専門知識がなくてもネット予約受付ページが作れる「Coubic」は、2014年4月のリリースから1年間で導入事業者が1万件を突破した。ユーザー調査によれば、導入前に使っていた予約システムは「ない」という回答が77%。Coubicを運営するクービックの倉岡寛社長は、ネット予約を裾野が広がっている証拠と話す。その同社が22日、米DCMとグリーベンチャーズ、個人投資家から総額3億1000万円の第三者割当増資を実施した。
ビジネス支援機能でマネタイズ図る
CoubicはPC、スマートフォン、タブレットに対応した予約ページが無料で作れるサービス。電話やメール経由の予約もオンライン上の予約台帳に記入できるため、あらゆる予約を一元管理する「クラウド型予約台帳」として使える。サロンやヨガ教室といったスモールビジネスを中心に導入している。
現在の収益は月額4980円で広告非表示、予約情報のCSV出力、アクセス解析が可能となるプレミアムプラン。ただ、無料プランでも予約管理数・顧客管理数が無制限なため、ハッキリ言って有料・無料プランにほとんど差はない状況だ。今回の調達資金をもとに顧客管理機能を強化し、有料ユーザーを増やす狙いがある。
具体的には、来店頻度に応じて顧客を絞り込んだり、来店から数カ月後にメールを自動送信するなど、休眠顧客を掘り起こす「セールスフォースの簡易版のような機能」(倉岡氏)を追加する。導入事業者からの要望が多い決済機能も年内に投入する予定だ。「Coubicにとって予約は入口にすぎない。事業者のビジネスを支援する機能でマネタイズを図る」。
Coubicの競合となるのは、日本航空やヤマハ、ソフトバンクなど1200社の導入実績がある「ChoiceRESERVE」が挙げられる。こちらはフリーミアムモデルのCoubicと違い、月額5000円〜2万円の有料サービスだ。米国では、倉岡氏も参考にしていると語る「BookFresh」が、2014年2月にモバイル決済のSquareに買収されたことで話題になった。
競合はリクルート、サロン当日予約アプリの勝算は?
クービックは今年2月、渋谷周辺の美容院やネイル、エステなどのサロン当日予約に特化したアプリ「Popcorn(ポップコーン)」を公開した。ユーザーは、当日限定の縛りがあるかわりに、人気サロンのサービスが最大70%オフで予約できるのが特徴。予約と同時に事前登録したクレジットカードで決済する仕組みなので、サロンとしてもドタキャンを防げるメリットがある。
以前の取材で、サロンの開拓は「ドブ板営業」が中心と語っていた倉岡氏。現在も同社のスタッフがサロンを訪問し、口説いて掲載しているのだという。最近ではCoubicを導入するサロンからの流入も増え、掲載サロン数は100件目前。夏までに500件を目指す。
予約成立数については「3桁」(倉岡氏)と数字を濁すように、まだ決して多くはない。サロンの当日・直前予約のビッグプレイヤーといえば、ホットペッパービューティーでお馴染みのリクルートだが、倉岡氏は「勝算はある」と自信をのぞかせる。
「プロダクト面では1〜2タップで予約ができ、Uberのようにその場での決済不要な体験は差別化につながる。Uberも最初はドブ板のようなことをやっていたが、サンフランシスコの熱量が他の地域にも飛び火し、インバウンドでやっていけるようになった。Popcornでもまずは渋谷周辺で熱量を高めたい。狙い目は人口密度の高い地域。シンガポールや台湾の進出も視野に入れている。」
今回の増資に伴い、ゴールドマン・サックス証券のヴァイス・プレジデントを務めていた間庭裕喜氏が取締役に就任する。同時に、リードインベスターを務めるDCMのジェネラルパートナーの本多央輔氏を社外取締役として迎え入れる。海外事情に精通したDCMとの取り組みは、Popcornアジア進出の布石となっているのかもしれない。