巨大スクリーンでのインタラクティブシステムの提供を目指すAudience Entertainment

映画館の楽しみ方が増えることになるかもしれない。踊ったり、跳ね上がったりして楽しむような時代がくるかもしれないのだ。劇場コンテンツと観客をインタラクティブに結ぶ仕組みを提供しようとしているAudience Entertainmentが、本格的な広がりを目指してSDKの提供を開始するとアナウンスしている。

このシステムを使えば、劇場内にいる他の人と一緒に、身体を動かしながら楽しむことができるようになる。主な利用用途としては広告キャンペーンを考えているようだ。全員で立ち上がり、そして腕を振ることでスクリーンに投影されるゲーム画面を操作することができるようになる。あるいは、Disney Cruise Linesのプロモーションで行ったように、ウォータースライダーを滑り降りるドナルドダックをコントロールしたりすることもできる。

ファウンダー兼CEOのBarry Grieff(National Lampoon Magazine、Rolling Stone、およびInterpublic Groupなどで広告関連業務を長く行なっていた人物)は、今の時代を「コンテンツ制作の大転換期」であるとする。リニア型からインタラクティブなものになってきているという話だ。世の中一般に見られるそうした流れを、劇場やアリーナ、コンサート会場などにも持ち込もうと発想したのがはじめなのだそうだ。動きや音をキャプチャーするためにカメラを設置し、それをインタラクティブ(interactive)な進行に役立てようとする。「3D」との対比で、Grieffはこの仕組みを「iD」と呼んでいる。

そしてこのiDがもたらす「集団エンタテインメント」的な要素を盛り込むために、開発者、広告主、そして映画製作者などに、広くシステムを使ってもらいたいと考えた。そこでソフトウェア開発キットを提供することになったようだ。

SDKは、9月29日のAdvertising Weekから提供を開始したいとのこと。但しこちらで早期ベータ版の申し込みを受け付けてもいる。コンテンツについてもAudience Entertainment側で管理を行うのかという問いに対して、チーフ・マーケティングオフィサーのAdam Casselsは「プラットフォームはオープンなものとして提供していきます」と語っている。「インタラクティブ機能を持たせるための仕組みとして使ってもらいたいと思っています。このシステムを使ってもらうことで、一定水準以上のものが簡単に提供できるようになります」とも述べている。

最初に話をきいたときは、失敗に終わった(と言っても良いと思う)「インタラクティブシネマ」の二番煎じかとも思った。しかし、話をきいたあと、実際にシステムを使ってみる機会をもらった。残念ながら大勢の人が集う劇場でのことではなく、Audience Entertainmentの会議室での体験となった。しかし使ってみると面白く、スクリーン上に現れるキューブにタッチしようと夢中になって(傍から見ると少々無様でもあったかもしれないが)飛び上がったりしてしまった。

数十人ないし数百人といった人の動きを感知するためのシステムなので、個々人の動きに細かく反応するといったタイプのものではない。しかしSDKが世に出てくれば、いろいろと面白い仕掛けが登場していくるかもしれない。また、主目的が広告であるのであれば、作るべきコンテンツも、細かな動きによって制御する本格的なゲームというわけではないはずだ。スクリーンに表示されるコンテンツで、観客を「ノセる」ことが重要な目的となってくるわけだ。映画開始前の数分、客がFacebookやTwitterをいじるのに使っている時間を、広告とのインタラクションに使ってもらえるようになれば大成功ということになる。

下にこのシステムを使ったサンプルが入ったビデオを掲載しておく。また実証用のサンプルも用意されている(周囲で身体を動かしながら自分の選択への支持を訴えかける観客の存在は、脳内で補完するしかない)。Audience Entertainmentは今年、デジタルシネマのBrcoとの業務提携をアナウンスしており、実際にシステムを稼働させるための準備を進めている。全世界で3000施設への導入を行う予定なのだそうだ。

Audience Entertainment 2014 Showreel from Audience Entertainment on Vimeo.

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(翻訳:Maeda, H


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TechCrunch Japan

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