安定雇用による再犯率低下を目指して刑務所内でプログラミング教育を展開するThe Last Mile

アメリカの刑事司法がぶっ壊れていることは、今や公然たる事実だ。全国で220万人の人が刑務所や拘置所にいるアメリカは、刑務所/拘置所人口が世界最大だ。本誌がトークショウ・コンテンツBullishを提供するのは昨年の5月以来久しぶりだが、今回はTransmedia CapitalのゼネラルパートナーでThe Last Mileの協同ファウンダーChris Redlitzに、テクノロジー業界が刑事司法の改革のために果たすべき役割について聞いた。The Last Mileはサンクエンティン刑務所の中にあって、入所者に起業の心得やプログラミングを教えている。

“アメリカの刑務所の大きな問題は、出所しても仕事がないため、累犯率(再犯率)が60%以上もあることだ。彼らは、前と同じことをして、刑務所に舞い戻ってくる”、とRedlitzは語る。“彼らが、雇用してもらえるスキルを身に付けることがきわめて重要だから、刑務所でプログラミングを教えることにした。プログラミングは、雇用者がもっとも求めるスキルのひとつだからだ。したがって、学習者のモチベーションも高い”。

The Last Mileはこれまで、出所者のテクノロジー企業への就職のお世話もしてきたが、その多くは初期段階のスタートアップだ、とRedlitzは語る。

“今の刑務所は、大きな人材プールでもある”、とRedlitzは述べる。“この事業を始めてから分かったのは、才能や資質はあるのに道を踏み外してしまった人が、とても多いことだ。だから、すこし教育訓練を施せば、彼らは雇用されうるし、今日のテクノロジー企業に多くの価値を加えることができる”。

SlackのCEO Stewart ButterfieldとFacebookのCEO Mark Zuckerbergがサンクエンティンに来て、The Last Mileの事業に参加している人びとを見ていった。“彼らはここで行われていることをよく理解したから、求職者が刑務所を出たばかりの人であると分かっても、もう驚かないだろう”、とRedlitzは言う。この二つの企業はまだThe Last Mile出身者を一人も雇用していないが、感触としては彼らは前向きだったそうだ。

“まだまだ時間はかかる”、とRedlitzは語る。“現状は、理解と納得の前の議論の段階だ。でも将来的には良い結果になることを、確信している”。

先週トランプ大統領は、刑事司法に関する三つの大統領令を発令した。それらは、防犯体制の強化と、暴力団の取り締まり、そして警官への暴行の罰則強化だった。でも、刑事司法の仕組み全体をコントロールできるのは連邦政府だけなのに、これらの大統領令の具体的な中身と効果が現状では曖昧だ。でも、トランプのやることの中にThe Last Mileにネガティブな影響が及ぶものはない、と Redlitzは考えている。

“嬉しいことに、刑務所人口のうち連邦の管轄下にあるものはわずか10%だ。多くは各州の司法の下にあり、そしてカリフォルニア州はわれわれがやっていることを積極的に支持している。知事のJerry Brownも個人的に支持してくれているから、トランプ大統領になって何かが悪い方へ大きく変わる、とは考えられない”。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。