州判事がUberとLyftの仮処分停止要求を受け入れ、カリフォルニアでの両社の事業停止を回避

米国カリフォルニア州の控訴裁判所の判事がUberとLyftの要求を受け入れた。これは、ドライバーを従業員として雇用するように企業に求める仮処分は米国時間8月21日には発効しないことを意味する。裁判所では現在、UberとLyftの控訴を審理し、第一審の判決を覆そうとしている。この訴訟の口頭弁論は10月中旬に予定されている。

「控訴裁判所がこの訴訟で提起された重要な疑問を認めてくれたこと、そしてドライバーが自由に仕事をする権利を擁護し続けている間、これらの重要なサービスへのアクセスが遮断されることがないことをうれしく思います」とUberの広報担当者はTechCrunchに語った。

UberとLyftは9月上旬までに、カリフォルニア州で上訴に敗れたり、Prop 22(ドライバーの労働条件に関する法律)が可決されなかった場合、運転手を従業員にする方法についての計画概要を発表する必要がある。本日の早い段階で、Lyftは8月21日の夜にサービスをシャットダウンするとのブログ記事を投稿していた。明らかに、Lyftはこの状況に飛びついたかたちだ。

「今夜操業を停止することはありませんが、ドライバーのための独立性と利益のために戦い続ける必要があります」とLyftの広報担当者はTechCrunchに語った。「11月の投票で決まるドライバーが望む解決策が通らなければ、アプリベースのプラットフォームで稼ぐカリフォルニア州民の80〜90%がその機会を失うことになります」と続ける。

今月、UberとLyftの両方は法廷で「ドライバーを独立した契約社員として分類し続けることがを許可すべきだ」と主張(未訳記事)した。裁判官はこれに異議を唱え、8月21日からドライバーを従業員として待遇することを強制する仮処分命令を両社に出した。これを受けて両社は、カリフォルニア州での事業を一時的に停止せざるを得ないと述べた。米国時間8月20日、UberのCEOであるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏はVox Mediaのポッドキャストで「Uberは5万人のドライバー全員をひと晩で雇うことはできない」と語った。

「我々の事業は稼ぎたい人と運送や配達を希望する人をマッチングするプラットフォームをベースにしています。一朝一夕には変えられません。時間がかかると思いますが、カリフォルニアで事業を続行する方法を見つけたい。私たちはカリフォルニアにいたいのです。しかし裁判になれば会社を閉鎖せざるを得なくなり、世界最高のエンジニアがどうすればこの会社を再建できるかを考え出す必要が出てきます。仮に、ドライバーを従業員として雇用するモデルに移行することになった場合、ドライバーの生産性を保証しなければなりません。雇用されるドライバーの数ははるかに少なくなると考えています。私の推測では、労働時間の柔軟性を求めてUberを利用しているユーザーの70~80%は、5〜10時間程度の運転では稼げなくなるでしょう。運賃は上がってしまうでしょう。サンフランシスコでは20%程度上がると思います。小都市ではさらに上昇するでしょう」とコスロシャヒ氏。

UberがProp 22で提案しているのは、基本的にギグワーカーを分類する第3の方法だが、ギグワーカーの労働環境改善を目標とする団体Gig Workers Collective(ギグワーカーズ・コレクティブ)の共同創設者であるVanessa Bain(ヴァネッサ・ベイン)氏は、第三の方法は「でたらめだ」と昨日のVox Mediaのポッドキャストで語った。「現在の法律で認められている範囲をはるかに超えています。」と同氏。

以下にこれまでの経緯を時系列で記しておく。

2020年1月1日
Assembly Bill 5(集会法案第5号)が成立。2018年12月に初めて導入されたこの法案は、Dynamex Operations Westとロサンゼルス最高裁判所で争われた訴えの判決を体系化したものだ。この裁判では、DynamexはABCテストと呼ばれる当該判断基準によって、労働者を独立請負業者として不当に分類したとの判決が下された。ABCテストでは雇用事業体が労働者を法的に独立請負業者に分類するために、「A:労働者が雇用事業体の管理と指示から自由であること」「B:事業体の事業範囲外で作業を行っていること」「C:定期的に行われる業務と同じ性質の独立した取引、職業、または事業に従事していること」を証明しなければならない。

2020年5月
カリフォルニア州のXavier Becerra(グザビエ・ベセラ)司法長官は、ロサンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコの各市の弁護士とともに、UberとLyftが労働者を独立した請負業者として誤分類することで、不当かつ違法な競争上の優位性を得ていると主張する訴訟を提起(未訳記事)。

この訴訟では、UberとLyftは労働者から最低賃金、残業代、有給の病気休暇、障害保険、失業保険の権利を奪っていると主張している。サンフランシスコの高等裁判所に提訴されたこの訴訟は、カリフォルニア州不正競争法に基づく違反、場合によってはドライバー1人あたりに対して2500ドル(約26万5000円)、高齢者や障害者に対する違反に対してはさらに2500ドルの罰金支払いを求めていた。

2020年6月
ベセラ司法長官らが、UberとLyftに対して運転手を直ちに従業員に分類するよう強制することを求める仮処分の申し立て(カリフォルニア州裁判所プレスリリース)を行う。

2020年8月6日
カリフォルニア州高等裁判所のEthan P. Schulman(イーサン・P・シュルマン)判事が仮差し止め命令に関する聴取を開始。公聴会でUberとLyftは、差止命令によって多くのドライバーをフルタイムまたはパートタイムで雇用しない方法で事業を再構築する必要があると主張していた。UberとLyftの主張は事実上、ドライバーを従業員に分類することは雇用の喪失につながるというものだ。

「差止命令案は、LyftとUberに取り返しのつかない損害を与え、実際にはドライバーに大規模な損害を与え、乗客にも損害を与えるだろう」とLyftの弁護人であるRohit Singla(ロヒト・シンラ)は公聴会で述べている。

例えば、Lyftは雇用適格性を確認するI-9 Formを処理するだけで数億ドルのコストがかかると見積もっている。そのフォームを提出するだけなら何のコストもかからないが、UberとLyftは人材や給与計算のプロセスにさらなる投資をしなければならないのだ。

2020年8月9日
シュルマン判事が仮処分を認め、2020年8月20日の発効が決まる。

シュルマン判事は命令書に「裁判所は、差止命令の実施にはコストがかかるという幻想を抱いていない。被告がA.B.5を遵守するには、運転手の労働力を雇用・管理するための人事スタッフの雇用など、商習慣の性質を大きく変えなければならないことは疑いようがない」に書いている。

UberとLyftはこれを受けて、それぞれ緊急上訴を行う予定を明らかにした

2020年8月12日
Uber CEOのコスロシャヒ氏は「裁判所が仮処分命令を覆さない場合、Uberはカリフォルニア州で一時的に営業を停止しなければならない」と述べた。Lyftも「カリフォルニアでの営業を一時的に停止せざるを得なくなるだろう」(The Verge記事)とコメントした。

2020年8月13日
シュルマン判事がUberとLyftの上告を棄却。Uberは別の上告を行う予定であるとし、Lyftは州の上告裁判所にさらなる差し止めを求めるとしている。

2020年8月14日
Lyftがカリフォルニア州の控訴裁判所に即時停止の要請を提出。

2020年8月17日
Uberがカリフォルニア州の控訴裁判所に緊急停止要請を提出。

2020年8月19日
カリフォルニア州の控訴審で、Uberが緊急停止要請を申請。サンディエゴとサンノゼの市長が控訴裁判所にUberとLyftの申し立てを認め、差止命令を停止するよう求める。

今後の展望

2020年11月
カリフォルニア州民は、Uber、Lyft、DoorDashが主に資金提供しているProp 22法案に投票する。Prop 22は、ギグワーカーを独立した請負業者として分類することを目的としている。この法案が可決されれば、運転手や配達員は、日本でいう源泉徴収票を発行しなければならないForm W-2の従業員として分類される、新しい州法の適用を免除されることになる。

この投票法案は、仕事中に最低賃金の少なくとも120%の収入保証、経費のための1マイルあたり30セント、医療費、仕事中の怪我のための労災保険、差別やセクハラからの保護、自動車事故と賠償責任保険を実施することを目指している。

画像クレジット:Photo by Smith Collection/Gado/Getty Images / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

投稿者:

TechCrunch Japan

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