【抄訳】
あなたが自分の唾液を真面目に郵送したことのある方なら、今のDNA検査企業が送り返してくる予想外の結果にも興味津々だろう。あなたの祖先は、イベリア半島でうろうろしていたのか? あなたの家族の何代にもわたる言い伝えの中に、科学が認めるものがあるとすれば、それはなんだろう?
メールオーダーのDNA検査を利用する人たちの多くは、その結果の背後にある科学について無頓着だ。なにしろ、それは科学だから。でも、DNA検査企業は強力な監督機関を欠き、自分たちのアルゴリズムをオープンにしないから、ユーザーが得たいと思っている先祖に関する知見が、これらの企業がそうでないと言えば言うほど、主観的であることもありうるのだ。
その点に関して、CBCのMarketplaceのホストCharlsie Agroと彼女の双子の妹Carlyが、5社のDNA検査キットを郵送してみた: それらは、23andMe、 AncestryDNA、 MyHeritage、 FamilyTreeDNA、そしてLiving DNAだ。
CBCはこう報告した: “事実上同一のDNAでありながら、この双子たちはどの企業からも互いに合致する結果をもらえなかった”。
このことに、驚くべきではない。各社が、それぞれ独自の試薬を使ってDNAを分析するから、違いが生ずるのは当然だ。たとえばある一社、FamilyTreeDNAは、双子のDNAの14%が中東起源とした。それは他の4社にはない結果だった。
それ以外では、素人でも予想できるような当たり前の結果が多い。しかし、23andMeのデータだけはおかしい。
CBSはこう言ってる:
23andMeの所見では、先祖が“大まかにヨーロッパ人”(“Broadly European”)はCharlsieがCarlyより10%近く少ない。Charlsieにはフランス人とドイツ人が各2.6%あるが、Carlyにはない。〔下図〕
この互いに同一の双子は、東ヨーロッパ人の継承も異なり、Charlsieの28%に対しCarlyは24.7%だ。そしてCarlyの東ヨーロッパ人の祖先はポーランドに結びついているが、Charlsieの結果にはこの国がない。
この双子は彼女らのDNAをエール大学の計算生物学グループと共有し、二つのDNAが統計学的に同一、と判定された。疑問に対して23andMeは、同社の分析が“統計的推定”だ、と言った。あなたが顧客なら、この言葉を覚えておくべきだ。
覚えておいた方がよいのは、その検査が正しい科学ではないことだ。対照群はないし、標本サイズは双子のDNAワンセットだけだ。ここから決定的な結果は導けない。でも、興味深い疑問が生ずることは確かだ。
アップデート: 23andMeのスポークスパーソンが次のような声明で、問題の結果のコンテキストを明かそうとしている:
CharlsieとCarlyの23andMeの結果の変位は主に、“大まかにヨーロッパ人”の推定値にある。このカテゴリーはわれわれのアルゴリズムが確信を持ってヨーロッパ人と同定できる層を捉えているが、国などもっと精密な分類の確信はない。双子の一方がより多くの“おおまかにヨーロッパ人”を持っていても、それは矛盾していない。それが意味するのは、一つの個体に関してはアルゴリズムが、より細かい粒度の予測をできるほどの確信を持っていなかったことである。たとえば双子の片方に関しては2.6%のフランス人とドイツ人を同定できたが、他方関してはゲノムのその部分が大まかにヨーロッパ人に割り当てられたのである。
同社が強調するのは、23andMeの先祖検査と健康診断のそれとの違いだ。後者はFDAの規則があり、その基準と精度と臨床的有効性を満たさなければならない。
双子の調査は長年、科学研究において重要な役割を担ってきた。たとえば双子の調査により、中毒や精神病、心疾患などさまざまな特性への生物学的影響と環境的影響の違いを研究できる。23andMeのような企業の場合は、双子の調査が〔今回のように〕同社の秘密のアルゴリズムの特質を明らかにし、ユーザーに対する今後の知見や、企業としての売上のアップに貢献するだろう。
【中略】
民間のDNA検査サービスは、祖先の判定だけでなく、将来の遺伝子病発病の可能性や、健康的な生活のためのアドバイスなど、‘商品’のメニューが多様化している。しかも検査の方法は年々変化し進化している。それとともに検査の‘結果’も変わる。
そこでもう一度言えば、CBCの非公式な実験は決して本物の科学ではなく、またDNA検査サービスもそうだ。ご自分の検査結果をどきどきしながら待っている方に申し上げたいのは、これらの企業がどうやってその結論に到達したのか、その方法や過程や理論について、われわれは知らないことが多すぎる。そのような営利企業を介してあなたの遺伝学的データが大手製薬企業の手に渡るとしたら、そこにはプライバシーをめぐる大きなトレードオフがある。こいつは、よーく考えてみたい問題だよね。