再生エネに頼る送電網の安定化に取り組むMaltaが約53億円調達

エネルギー供給網が化石燃料から主に再生可能エネルギーによるゼロエミッションソースの使用へと移行するにつれ、太陽光や風力で断続的に生み出されるかなりの量のエネルギーを貯蔵して使用するという能力が必要とされている。

だからこそ、新たに5000万ドル(約53億円)を調達したばかりのエネルギー貯蔵テクノロジーデベロッパーMalta(マルタ)のような企業のテクノロジーがかなりの注目と投資を惹きつけている。

Maltaは、Google(グーグル)の親会社Alphabet(アルファベット)の特別プロジェクトからスピンアウトし、需要ピーク時(先週のテキサス州の電力供給網に影響を及ぼしたような状態だ)にエネルギーを放出する長期エネルギー貯蔵を提供する新しい方法において、いくつかのかなり古いテクノロジーの組み合わせに頼っている。

Maltaの最新の資金調達ラウンドはスイスの天然ガス、メタノール、農業の複合企業Proman(プロマン)がリードし、既存投資家からは再生エネルギーや持続可能なスタートアップに次々と投資しているBreakthrough Energy Ventures、産業用フィルターと熱交換器メーカーのAlfa Lavalが参加した。Facebookの共同創業者でAsanaの共同創業者兼CEOのDustin Moskovitz(ダスティン・モスコヴィッツ)氏も本ラウンドに加わっている。

熱交換はMaltaのアプローチの中心にある。これはノーベル賞を受賞したスタンフォード大学の物理学教授Robert Laughlin(ロバート・ラフリン)氏の研究に基づいている。2017年の論文で、ラフリン氏はエネルギーを貯蔵するのに極低温記憶装置と過熱溶融塩を送る熱ヒートポンプを使ったシステムを提案した。

初期デザインを元に、AlphabetのムーンショットファクトリーであるXのエンジアたちはラフリン氏が提案したデザインの修正バージョンの開発を開始した。

その修正デザインが、2018年にXからスピンオフしたMaltaが現在取り組んでいるものだ。

再生可能エネルギープロジェクトデベロッパーRye Developmentで以前働いていたMaltaのCEOであるRamya Swaminathan(ラミャ・スワミナサン)氏は現在のMaltaのシステムが約60%の効率でエネルギーを貯蔵・放出できると述べた。それはあまりいい数字ではない。しかしスワミナサン氏は再生エネルギーのコストの減少は、価格がコスト曲線まで下がり続ける中で効率がさほど重要ではないことを意味する、と話した。「実際には、我々は電気代がゼロに近づくシステムに向かっています」とスワミナサン氏は述べた。事実、一部の送電網が風力や太陽光で発電された電気が過剰になったときにマイナスの価格モデルを展開しているように、Maltaのテックはより魅力的なものになっていると述べた。

再生可能エネルギーの構築によって引き起こされるさまざまな発電問題を解決すべく長期貯蔵の開発を行っている企業はMaltaはだけではない。エネルギー貯蔵のジレンマに取り組んでいる複数の企業のリストをFortuneが記事化している(実際、筆者が書きたかったものだ)。

そこには、Energy VaultとAdvanced Rail Energy Storage North Americaが含まれる。両社とも長期貯蔵に機械的エネルギーの使用を試みている。Energy Vaultの場合、重さ1トンの巨大なセメントブロックを持ち上げるのに再生可能エネルギーを使っている。貯蔵されたエネルギーを電力として放出するためにブロックを落とす。ARES North Americaは似たようなコンセプトを用いているが、巨大なブロックの代わりにエネルギーを貯蔵・放出するのに電車を使っている。

マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とするMaltaの事業所の近くに、Maltaのエネルギー貯蔵システムと競合しそうなものに取り組んでいるForm Energyという会社がある。この会社はTesla、破綻した巨大バッテリーテックデベロッパーのAquion、A123 Systems(リチウムイオンバッテリー革命の祖)などの企業で働いていたエネルギー貯蔵のスーパースターによって設立された。

Maltaのシステムは10時間以上にわたって100メガワットを放電できる。スワミナサン氏によると、これはリチウムイオンバッテリーと競合するような価格での1ギガワットアワーの生産に相当する。

同社は現在、初の商業規模プラントに取り組んでいて、2024年から2025年の委託を想定している。

一方、競合他社はかなり巨大な貯蔵プロジェクトからすでに電気を供給している。Energy Vaultによると、同社は供給網に約35メガワットアワーを放電できるスイスの全国公共送電網にデモンストレーションユニットをつなげた。

Promanのような企業はMaltaを好んでいる。というのも、同社の化学・天然ガスの顧客に提供できるからだ。

「長期で低コストのエネルギー貯蔵ソリューションに対する急激なグローバル需要があります。Maltaの拡張性と技術的に堅牢なソリューションを発展させていくことを同社を楽しみにしています」とPromanのCEOであるDavid Cassidy(デビッド・キャシディ)氏は声明で述べた。「投資とともに、Promanは商業規模のプラントにMaltaと取り組み始める際に補完的なデザイン、エンジニアリング、建設の専門性をMaltaに提供します」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Malta再生可能エネルギー資金調達電力網

画像クレジット:Jose A. Bernat Bacete/Moment / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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