カーボンオフセットのためのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)が出てくるのは時間の問題だった。カーボンオフセットとは、企業が世界の再生可能エネルギープロジェクトや炭素隔離プロジェクトに資金援助することで、自社の温室効果ガスの排出量を(紙の上で)相殺する自主制度だ。
eコマースと決済最大手のShopify(ショッピファイ)とStripe(ストライプ)は、すでにサービスとしての排出オフセットを顧客に提供しているが、今や数多くのスタートアップがソフトウェアを使って処理を自動化しようと狙っている。
たとえば Cloverly(クローバリー)は米国南西部の電力・ガス大手Southern Company(サザン・カンパニー)が社内で立ち上げたスタートアップだ。Patch(パッチ)はアパート管理と短期レンタルサービスのSonder(サンダー)出身の2人がスタートした会社だ。さらにはCooler.dev(クーラー・ドット・デブ)、そして森林再生と森林管理に焦点を当てた国際オフセットマーケットプレイスを運営しているPachama(パチャマ)などなど。
これは企業や消費者向けに環境フットプリントの観察と削減を行うサービスを立ち上げる、というアーリーステージ企業の間で起きている新たなムーブメントの一環だ。
Pachamaの場合、APIをビジネスモデルに組み入れるという発想は当初からビジネスプランに織り込み済みだった、と同社の共同ファウンダーであるCEOのDiego Saez-Gil(ディエゴ・サエズ・ギル)氏はいう。
「私たちが顧客としてShopifyに接してから事態は加速しました」とギル氏はいう。「Shopifyはカーボンニュートラルなサービスの提供を望んでいました。私たちはすでにカーボンクレジットをShopifyに売っていましたが、注文を手動で処理していました【略】 これを大規模でやるためにはクレジットの購入を自動化する必要があります」。
Pachamaが巨大ロジスティック会社でカーボンニュートラルなフルフィルメントサービスを提供しているShipbobと契約を結んでから状況が一変した。
PatchやCloverlyのような会社と異なり、Pachamaには自らのオフセットマーケットプレイスを使ってクレジットを提供できるという優位性があるとギル氏は感じている。
「私たちには、プラットフォームを通じて持ち込むあらゆるものについてマーケットプレイスと検証・監視サービスがあります」とGilは語った。
こうした背景によって、提供するオフセットの品質に高い透明性をもたらすことができる。
カーボンオフセットは、気象変動と戦うための有効な、しかし危険をはらむメカニズムであることが証明されている。ほとんどのプロジェクトは再生可能エネルギーや再生された森林、あるいは既存の森林や土地の保存といったかたちでコミュニティに真の利益をもたらしているが、一方では重複計算やカーボッオフセットの価値を水増しした単なる詐欺プロジェクトなどの問題がある。
Bloomberg News(ブルームバーグ・ニュース)のBen Elgin(ベン・エルジン)氏が連載している記事が、問題の広さを指摘しており、そこではThe Nature Conservancyなど信頼されている組織のプロジェクトも取り上げられている。
「これは、純粋な追加性の問題に行きつきます」とギル氏はいう。「プロジェクトに関わるものすべてについての炭素分離あるいは脱炭素の実際の増加は何なのか【略】オフセットの価値を評価するとき、私たちは科学に基づくアプローチと極めて保守的な仮定に沿う必要があります」。
透明性と説明責任はオフセットの開発、監視、管理をする上で極めて重要であり、これらのオフセットが、事業にともなう温室効果ガス排出量を劇的に減らそうとしている企業にとって中心的役割を果たすことを踏まえるとなおさらだ。
そしてオフセットは一時しのぎの措置にすぎない。最終的に企業は、社会にいっそう大きな影響をおよぼす気象変動のリスクを減らすために、一刻も早く自社の事業から炭素排出を取り除く必要がある。
「こんなに多くの会社がカーボンニュートラルなサービスを提供したがっていることを大変うれしく思います。やがて規範となるものであり、企業は顧客が望むからそうすることになります」とギル氏はいう。
カテゴリー:EnviroTech
タグ:カーボンオフセット、二酸化炭素、API
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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook )