反トラスト法に阻まれてVisaがPlaid買収中止、フィンテック関係者に落胆の声が広がる

報じられているようにVisaはフィンテックスタートアップPlaidとの買収交渉を打ち切った。すでに両者の間では合意があったが、これも無効とされた。消費者向けクレジットカードの大手がフィンテックのAPIを構築しているスタートアップをグループに組み込む可能性はなくなった。

合併に関して当初両者の合意が発表されたとき、買収額は53億ドル(約5510億円)とされた。買収交渉が行われていることを我々が報じたのはちょうど1年前、2020年1月13日だった。しかし2020年11月、米司法省はこの合併に反対した。司法省は「この買収は、在来の貯蓄口座およびさらに進歩的なオンラインデビットカードサービスの分野で、現在生じつつあるライバルを排除することになる危険性がある。したがってこの合併はライバル企業ならびに消費者の利益に反する」と主張した。

当初、VISAは「政府の見解は誤っている」と主張し、争う姿勢を見せていた。

しかし2021年1月12日になって両社は買収合意が正式に解消されたことを確認した。プレスリリースの中でVisaは「最終的には買収を実行できたかもしれないが問題の複雑性を考慮し、(訴訟になれば)解決まで長時間を要することになるのは不適切だと考えた」と述べている。

要するにVisaは手間がかかりすぎる、と嫌ったわけだ。

これに対してPlaidはもっと強気で社内向けのメモに「昨年には、Plaidを利用したサービスに対する需要が前例のないレベルに高まった」と書いている。2020年に始まったフィンテックブームによって一般消費者が無料の株取引アプリや「ネオバンク」に殺到したことを考えれば、昨年のPlaidの成長は驚くべきことではない。結局、PlaidのプロダクトであるAPIは消費者とフィンテック企業を仲介する位置にあるため、両者がいっそう緊密なトランザクションを望むならAPIスタートアップには強い追い風となる。

【更新】Plaidに取材し、今後、独立企業としての計画と、2020年に具体的にどれほどのスピードで成長したかを尋ねた。PlaidはTechCrunchに対して「2020年にはクライアントが60%増加し、4000を超えた」と回答している。顧客ベースの純ドル保有率が中程度だと仮定した場合、Plaidは昨年数百パーセントの成長を遂げた可能性がある。

VisaのPlaid買収は単に1つの取引の中止であることには違いないが、資金力豊富な既存大企業への買収という有利なエグジット(現金化)を狙っていたフィンテック分野のスタートアップやユニコーン企業は失望を隠せない。つまり米司法省による反トラスト法を根拠とした主張で買収が不可能になったわけでないが、大企業はスタートアップの買収により慎重にならざるをない。金持ちの大企業への売却というエグジットを考えていたフィンテックスタートアップ関係者にとって都合のいい話ではない。

これにより、今後、フィンテックスタートアップの買収金額は下がることになると予想される。フィンテックに重点をおくベンチャーキャピタルの意欲を削ぎ、スタートアップの資金調達にも逆風となる可能性がある。フィンテック関係者は、VisaのPlaid買収における高額の企業評価額が、ベンチャーキャピタルによるスタートアップへの投資ラウンドでの評価額にも反映すると期待していた。つまり買収がなくなればその逆、ということになるわけだ。

【Japan編集部】日常用語ではタータンチェックのような格子をPlaidと呼ぶためトップ写真はその模様の布地になっている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:VisaPlaid買収反トラスト法

画像クレジット:Sarah Wardlaw / Unsplash

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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TechCrunch Japan

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