子ども向け健康ウェアラブルKiddoが約18.5億円調達、喘息・心臓病・自閉症・糖尿病といった慢性疾患にフォーカス

正式にはGood Parents Inc.(グッド・パートナーズ)として知られるKiddo(キドー)は、米国時間1月4日に1600万ドル(約18億5000万円)のシリーズAラウンドを発表した。ウェアラブル、ペアレンタルコーチング、テレヘルスの組み合わせを通じて、同社は慢性の健康障害を抱える子どもたちのケアの管理にしっかりと照準を定めている。

Kiddoは、子どもの健康のためのウェアラブルとソフトウェアの組み合わせの開発に、数年前から取り組んでいる。2016年に同社を設立したJaganath “CJ” Swamy(ジャガナス・“CJ”・スワミー)氏は当初、子どもたちが楽しく利用でき、親たちが健康状態をモニタリングできるような健康とウェルネス向けデバイスの開発に関心を持っていた。しかし同社は現在、慢性の健康障害の管理に全面的にフォーカスするように刷新されている。

スワミー氏がTechCrunchに語ったところによると、そのフォーカスは、同氏自身の経験から部分的に着想を得ているという。同氏がアーリーステージの投資家からの転換期にあるとき、息子の1人が喘息のような呼吸障害を抱えるようになった。

「息子に起きていることについて、日々管理と監視を行い、その情報を医師に伝えて治療手順の適切な修正につなげることに苦労していました」とスワミー氏はTechCrunchに語っている。「このような大変な課題を経験する中で、慢性疾患を持つ子どもたちを管理しなければならない親たちのために、こうした体験をより良いものにするにはどうすればよいかを考え始めました」。

その結果生まれたのが、2歳から15歳までの子どもを対象としたケアコーディネーションプラットフォームのKiddoである。子どもは専用のリストバンド(FitBitのようなもの)を受け取る。親がダウンロードするアプリは、そのウェアラブルからデータを収集して、その情報を子どもの主治医に伝える。同プラットフォームには、喘息、心臓病、自閉症、糖尿病の子どもをモニタリングするための特別な設計が施されている。

今回のラウンドは、Clearlake Capital(クリアレイク・キャピタル)の支援を受けるVive Collective(ヴァイヴ・コレクティブ)が主導した。これでKiddoの調達総額は2500万ドル(約28億9000万円)になる。その他の投資家には、Wavemaker 360(ウェーブメーカー360)、Wavemaker Asia Pacific(ウェーブメーカー・アジアパシフィック)、Mojo Partners(モジョ・パートナーズ)の他、Techstars(テックスターズ)と関連ファンドが名を連ねている。

概して、Kiddoは「遠隔患者モニタリング」のカテゴリーに分類される。患者が自宅でプライマリケア施設と同等の基本的なケアを受けられるように設計されている。

このウェアラブル端末は心拍数、温度、SpO2(血中酸素飽和度)、動作、発汗などの信号を送信する。一方、アプリはそのデータを、地域の大気環境(喘息患者にとって重要な指標)、天気、湿度などの他の指標と統合する。時間の経過に伴い、Kiddoはこれらの特質に基づいてそれぞれの子どもに対するプロファイルを生成していく。こうした指標が基準から大きく逸脱している場合、親は通知とともに、家庭での状況をコントロールするのに役立つヒントのリストを受信する。

例えば、子どもが喘息発作の切迫の徴候を示している場合、親は呼吸数と心拍数が規則的な範囲外であることを示唆する警告を受け取る。その後、アプリは状況を管理する方法について一般的な提案を行う。「『1時間ほど安静にさせる、冷たい水を飲ませるかエアコンの効いた環境に置く、医師のアドバイスに基づいてアルブテロールを服用させる』といったことです」とスワミー氏は説明する。

症状が続く場合は、親がこのアプリを使って医師の予約を取ることができる。

遠隔患者モニタリング自体のアイデアは新しいものではないが、近年そのアイデアに関する研究が数多く発表されている。例えば、学術誌「Telemedicine and e-Health」に掲載された2020年のあるシステマティックレビューでは、レビューされた272件の論文のうち43%が2015年から2018年の間に発表されていることが示された。これらの研究の約77%で、遠隔患者モニタリングが患者ケアに正のインパクトを与えている。

Kiddoは自社サービスの臨床的検証に投資しているが、スワミー氏によるとデータはまだ一般公開されていない(同氏はフォローアップメールで「データは機密であり、顧客と共有するためだけにある」と説明した)。一方で、学術機関やパートナー、民間団体の研究によって「Kiddoプラットフォームの多くの側面が実証」されていることに同氏は言及している。そのプロセスには、Children’s Hospital of Orange(オレンジ郡小児病院)のThompson Autism Center(トンプソン自閉症センター)で開発中の新たな研究が含まれる予定であるという。

同プラットフォームは、治療アドヒアランスを50%以上向上させ、不要な救急外来を「2倍」減少させることが自社独自のデータで示されているとスワミー氏はいう。ただし、このデータも公開されていない。

Kiddoは現在のところFDAからの承認は得られていないが、Class I(低リスク機器の分類クラス)の認定を目指している。

プレスリリースによると、同社はこれまでに7つの医療システム、福利厚生プロバイダー、財団と提携しており、その中にはUHC Optum(UHCオプタム)、PC Health(PCヘルス)、および「数カ所の小児病院」が含まれている(その他の提携先は明らかにされていない)。

重要な点として、同社はあくまでもB2Bプロバイダーとしての位置づけにあるとスワミー氏は語っている。直接消費者に販売する計画はなく、医療機関や医療システムとの提携に注力していく。

Kiddoの最新の資金調達ラウンドは、同社にとってユーザーに関する重大な1年を経て行われたものとなる。これまでのところ、同社は7万人の子どもたちと協力関係を築いており、今後数年間でその数を20万人に拡大する計画である。このトラクションは投資家の関心を引く要因の1つであるが、Kiddoに有利に働くトレンドはこれだけではない、とスワミー氏は指摘する。

遠隔患者モニタリングに好都合となり得る規制の動きもある。従来、遠隔モニタリング技術のためのCPTコード(償還コード)の数は限られていた。2018年以降、一部のコードが再目的化されており、医療提供者が患者の遠隔モニタリングに課金しやすくなるようなコードも追加されている。

そのトレンドは続いている。2022年、Centers for Medicare and Medicaid Services(メディケア・メディケイド・サービスセンター)は、遠隔患者モニタリングに適用される償還コードの範囲を拡大した。これにより、支払者はこれらのサービスをさらに多くの種類の遠隔患者モニタリングに請求できるようになった。

遠隔患者モニタリングの規制的展望はまだ流動的であるが、これらの規制はKiddoのような企業を支援する方向に進んでいる。スワミー氏によると、こうしたCPTコードの恩恵を受けて、Kiddoの技術は償還可能なものになっているという。「私たちが取り組んでいる医療システムには、財務的な成果があります」と同氏は付け加えた。

今回のラウンドを機に、Kiddoのセールスおよびプロダクト開発チームの規模を拡大したいとスワミー氏は考えている。同氏はまた、Kiddoが治療できる慢性疾患の種類を増やすという大望も抱いている。現時点で同社は、小児腫瘍学と整形外科に目を向けており、今後2年間でその方向に一層前進することを目指している。

画像クレジット:Kiddo

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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