南アフリカのVC企業Knife Capitalが資金52.5億円確保、シリーズB10〜12社への投資を計画

南アフリカのベンチャーキャピタルであるKnife Capital(ナイフ・キャピタル)は、シリーズBの資金調達を目指すスタートアップ企業のために5000万ドル(約52億5000万円)の資金を調達している。同社のKnife Fund III(ナイフ・ファンドIII)はAfrican Series B Expansion Fund(アフリカのシリーズB拡張ファンド)と呼ばれ、南アフリカのスタートアップ企業の積極的な拡大に直接投資することを目指すものだ。また、同社はアフリカの他の地域を拠点とする企業に向けた共同投資も計画している。

その最初の投資ファンドは、Knife Capital Fund IまたはHBD Venture Capital(HBDベンチャー・キャピタル)として知られ、Eben van Heerden(エベン・ファン・ヘールデン)氏とKeet van Zyl(キート・ファン・ジル)氏が運営するクローズド・プライベート・エクイティ・ファンドだった。これによって同社はいくつかのスタートアップ企業に着手資金を提供した。また、そのポートフォリオからは、VISAによるフィンテック系スタートアップのFundamo(ファンダモ)の買収や、UberEats(ウーバーイーツ)によるorderTalk(オーダートーク)の買収など、重要なエグジットも生まれた。

2016年にこのVC会社は、Knife Capital Fund IIとして現在の所得税法第12J条(アーリーステージの企業に対するVCなどからの投資については100%の税控除を行う法案)を利用した投資オファーを開始。主にシリーズAステージに投資する同ファンド(KNF Ventures)は、8つのスタートアップをポートフォリオに抱えている。同社は2020年、このFund IIを拡張して新規投資家に開放する意図をTechCrunchに語っていた。その計画は、スタートアップ企業にネットワーク、資金、拡大の機会へのアクセスを与えることだった。

「南アフリカやアフリカの企業の国際化を支援したい」と、共同経営パートナーのAndrea Bohmert(アンドレア・ボーマート)氏は当時語っていた。その証拠に、同社のポートフォリオ企業の1つであるDataProphet(データプロフェット)は、米国と欧州に進出するために600万ドル(約6億3000万円)のシリーズAを調達している。

ボーマート氏がTechCrunchに語ったところによると、第3のファンドを設立した目的は、南アフリカのベンチャーキャピタルの資産クラスを特徴づけてきた深刻なシリーズBの資金調達ギャップに対処するためだという。この問題は、南アフリカのスタートアップ企業にとって、ビジネスの潜在能力を十分に発揮できなかったり、早期に撤退せざるを得なくなる結果を招くことがあった。

「最近では、200万ドル(約2億1000万円)から500万ドル(約5億2500万円)の資金調達が可能な企業が増えています。それらの企業は、自国内で事業を展開している限り、私たちの場合は南アフリカですが、現地のコスト構造から、それだけの資金があれば成功を収めることができるでしょう」と、ボーマート氏はいう。「しかし、これらの企業が国際的な牽引力を得て、母国以外の国でインフラを構築する必要が出てくると、そのためには多額の資金調達が必要になります。現在のところ、南アフリカ企業がより大きな市場に打って出るための資金調達を積極的に展開し、500万ドル以上の小切手を書ける南アフリカのVCファンドは、おそらくNaspers Foundry(ナスパーズ・ファンドリー)以外にはほとんど存在しません」。

その結果、アフリカは国際的なVCのインキュベーターになってしまったとボーマート氏は主張している。そのような国際的なVCは、高額の小切手を書くことはできるが、多くのスタートアップがまだ現地で必要とするサポートを提供することはできない。

同様に、国際的な投資家が南アフリカで積極的に現地の共同投資者を探してラウンド投資を行っている例もあるが、現地でそのような共同投資者が見つからない場合、投資を進めるチャンスを失うことになりかねない。Knife Capitalは、このファンドを立ち上げることで、このようなギャップを埋めたいと考えていると、ボーマート氏は語っている。

「私たちは、国際化を目指す南アフリカのテクノロジー企業のために、シリーズB投資の話し合いをリードできる国際的な投資家から、共同投資を行うために選ばれる地元のリード投資家になりたいと考えています」。

Knife Capitalは先週、南アフリカに拠点を置く投資会社のMineworkers Investment Company(MIC、マインワーカーズ・インベストメント・カンパニー)から1000万ドル(約10億5000万円)を確保した。この公約により、MICは他の国内外の投資家と並んで、このファンドのアンカー投資家となる。

MICのCIOであるNchaupe Khaole(チャウプ・カオール)氏は、地元の機関投資家がベンチャーキャピタル投資にアプローチする方法を変える動きは、以前からMICのパイプラインの中にあったと説明する。そしてKnife Capitalとの提携により、このアイデアは具体化し始めている。

「我々のコミットメントは、経験豊富なプレイヤーとして当社が持つ多くの強みとともに、今回の投資を実現するものになるでしょう。その1つは、我々と提携することで南アフリカ経済に実際に目に見える変化をもたらすと、ポートフォリオ内の企業を感化させる当社の能力です。今回の資金調達ラウンドの成功の鍵となる触媒となることを嬉しく思います」と、カオール氏は述べている。

その他の詳細としては、Knife Capitalは2021年5月までに最初のクローズを行い、年末までに最終クローズを行うことを目標としている。その大半は共同出資となり、10から12社の企業が資金を受ける計画だ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Knife Capital南アフリカ資金調達アフリカ投資

画像クレジット:Knife Capital

原文へ

(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。