人工知能による審査をクリアした大学生・大学院生のみが入会できるSNS、「Lemon」については2015年5月に紹介したが、今日から参加ユーザーの対象を大学生に加えて一般社会人にまで広げた。
「毎日、学校や職場の人としか会わない。もっといろんな人と交流したい」、「他の業界の友人を作り世界を広げたい」、「職場に出会いがなく、恋人ができない」といった声に応えるべく業界や学校といった枠を超えた交流ができる、というのがLemonの売りだそう。Lemon上でユーザーは、自分の仕事や活動内容を軸にして掲示板やメッセージのやり取りができる。オフ会などもあり、すでにビジネスパートナーになったとか、友人・恋人になったといったユーザーもいるのだという。プレスリリースから、具体的な声を抜き出すと、
「アフリカをテーマに事業立案したいと考えていたところ、Lemonのおかげで当時アフリカインターン中だった仲間と出会い、ビジコンに出場できました!」(京都大学理学部4年)
「イギリス留学に関しての掲示板がきっかけで、お互いの留学経験についてメッセージするうちによく会うようになり、今は付き合っています」(中央大学4年)
というものがある。ちょっと意識が高めだね。ちょっと甘酸っぱいね。
若い人が集まれば、そりゃ恋の1つも生まれるだろうから、これだけで何かが言える気がしないのだけど、ちょっと面白いのは当初想定していたのと異なる気づきがあったという話だ。親和性が高いユーザー同士でコミュニケーションが発生するのかとおもいきや、案外そうでもなかったという知見が出てきてるという。LIP代表社長の松村有祐氏は、次のように話す。
「審査という点では親和性を軸にしたアルゴリズムで入会審査をやってきました。開始時に話題になったこともあって、すごいプロフィールの方々が集まり、結果として審査通過率は思ったよりも高かったです。一方で定性的観点からみると、ちょっとユーザー層が偏ってしまうという結果が見えました。いろいろと目指す方向になるようにアルゴリズムは随時修正しています。で、そもそも親和性ベースでの審査がどうかという点については、Lemon内のユーザー間のコミュニケーションの発生について分析をしました。結果としては、親和性の高低とコミュニケーションの発生については必ずしも全てに相関があるというわけではなく、ユーザーへのヒアリングを続けたところ、むしろ、親和性が低いというか、あまり接点がないユーザーとの交流を求めている人も多いというインサイトが発見されました。それが今回社会人解禁するにあたって、普段接点のない人たちとの交流を推すことにもつながっています。おすすめユーザー紹介機能やメッセージの送受信などの動向を学習しており、もちろん引き続きもっと良いアルゴリズムの開発に取り組んでいきます」
これはアルゴリズムというよりもコミュニティー運営上の理念みたいなものかもしれないけど、もう1つLemonがユニークなのは、どんどん参加者の顔アイコンを小さくしていっている点だ。もともと松村氏は「顔面偏差値」で出会いの成否が決まることが多い、旧来のデーティング・サイトへのアンチテーゼを掲げて起業している面がある。リアルな出会いでは外見以外の内面がすぐ伝わるので、人柄やコミュニケーションの内容も出会いの成否に影響する。それをオンラインに持ち込むことができれば、よりリアルに近いパートナー探しの場が作れるのではないか、という発想だ。といっても、「最終的には異性との出会いというのもあるとは思いますが、Lemonでは最初からそこまで強い欲求を想定していません」といい、「知らない人とまずオンラインで知り合ってオンラインでお互いの内面を知り深める、そんなコミュニケーションを想定しています。だから、どちらかというとダイレクトな出会いのツールというよりは、Lemonの中でのコミュニケーションを楽しんで欲しいですね」と、松村氏は話している。