建設現場のDX・自動化を目指す東京大学発スタートアップのARAVは3月8日、シードラウンドにおいて第三者割当増資による6300万円の資金調達を行ったと発表した。引受先は東京大学協創プラットフォーム開発(IPC)となる。今回の資金調達で建機の遠隔操作システムパッケージ化などを進めていく考えだ。
ARAVは2020年4月に設立し、ロボット工学を用いて建機の遠隔操作や自動操縦に取り組み、既存の重機に後づけするプロダクトを開発している。建設現場のDXを促進し、研究・開発・実証実験を通じて収集・解析したビッグデータを活用することで、建設現場が抱える課題の解決を目指す。
会社設立から1年経たずにARAVは事業を大きく拡大する。
2020年4月に設立して以来、同社は国土交通省の「建設現場の生産性を向上する革新的技術」に選定されたほか、伊藤忠TC建機と建設機械の遠隔操作実用化に関する開発業務委託契約も結んでいる。
伊藤忠TC建機とは、ARAVの建設機械遠隔操作装置技術をベースに災害対策用遠隔建設機械操作システムの早期実用化を目指す。今後、実際の救助や普及作業を行う消防組織、地方自治体、災害救助犬組織とも連携し、実証実験を行う予定だ。また、現在10社以上の建機メーカーらと遠隔および自動化の共同開発を行っているという。
今回の調達資金では事業投資と採用活動の強化していく。特に遠隔操作システムのパッケージ化や自動制御システム開発を行う方向だ。
遠隔操作では、災害時や製鉄所といった過酷な労働環境下における対応を進め、実用化を目指す。一方、自動制御システムは単純な反復作業がともなう現場を改善していくため、開発に注力していく。
この他にもARAVは、建機メーカーだけでなく建機のリース会社とも提携して、特殊な建機を購入せずに遠隔操作や自動運転できる建機を日本中で利用できる環境を整備していく。
ARAVの白久レイエス樹代表は東大IPCからの資金調達について「取引先企業様と実証実験した成果を踏まえた量産化準備に向け、β版の生産体制を構築するための人材採用を強化し、ベンチャー企業としてさらなるDXソリューションを提供できるよう取り組んでいく」とコメントした。
日本生産性本部の調査によると、建設業界は年間60兆円という市場規模を持ちながら、1990年代以降の労働生産性は横ばいとなっている。労働時間は他産業と比べて年間300時間も多く、過酷な労働環境は若年層の定着率低下を招く一因となっている。しかし、国交省によると、業界内の労働人口における高齢者(60歳以上)は全体で4分の1以上を占めるなど、人手不足の改善、生産性向上が大きな課題となっている。