屋内農業向け水質・土壌管理システムを手がけるデンマークのNordetectが約1.6億円調達

屋内農業が拡がりを見せている中、屋内作物の効率と品質の向上を目指して、より優れたデータやモニタリングツールを事業者に提供する新しい企業が続々と誕生している。

そのうちの1つ、コペンハーゲンに本社を置くNordetect(ノルディテクト)は、政府系投資会社やSOSVのような伝統的なアクセラレータから約150万ドル(約1億6300万円)の資金を調達。垂直型農場における養分や水質の監視・管理の方法を改善するという技術を携え、米国市場に参入しようとしている。

温室や倉庫を使った管理農業は、植物が最適な生育条件で育つように、投入物のあらゆる側面を管理できるという利点がある。しかし、単に地面に種を蒔くよりもはるかにコストは高くなる。

このような農業の支持者たちは、水の使用効率を高めたり、農薬や肥料の使用を減らしたり、より品質の高い、美味しい農作物を栽培することで、追加費用を抑えることができると提案している。

そこで登場したのが、Keenan Pinto(キーナン・ピント)氏とPalak Sehgal(パラック・セーガル)氏によるNordetectだ。共同設立者の2人は、8年前にインドで大学生だった頃からの知り合いだ。2人は修士課程で一緒に学び、セーガル氏が植物の開花システム、ピント氏は根を専門に、植物のバイオエンジニアリングに取り組んだ後、2人はよりデジタルな分野に進んだ。だが、植物への強い興味は変わらず、お互いに連絡を取り合っていた。

セーガル氏は医療診断、ピント氏は研究機器の開発という専門的な仕事に従事し、2人とも多忙な日々を送っていたが、植物科学と土壌の健康に関する議論は続けていた。

約3年前、2人は水質監視と土壌の健康管理を組み合わせたツールキットのアイデアを思いついた。セーガル氏はそれまで勤めていたインド工科大学を辞め、コペンハーゲンでピント氏と合流し、Nordetectの事業案の核となる技術の開発を始めた。

同社の技術は、分析装置とカートリッジで構成されている。カートリッジとは、マイクロ流体チップのことで、ユーザーがこれを水槽に挿入してサンプルを採取する。この装置が収集したデータをもとに、農場主は水に入れる栄養素をコントロールして、色や味などの形質を最適化することができると、ピント氏は語っている。

画像クレジット:Shutterstock/Francesco83

Nordetectは2017年にSOSVのアクセラレーター「HAX(ハックス)」に受け入れられ、今回が初めての起業となる2人の創業者は、デンマークから深センに移って事業の開発を始めた。2018年末、同社はデンマークに戻り、SOSVとRockstart(ロックスタート)から少量の追加資本を調達した。

2020年になると、同社は垂直農法が拡大している状況を見て、当初は土壌モニタリングツールだったものに水質モニタリング機能を追加して、屋内農業をサポートするようにした。そこからビジネスが軌道に乗り始めたと、ピント氏はいう。

「興味深いのは、屋外と屋内の市場を比較したときのことです。屋外では少々保守的に感じられましたが、屋内はもっと積極的な印象を受けました。この牽引力のおかげで、今回の資金調達ラウンドでは150万ドルを集めることができました」と、ピント氏は語っている。

今回のラウンドには、Rockstart、Preseed Ventures(プレシード・ベンチャーズ)、SOSV、デンマーク政府の成長基金、そしてニューヨーク州ロチェスターの光エレクトロニクス技術に特化したアクセラレータであるLuminate(ルミネイト)が参加した。

Luminateの参加は、Nordetectが米国に進出する理由の1つだが、それだけではない。同国には、室内農業の企業に資金を提供する資本もある。米国で最大の垂直農法企業であるPlenty(プレンティ)とBowery Farming(バワリー・ファーミング)は、それぞれ5億4100万ドル(約589億円)と1億6700万ドル(約182億円)を調達している。

「垂直農法は、データファーマーズと呼ばれる人々を生み出しています」と、ピント氏はいう。「そこでは、生産物の各束は学習のために使われており、出力よりもデータの方が重要です。私たちはこの市場を足がかりとして利用しました」。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Nordetect農業資金調達

画像クレジット:Bowery Farming Inc. under a license.

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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