建設保険市場でデジタル体験と契約決定の簡易化を図るShepherdが約6.8億円調達

建設市場に特化したインシュアテックのスタートアップであるShepherd(シェパード)は、Spark Capital(スパーク・キャピタル)が主導する615万ドル(約6億7500万円)のシードラウンドを獲得した。この資金調達イベントは、2月にSusa Ventures(スサ・ベンチャーズ)が主導してプレシードラウンドを実施した後に行われたもので、Susa VenturesはShepherdの最新の資金調達イベントにも参加している。

広い意味では、Shepherdは、消費者よりも他の企業に販売するネオ・インシュランス・プロバイダー(次世代保険会社)に該当する。消費者にサービスを提供するインシュアテックのスタートアップ企業は、株式公開のために何年にもわたってベンチャーキャピタルの支援を受けてきたが、初期の楽観的な見方に続き、公開後すぐに株価が下落してしまっていた。

しかし、Shepherdや9月初めに発表されたBlueprint Title(ブループリント・タイトル)のような企業は、保険業界の他の場所にもアプローチする余地があることに賭けている。Shepherdは、建設市場をターゲットにしており、過剰賠償責任保険から始めて、この業界を切り開こうとしている。

同社の共同設立者兼CEOであるJustin Levine(ジャスティン・レヴィン)氏は、TechCrunchの取材に対し、建設業界の契約者は、一般賠償責任や商用自動車保険など、多くの保険を必要としていると述べている。しかし、大掛かりな建設プロジェクトでは、さらに多くの賠償責任保険が必要となることが多く、それらは超過保険やアンブレラ保険として販売される。

Shepherdは、建設業界のミドルマーケット ─ 年間2500万ドル(約27億4600万円)から2億5000万ドル(約274億6400万円)規模のプロジェクトを行う企業─ をターゲットにしており、顧客との契約を支援する方法として、テクノロジーを活用したいと考えている。

レヴィン氏によると、同社が提供するサービスには2つの核となる部分があるという。1つ目は、お客様が期待しているもの、つまり、お客様のための完全なデジタル体験だ。CEOは、そのデジタルサービスを、インシュアテックの世界においてあって当たり前のものだととらえている。私たちも同じ考えだ。しかし、別の建設テックプロバイダーと提携して、保険契約決定を手助けするという、もう一方の部分を考慮すると、同社はさらに興味深いものになる。

例えば、このShepherdは、同社の事業に投資したProcore(プロコア)と提携している。

契約決定の判断を手助けするのを第三者のソフトウェア会社に委ねるというコンセプトは、ある意味では理に適っている。新しい技術や手法を採用するという点でテクノロジーに前向きな企業は、そうでない企業と比べて契約決定のプロファイルが同じではない。一般的に、データが多ければ多いほど契約決定の判断がしやすくなる。建設会社が機能するよう支援するソフトウェアにつなげることは、その観点からも理に適っていると言えるだろう。

初期の顧客が同社の製品のことを「建設管理ソフトウェアを装ったリスク管理ソリューション」と呼んでいたことに納得しているとProcoreのCEOは、TechCrunchの取材で語っている。リスクが効果的に管理されればされるほど、Shepherdの損失率は時間の経過とともに低下し、価格競争力が高まると考えられる。

価格に関して、現在建設保険市場は苦戦しているとレヴィン氏は考えている。決済コストの上昇により、この分野の手つかずの古い保険(レガシー保険)の中には、予想以上の損失を抱えているものもあり、一部の保険会社は価格の引き上げを余儀なくされている。レヴィン氏は、Shepherdがこのレガシー保険を持たずにこの市場に参入したことで、競争力のある価格を提供できるようになったと考えている。

過剰賠償責任保険は、Shepherdが建設保険市場に参入するための「くさび」であり、いずれ他の商品も販売する予定だという。同社のCEOによれば、超過賠償責任保険を最初に取り組むのは、このエリアが同市場において現在最も痛みを伴っている場所だからだという。

率直にいうと、TechCrunchはB2Bネオインシュアランスのスタートアップ市場に魅力を感じている。消費者に保険を販売するには、保険の種類によって異なる特定の売上原価(COGS)が必要であり、しばしば市場投入コストがかさむ。さらに、莫大な予算を持つナショナルブランドに対抗するには、顧客獲得コスト(CAC)が厄介なことになる。新興のテック企業にとっては、事業保険市場のほうが有利かもしれない。ベンチャー投資家は、きっとそのような賭けをすることを望んでいる。

Sparkの案件を担当したNatalie Sandman(ナタリー・サンドマン)氏は、最初にShepherdに出会ったときは別のプロジェクトに取り組んでいたのだが、注意を向けてみると、心に刺さったとTechCrunchに語った。この投資家は、建設保険の契約プロセスに新しいデータを導入するというアイデアが、同社がよりスマートな意思決定をするのに役立つ可能性があると述べている。保険の世界では、契約の選択肢が増えれば、より収益性の高い保険になる。つまり、将来のキャッシュフローが大きくなるということだ。そして、それが価値創造につながることは誰もが知っていることだ。

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画像クレジット:Dibyangshu SARKAR / AFP / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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