成層圏気球で宇宙クルーズを目指すSpace Perspectiveが2021年に試験飛行を予定

商用宇宙旅行ビジネスへの参入を目指す新しい企業がある。ただし、これまでとは違うユニークな乗り物を使用するというのがミソだ。Jane Poynter(ジェーン・ポインター)氏Taber MacCallum(テイバー・マカラム)氏が創設したスタートアップSpace Perspective(スペース・パースペクティブ)は、高高度気球で地球の大気圏縁まで与圧カプセルを飛ばすことを目的としている。このカプセルには8名の乗客が搭乗でき、6時間の飛行が楽しめる。予定料金は1人12万5000ドル(約1300万円)。

同社によれば、この計画では「Spaceship Neptune」(スペースシップ・ネプチューン)と呼ばれるカプセルに乗客や観測機材を載せて、高度およそ3万メートルを巡航することになっている。厳密にはそこは宇宙ではないが、地球が丸いことが実感できる壮大な眺めを同社は約束している。Space Perspectiveの説明では、6時間の空の旅の内訳は、上昇に2時間、大気圏の縁の飛行に2時間、地上への帰還に2時間となっている。計画では、フロリダ州のケープカナベラル宇宙センターから気球によって打ち上げられたカプセルは、大西洋上に帰還し、着水後に乗客とカプセルが船で回収される。米連邦航空局(FAA)がSpace Perspectiveの有人飛行全体を監督することになるが、予定されている有人ミッションに先立ち同局との事前協議が行われている。有人飛行が実現するのは、少なくともまだ数年は先になる見込みだ。

どこかで聞いたような話だと感じた方もいるかも知れない。おそらくそれは、Space Perspectiveの創設者が駆け出しのころに、これとよく似た事業を展開する会社を立ち上げているからだろう。ポインター氏とマカラム氏は、以前にWorld View(ワールド・ビュー)という成層圏気球の企業を共同創設している。当初のミッションは、通信や地上観測用の機材の打ち上げだったが、カプセルに人を乗せて気球で飛ばすミッションも目標として表明されていた。

World Viewは今も営業しているが、ポインター氏は、昨年2月、CEOの座をRyan Hartman(ライアン・ハートマン)氏に譲った。World Viewの第一本社はアリゾナ州にある。製造と打ち上げ施設の運営をそこで行い、技術の開発と展開を続けつつ、定期的に気球を打ち上げている。

Space Perspectiveは、それとはまったくの別会社だと同社の担当者は私に話してくれた。前述のとおり、同社はフロリダ州のケープカナベラル宇宙センターからの打ち上げを予定しているが、将来的にはフロリダ州のセリル宇宙港、アラスカ州とハワイ州の民営打ち上げ施設なども必要に応じて使用することになるという。

画像クレジット:Space Perspective

このスタートアップは、Neptuneカプセルの試験飛行を、早ければ来年から開始する計画を立てているが、人はまだ乗せられない。その代わりに、実験機器を載せることになる。これも、Space Perspectiveが市場投入を目指す技術目標のひとつだ。

この事業は、「ほぼ宇宙」旅行業界の面白い入口になるだろう。SpaceX(スペースエックス)がCrew Dragon(クルー・ドラゴン)で計画しているプライベートな商用宇宙飛行には及ばないが、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)やBlue Origin(ブルー・オリジン)の事業を肩を並べる魅力的な対抗手段となり得る差別化がそこにはある。ポインター氏とマカラム氏はこの事業を、World Viewがより実用的な産業と商用ペイロードのミッションに集中できるよう、そこから離れたベンチャーとしてスタートさせたようだ。それによりSpace Perspectiveは、高高度有人飛行という特別な目標をより大きく掲げられるようになった。

画像クレジット:Space Perspective

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(翻訳:金井哲夫)