り替えると動画の視聴が可能になり、「オフィスモード」にするとPowerPointのスライドが見られるようになる。モードは近い将来にもっと増える予定だ。同社はまた、アプリ開発プログラムを立ち上げるとも話していた。
「私たちの目標は、Byton M-Byteを、みなさんのデジタルライフの一部分としてとシームレスに統合することであり、魅力的な動画コンテンツを簡単に視聴できることは、そのエクスペリエンスには欠かせません」と、同社の最高顧客責任者であるAndreas Schaaf(アンドレアス・シャーフ)氏は事前に用意されていた声明の中で述べている。
Bytonもまた、テスラやBMWなどの他の電気自動車メーカーに従い、エネルギー貯蔵ビジネスに参入する。1月5日の会見では、M-Byteのバッテリー技術を応用した住宅用および商業施設用の固定型エネルギー貯蔵システムを開発すると話していた。カーチャート氏によれば、このエネルギー貯蔵システムは、南京のバッテリー組み立てラインで製造されるという。
今回の発表に至る1年間は、同社にとって波乱の年だった。BMWの幹部からBytonの共同創設者となり、CEOと会長を務めていたCarsten Breitfeld(カーステン・ブレイトフェルド)氏は4月に辞職し、現在は電気自動車スタートアップであるFaraday Future(ファラデイ・フューチャー)のCEOになっている。またBytonは、新たに5億ドル(約540億円)の増資を必要とする財務上の逆風に見舞われていた。
この財務上の問題は、今では解決した模様だ。カーチャート氏は1月5日、2つの投資企業からのシリーズC投資を確保したと話していた。韓国の自動車パーツメーカーのMS Autotech(MSオートテック)の子会社であるMyoung Shin(ミョン・シン)と日本の大手商社の丸紅だ。
画像クレジット:Byton
[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)