大画面化しつつキーボードやスピーカーを刷新した16インチMacBook Proの実力を改めて検証

13.3インチモデルの処理性能を大きく上回る最上位モデル

16インチMacBook Proはアップルのクラムシェル型ノートPCの最上位モデル。15インチ(正確には15.4インチ)モデルの後継モデルとしてリリースされており、アップルの直販サイトで15インチモデルはすでに「認定整備済製品」しか販売されていない。

MacBook Proには13インチ(正確には13.3インチ)モデルも用意されているが、16インチモデルが大きく異なるのは搭載されているプロセッサーのグレードと、外部グラフィックスの有無。13インチモデルのプロセッサーは最大4コアのCore i7で外部グラフィックスは非搭載、16インチモデルは最大8コアのCore i9で外部グラフィックス搭載と、処理性能が大きく異なっている。

16インチMacBook Pro(税別価格24万8800円〜)、本記事で掲載している製品は筆者の私物。ディスプレイには非光沢フィルム、キーボードには保護ステッカーを貼っている(以下同)

フルスペックモデルの価格は65万1800円

16インチMacBook Proには、2.6GHz 6コアプロセッサ/512GBストレージ/AMD Radeon Pro 5300Mで税別価格24万8800円と、2.3GHz 8コアプロセッサ/1TBストレージ/AMD Radeon Pro 5500Mで税別価格28万8800円の2つの標準構成モデルが用意されている。メモリーはどちらも16GBだ。

筆者が購入し、今回レビューしているのは後者の上位モデル。直販サイトではプロセッサーを2.4GHz版、メモリーを最大64GB、ストレージを最大8TB、外部グラフィックス「AMD Radeon Pro 5500M」をビデオメモリー4GB版から8GB版にアップグレードできるが、その場合の価格は65万1800円とかなり高額になるし、一般店舗と違って値引きも受けられない。というわけで筆者は標準構成の上位モデルを購入した。

プロセッサー、メモリー、ストレージ、外部グラフィックスを最上位にした場合の価格は税別で65万1800円。搭載メモリー、ストレージの上限が増えたぶん、フルスペックモデルの価格も上昇している

最新薄型ノートPC向けプロセッサーの約1.6倍の処理性能を発揮

8コアの16インチMacBook Proの処理性能は非常に高い。今回のマシンには第9世代(Coffee Lake)の「Core i9-9880H」(8コア16スレッド、2.30~4.80GHz)が搭載されているが、CPUベンチマーク「CINEBENCH R15」で「1501cb」、「CINEBENCH R20」で「3536pts」というスコアを記録した。

第10世代(Comet Lake)の「Core i7-10710U」(6コア12スレッド、1.10~4.70GHz)は、CINEBENCH R20のスコアが2200 pts前後なので、8コアの16インチMacBook Proはその約1.6倍の処理性能を備えていることになる。

「CINEBENCH R15」のCPUスコアは1501cb

「CINEBENCH R20」のCPUスコアは3536pts

ACアダプターを外してもパフォーマンスを維持

特筆しておきたいのがバッテリー駆動でも処理性能が落ちないこと。今回、「Adobe Premiere Pro CC」で5分の4K動画を書き出す所要時間を、AC接続、バッテリー駆動それぞれで計測してみたが、どちらでもほぼ同等の3分20秒前後で処理が終了した。

Hプロセッサーと、より高速な外部グラフィックスを組み合わせているクリエイター向け、ゲーム向けノートPCの多くはバッテリー駆動で処理性能が大きく低下する。電源を確保できない場所でも最大パフォーマンスを発揮できることは、たとえ処理性能で劣るとしても使いやすい仕様と言える。

AC接続時、バッテリー駆動時に3回ずつ計測を実施した。それぞれ大きく計測結果がぶれた回があるが、それを除外すればAC接続、バッテリー駆動のどちらでも3分20秒前後で書き出しを終えている

物理的なESCキーはやはり必須だと改めて実感

16インチMacBook Proのキーボードは、バタフライ構造から、打鍵感や打鍵音を改善したと謳う改良型シザー構造に変更している。その主な目的は故障率の改善だ。実際、筆者もバタフライ構造のキーボードを搭載したMacBook Proを使っていたが、打鍵感の異常が発生して2回修理した。短期間に複数回キーボードの不具合に遭遇した経験から言わせてもらえれば、やはりバタフライ構造のキーボードには欠陥もしくは無理があったのではないか。

もうひとつの大きな「勇気ある撤退」が、物理的なESCキーの復活。利用頻度の高いESCキーを手探りで打てなかったのは非常に不便だった。ふたつの物理キーがTouch Barをはさんでいるのはデザイン的には野暮ったいかもしれない。しかし、アップルが使い勝手を優先させてESCキーを復活させたことは大歓迎だ。

Windowsでもファンクションキーをほとんど使わない筆者にとって、アプリによって機能が変わるTouch Barと物理ESCキーは理想の組み合わせだ

他社の追随を許さないサウンド品質をさらに数段上に向上

筆者は複数の媒体でPCのレビュー記事を書いているが、アップル製品、特にMacBookはほかのノートPCの数段上のサウンドクオリティーを実現していると、数年前から考えている。今回の16インチMacBook Proはそのサウンドクオリティーをさらに数段上に引き上げたというのが率直な感想だ。

完全に再設計された6スピーカーのハイファイサウンドシステムが搭載されているとのことだが、1.62cmの薄型ボディーから再生されているのが信じられないほど伸びやかで、広がりのある音楽を楽しめる。サウンド品質を最優先してノートPCを選ぶのなら、16インチMacBook Pro以外に選択肢はないと言える。

16インチMacBook Proは合計で6つのスピーカー(上に2つ、下に1つ×左右)を内蔵する

16インチMacBook Proを購入してから、リビングなどで音楽を聴く機会が格段に増えた。筆者にとってどこにでも手軽に持ち運べるオーディオシステムのような存在になっている

高負荷なクリエイティブワークを快適にこなしたいなら16インチモデル

16インチMacBook Proの購入を検討している方が最も心配するのはサイズと重量だろう。しかし、ディスプレイが15.4インチから16インチに大きくなっているわりには、本体サイズは幅349.3×奥行き240.7×厚さ15.5mmから幅357.9×奥行き245.9×厚さ16.2mm、重さは1.83kgから2kgと、体積・重量ともに約1.09倍増に留まっている。

モバイル性能を重視するなら現行13インチMacBook Proか、その後継モデルが最適だ。しかし、高解像度RAW画像の現像や、4K動画の編集・書き出しを快適にこなせるマシンを探しているのなら、ある程度のサイズ・重量増は割り切って16インチMacBook Proを選ぶことを強くオススメする。なお、筆者は13インチから16インチMacBook Proに買い換えたが、いま非常に満足しているということを付け加えておこう。

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TechCrunch Japan

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