科学的探求の世界でも、フィーチャークリープ(製品などにどんどん機能を付け加えて複雑化すること)の罠にはまることは避けられないようだ、あるいは全ての魚をスキャンするという試みが、全ての脊椎動物に拡大されるこのケースは、クリーチャークリープとでも呼ぶべきだろうか。数十の教育学習機関が、2万匹以上の動物から詳細な3Dスキャンを作成するために、リソースを確保している。
この事業の始まりは、ワシントン大学の生物学者Adam Summersが、海のすべての魚をスキャンする探求を始めた20年前に遡ると言えるだろう。その当時は常軌を逸していると考えられたプロジェクトは、今では本質を付いているとしか言いようがない。科学データをデジタル化して共有する新しい手法はどこにでも芽吹いているし、Summersの先駆的研究は他の専門家たちに同様の試みを促して来た。
フロリダ自然史博物館のDavid Blackburnは、Summersのコレクションを補完するために、彼の専門分野であるカエルを全てスキャンする、という試みを決意した。しかし、他の人びとも同様のやり方で寄与したいと考えていることが明らかになったため、 彼らはきちんと資金を得て全てをスキャンすることを決意した 。ともあれすべての脊椎動物が対象だ — もしあらゆる節足動物や、刺胞動物などまでスキャンしようと思ったら作業量は1桁(あるいは2桁)多いものになるだろう。
結果として立ち上がったプロジェクトはopenVertebrate(略してoVert)という名前だ。国立科学財団(NSF)から250万ドルの補助金を受けている。最新のスキャニング、配信、再現技術を利用して、その情報を最大限、包括的かつアクセス可能なものにしようとしている。蛇の肋骨の微小骨折の証拠を調べたい爬虫両生類学者が居る?ここを見に来れば良い。恐竜のサイズでトカゲの頭蓋骨を3Dプリントしたい10歳児も居る?よし頑張れ。
プロジェクトのゴールは、脊椎動物のほんの一部にすぎない2万体のスキャンを達成することだが、それらは慎重に選ばれ、すべての属の80%がカバーされる。ということで複数のロビン(ツグミ属に所属)が入ることはないが、複数の鳴き鳥(スズメ目に所属。属は目の下位分類)は入ることになる。
チーム、いや、むしろサイエンスアライアンス(この用語は今作ったもの)は、様々なアーカイブに保存された標本をスキャンするために、さまざまなツールを使用している。その中でも中心的に用いられているのは、X線を使用して詳細な内部イメージを生成するCTマシンだ。これはSummersがずっと利用してきたものだが、異なるマシンには異なる適用対象がある。
テキサスA&M大のものは、最大6フィートまでスキャンすることができるほどに大きなものであるのに対し、Summersの使うマイクロCTスキャナーは小さな標本の詳細部分を捉えることができる。たとえば、以下の画像では、人間の親指大のカエルが、アリを1匹食べていることがわかる。
さらに以下の凄い写真を見て欲しい、例えばこの大食らいのブタハナヘビはどうだろう。サンショウウオ(消化中)とカエル(嚥下中)を食べたところだ。
いくつかの選ばれた種では、柔組織のコントラストを見るために、臓器の構造、血管並びに他のシステムを見えるようにする。その結果は以下に示した通りだ。
提供されるのは静止画だけではない。操作、ダウンロード、そして(蛇がどのような種類のカエルを食べたかを把握したい場合などに)分離が可能な詳細な3Dモデルなのだ。
現存の全てのカエルの各科のCTスキャンデータを、オンラインで公開しました。
それらは、デューク大学が提供する3DデータのリポジトリであるMorphoSourceにアップロードされる。アカウント登録の必要があるが、モデルは自由にアクセスできる。ここではカエルの巨大なコレクションを見ることができる (もしこのポストが少々両生類推しのように見たらなら、抗議はBlackburnの方へお願いしたい)。
データは、一度適切にタグ付けされクリーンアップされてしまえば、教師や生徒たちにとって、あるいはホッキョククジラの内側を見たいと思っていたのにチャンスがなかった好奇心のある人にとって、非常に貴重なものとなる。
「これは、博物館にとって、コレクションにアクセスする見学者たちに大きくリーチできるという意味で、ユニークな機会です。私たちは、oVertは脊椎動物学に関連する研究と教育のための変革的なプロジェクトであると信じています」 とBlackburnはワシントン大学に対して語っている 。
プロジェクトが完了する時期については特に述べられていない。ただ9月1日に正式に始まるということが決まっているだけだ。しかし、NSFの資金援助を受けているからには、誰もが自分の仕事が連邦レベルでサポートされていることを意識しながら働いているはずだ。そしてプロジェクトが進めばさらに多額の資金が出てくることになるだろう。
最後に。より詳しい情報を知りたい人たちのために、パートナーの完全なリストを示しておこう:
フロリダ大学、ドレクセル大学自然科学アカデミー、カリフォルニア科学アカデミー、コーネル大学、自然史博物館、ハーバード大学、ルイジアナ州立大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校のスクリプス海洋学研究所、テキサスA&M大学、カリフォルニア大学バークレー校、カンザス大学、ミシガン大学、テキサス大学オースチン校、ワシントン大学、バージニア海洋科学研究所、そしてイェール大学。
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(翻訳:Sako)