今の学生たちがモバイルアプリに求めているもの…アンケート調査の結果

[筆者: Noah Lichtenstein]

編集者注記: Noah Lichtensteinは起業家でCowboy Venturesのパートナー。同社はソフトウェアによって仕事や生活を変えたいと志向する起業家たちを支援するシード段階のファンドだ。

Apple App StoreとGoogle Play Storeを合わせると100万を超えるアプリがあるから、消費者が必要とすること・ものなら何でも、それを満たすアプリが必ず(一つにつき10種類ぐらい)ある、と言えるだろう。それなのになぜ、この互いに競合してひしめき合うアプリの大海は、膨張する宇宙のように肥大し続けているのか? 宇宙の闇の中へ吸い込まれて消えていく、宇宙船のようなアプリも、少なくないというのに。その答は、“マジック”という言葉にある。

マジックは、大成功したスタートアップを一角獣と呼ぶのと同じく、物理的な事実ではなく暗喩だ(人生はドラマだ、と言っても、人生は本当のドラマ(演劇)ではない、などと同じ)。人びとが大好きなアプリの数々、それらをなぜ大好きなのかといえば、それらのアプリの動作や、やってくれることが、まるでマジックのようにすばらしく、おもしろく、楽しいからだ。画面のボタンを一つ押すだけで、ほら、ぼくの仮想の車が走りだす。おかしな写真をタップすると、ジャーン!、画面に友だちの笑顔が現れ、やがて消えていく。 かわいい女の子の写真を右にスワイプすると、おやまあ、そのときやはり右スワイプした人とのチャットが始まる。こんなアプリの動作は、どれもまさに、マジックだ。

モバイルのソフトウェアがどんどん世界を食べているのだから、われわれCowboy Venturesの連中は考えた。まだ広く知られていない、無名に近いようなアプリの中にも、すごいマジックがきっとあるはずだ、と。そこでわれわれは、1000名あまりの高校生と大学生を対象にアンケート調査を行った。調査を実際に行ったのは、スタンフォードの学部学生たちだ。われわれが知りたかったのは:

1. 人気上昇中だけどまだ知ってる人の少ないアプリは何か?

2. あってほしいけどまだないアプリはどんなのか?

小規模なアンケート調査だから偏りがありえるし、またデータをふるいにかけるやり方もかなり恣意的だったかもしれない。それを承知で、以下をお読みいただきたい。

一番人気はどの馬?

残念ながら、人気急上昇中だけど、まだ、知る人ぞ知るというタイプのアプリで、それが本格的にブレークする前にわれわれ投資家が食いついておきたいほどの、アプリはなかった。その代わりわれわれが見つけたのは、今主流のカテゴリーとは別のところで、学生たちが種々雑多な大量のアプリを使っていることだ。3300のアプリが挙げられた中で、そのうちの1500はたった一回(==一人の回答者)しか挙げられていない。票数1票、である。知名度の低いアプリの中で、回答者の2.7%(30人弱)以上が頻繁に使っているアプリというものは、存在しない。すなわちここは、集中よりもむしろ拡散の世界である。

それにはたぶん、いくつかの理由がある。第一に、初期のモバイルのマジシャンたち…Facebook、Instagram、Snapchat、Spotify、WhatsAppなどなど…が消費者の毎日の相当多くの時間を占めている。第二の理由としては、アプリの開発費用が低下しているので、特定の機能に特化したアプリ(==ユーザ数少)も比較的安く作れる。そのためアプリのロングテールがますます長くなり、実にさまざまな消費者ニーズに対応するようになった。そして一つのプラットホームでユーザを喜ばせたアプリも、その好調な体験をクロスプラットホーム化できない。たとえばデスクトップの人気アプリはモバイルの携帯やタブレットではぱっとしないし、その逆も真。

彼らが本当に欲しいものは?

もうすぐブレークしそうな隠れヒット作は見つからなかったけど、学生たちの“願望”はわかってきた。

“もしもあなたが魔法の杖を持っていて、自分が毎日使いたいアプリを作れるとしたら、どんなアプリを作りますか?”、という質問には、20%あまりが、総合的な、トゥドゥー+カレンダー+生活管理アプリ、つまり人生のまとめ役〜整理役のようなアプリを求めた。いわばそれは、“Productivity 2.0”というマジック(Microsoft Officeに代わる未来の生産性アプリ)を求める声だ。ユーザのモバイルの上にあるすべての情報から、そのユーザの生活と仕事を理解し、生活と仕事の両方を賢くサポートしてくれるアプリだね。

その願望は、一人の回答者のこんな声にも現れている:

“ぼくのカレンダーに載ってるすべてについてプッシュ通知をくれるアプリ。最初の会議がX時だったら、それに間に合うY時に起こしてくれること。次の会議はどこで何時だから、そのためのベストの交通機関は〜〜〜と教えてくれる。誰かが会議に遅れるとメールしてきたら、即そのこともpingする。要するにいろいろ自分で調べなくても(pullしなくても)、必要なことをすべてpushしてくれるアプリ。”

そのほかに今の学生たちが求めている情報のマジックは、次のようなものだ:

  • 何でもコンテキストに合わせる — ユーザが今どこにいて、何をしているか、何を感じているか、等々に合わせて情報を提供できるアプリ。
  • 何をどこでいつ食べるか — 今家にある材料、今やってるダイエット、今の健康状態、などなどに合わせて食べるもの、場所、そのスケジュールなどを教えてくれるアプリ。
  • 複数のソースから情報を集める — ユーザの好きなコンテンツ、好きなソーシャルネットワーク、などから、ユーザが今どこまで理解しているか、見ているかに基づいてフィードするアプリ。
  • 着るものを決めてくれる — 今持ってるもの、最近着たもの、今の天候、これからどこへ行くか、今の気分、などに基づいて、これを着ろと言ってくれるアプリ。

この調査に宇宙船は見当たらないが、票数のもっとも多かった(2.7%)既存のアプリは、教育に照準を当てた生産性アプリNotabilityだった。Notabilityは、ノート取りと講義の録音とドキュメントの注釈記入と、スケッチとワークシートと、その他いろいろをまとめたアプリだ。コラボレーションの機能があり、クラウドストレージを利用できる。だからある意味ではNotabilityは、回答者が求めた新世代の総合的生産性アプリを表しているかもしれない。

すべてのマジシャンに告ぐ

2007年のiPhoneのローンチは、マジックそのものだった。2008年のAndroidの商用ローンチと合わせて、モバイル上のラピッドアプリ開発の大波がやってきた。そこで今では、あらゆるもの・ことのためのアプリがある。

でも、そろそろ第二波が来る。最初の波は、モバイルデバイスの個々の特定の特徴を生かして、特定のことを専門に行うアプリが主だった。しかし第二波では、携帯上のばらばらな情報をシームレスに総合化できるアプリが主役だ。またデバイスの多様な機能も総合化して、それこそマジックのような、一体的なモバイル体験をもたらす。うちは、その第二波に対する初期的投資家の一つだから、そんなマジシャンを志向する起業家を今熱烈に求めている。

この記事はAileen Leeとの共作だ。

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*調査票の原本はここにある。完全な調査結果はここにある。回答者の70%はカリフォルニアの住民で、しかもスタンフォード色が濃い。調査結果に、そんな偏りがあるかもしれない。

お気に入りアプリの一覧はここにあり、その中にはおかしな回答もある。

このプロジェクトに協力してくれたDaniel LiemRick BarberRyan HooverWade Vaughnに深く感謝申し上げたい。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


投稿者:

TechCrunch Japan

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