バイキング1号の着陸船が火星の地面に触れ、「赤い惑星」に初めて人類の軌跡が刻まれたあの瞬間から40年が経つ。着陸船からNASAに送られた前人未到の地のデータが記録されたのは当時の最新保存媒体―そう、マイクロフィルムである。そして今、このアナログデータを後世のため、そして科学のためにデジタル化しようと立ち上がった1人の科学者がいる。
「初めてそのマイクロフィルムをこの手に抱えたとき『信じられないような実験を行ったのに、残ったのはこれだけなんだ』と思ったのを覚えています」と、メリーランド州にあるゴダード宇宙飛行センターの記録庫に勤務する科学者であるDavid Williams氏はNASAのブログで述懐している。「もし、このフィルムに何かあれば、記録は永久に失われてしまいます」
靴箱いっぱいのフロッピーディスクについて同じ思いを抱いたことがある人も多いだろう。そして、おそらく「一刻も早くデジタルで保存しなければ」と直感したはずだ。
彼のチームが着手したのはまさしくそれだった。マイクロフィルムリーダー(昔の図書館で使用されていたのを覚えている人もいるかもしれないが、良い思い出のある人は少ないだろう)を使って、1本1本デジタル化する作業である。
これは、単なる感傷的な思いに駆られた行動ではない。ほかの惑星への着陸ミッションは数に限りがあり、それによって得られたデータは永久的に重要な意味を持つからである。現に、Williams氏がこのマイクロフィルムを探したのは、ある仮説の検証のためにそこに記録されたデータを要求した生物学者がいたからにほかならない。
火星探査車キュリオシティや、計画中のMars 2020などの現在進行形のミッションでも、バイキング1号などのデータとの比較が必要になるだろう — 結局のところ、数十年間にわたる変化から、土壌中や大気中で進行している興味深い現象が判明するかもしれず、そこから生命体の存在(または欠如)などが推定できるかもしれないのだ。
「バイキングの着陸船の能力や搭載機器は、当時の技術としては最先端のものでした」と、同じくゴダード宇宙飛行センターの科学者であるDanny Glavin氏は言う。「バイキングのデータは、40年経った今でも活用されています。コミュニティがこのデータにアクセスできるようにすることで、50年後の科学者たちでもこのデータに立ち返って利用できるようにすることが大切なのです」
この古き良きアナログメディアをデジタル化するというプロセスに興味をもったため、筆者はNASAに詳細を問い合わせている。返答があり次第追加情報の更新を行いたい所存である。
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(翻訳:Nakabayashi)