「多くの企業において、営業の教育は直感に基づいて行われていると考えている。そこでBuffでは『データ計測と再現性を生み出す仕組み』をプログラムに落とし込むことで営業を科学し、組織を強化するサポートをしている」
そう話すのはBuff代表取締役CEOの中内崇人氏。2018年12月に同社を創業し、営業組織を強くするプログラム「Buff Sales」を運営している。
そのBuffは3月28日、サイバーエージェント・キャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。具体的な金額は非公開だが、数千万円規模の資金調達になるという。
同社では調達した資金を活用して人材採用やプロダクト開発を強化する計画。Buff Salesのサービス内容の拡充を進めるとともに、テクノロジーを活用した営業力育成ツールの開発を加速させる。
「データ計測・再現性を生み出す仕組み」を組織に定着
冒頭でも触れた通り、Buff Salesは営業組織を強化するためのプログラムだ。
現時点ではテクノロジーを絡めたものではなく、人手を介したコンサルティングに近い。具体的には、成果を出している営業マンの属人的なノウハウを他のメンバーが再現できるような形に落とし込んだり、それらを細かいKPIに分解し数字で計測する仕組みによって各メンバーの長所や課題を可視化する。
たとえば社内で成果を出している営業マンに、よく売れる理由を聞いてみると「トークがうまいから」「なぜか可愛がられるから」など曖昧な答えが返ってきて、そのままでは周囲のメンバーが再現できないケースも多い。
ただ、中内氏の話では彼ら彼女らを注意深く観察すると「度胸があるためいきなり決裁者にリーチできていたり、他の人の同席をお願いできている」「仲良くなるのがうまいので他の部署や他社の人材を紹介してもらえている」といったより細かい要因が見えてくるという。
「この例だけでも数値にすると、KPIに落とせるものが4つある。実際にKPIを基に計測してみると、売れている営業マンは異様に数値が高い。そこまで落とし込んだ上で再度『なぜ決裁者率が高いのか』を尋ねれば、毎回訪問前に特別な電話をしているなど、周囲のメンバーが真似できるレベルのナレッジが見つかる」(中内氏)
このように営業チームが目標を達成する上で“道しるべ”となるKPIの設定(BuffではプロセスKPIと呼んでいるそう)から、その指標に基づいて成果が出る組織を作るまでのプロセスを一気通貫でサポートしているのがBuff Salesの特徴だ。
「10人の営業担当者がいると、仮に売上自体は5番目だとしても、特定のKPIの達成率がものすごく高いようなメンバーもいる。KPIごとの達成率が見えるようになれば『各メンバーが何に優れているかがわかり、お互い学び合うことで高め合う』こともできる。そんな営業組織を作れるプログラムを目指している」(中内氏)
Buff Salesは2018年8月のスタート。現在はTechCrunchでも何度か紹介しているPOLなど3社の顧問を担っていて、営業マン1人あたりの売上が3ヶ月で3倍になったような事例も生まれているそう。まずは今後10社までこのプログラムを広げていく計画だという。
テクノロジーを用いた営業力育成サービスをローンチ予定
Buffの創業者である中内氏は神戸大学を卒業後、新卒でディー・エヌ・エー(DeNA)に入社。同社では一貫してゲーム事業に携わってきた。
Buff Sales自体は、繋がりのあったキーエンス出身の営業マンに話を聞く中で「同社で成果をあげている営業マンに共通しているのは、一見個人技のように見えて実は組織を上手く生かしていること。営業組織の環境がすごく重要であると感じた」ことが着想のきっかけだ。
聞けば中内氏自身も、もともとDeNAでゲームのディレクターをしていた際に「あるイベントが発生すると、ユーザーはどのように動くのか」という1つ1つのユーザー体験を徹底的に数値ベースで記録に残し、上手くいった事例を再現できるように意識してきたそう。
そんな経験が組み合わさって「営業組織」と「データ計測と再現性を生み出す仕組み」を掛け合わせたBuff Salesのアイデアが生まれた。
もっとも、「スケーラブルな教育サービスを作りたい」と中内氏が話すように、Buff Salesは最初のとっかかりにすぎない。特許の関係もあり現時点で具体的な内容は明かせないとのことだが、これまで蓄積してきたナレッジとテクノロジーを活用した「営業力育成サービス」を開発している真っ只中だという。
同サービスは今後のBuffにとって柱となる事業のひとつであり、早ければ5月〜6月にもローンチ予定とのこと。一体どのようなサービスが誕生するのか、またローンチの際に詳しく紹介したい。