救急サービスを改善する次世代プラットフォーム開発のCarbyneが26億円調達

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックへの対処に関しては救急サービスが引き続き主力だ。米国時間1月14日、救急サービスの改善を支援するテクノロジーを開発する企業が、事業を拡大し続けるための資金調達ラウンドを発表した。

Carbyne(カーバイン)は救急サービスを対象としたクラウドベースのプラットフォームを開発するイスラエルのスタートアップだ。このプラットフォームは、電話をかけてきた人々に関するより完全な情報を特定し、より迅速に応答するための新しい遠隔医療サービスとなる。同社は2500万ドル(約26億円)を獲得した。

同社の計画は、開発中のテクノロジーおよび同社のサービス提供先となる市場や組織の観点から、サービスを次のレベルに引き上げることだ。このサービスはパンデミックの前からすでに力強い成長を遂げていた。

「Carbyneは昨年創業したわけではありません。私たちはすでにかなり長い間、クラウドサービス、ビデオ、ロケーションを911に売り込んでおり、パンデミック前に2億5000万人にサービスを提供していました」とCEOのAmir Elichai(アミール・エリチャイ)氏はインタビューで述べた。「しかし、緊急サービス向けのクラウドソリューションは、新型コロナで『あると便利』から『なければならない』ものになりました」。

同社は、公衆衛生プロバイダーや、CentralSquare、Global Medical Response(GMR)などのグループと提携しており、米国では市場の約90%をカバーすることが目標だという。

シリーズB1はHanaco VenturesとELSTED Capital Partnersがリードし、元CIA長官のDavid Petraeus(デービッド・ペトレイアス)氏、Founders Fund、FinTLV、その他の既存の投資家も参加した。

これがB1ラウンドであるという事実は、今後数カ月の間に同社に対しさらに多くの資金が提供されることを示している。いずれにせよ、2500万ドル(約26億円)は同社が調達を予定していた金額よりも多かった。

「2020年に1500万ドル(約16億円)を調達する計画でした。新型コロナが始まり、私は従業員の誰にも去ってほしくないと思いましたが、状況がどうなるかわかりませんでした。そのため、代わりに一律に給与を削減しました」とエリチャイ氏はいう。「しかしその後、第2四半期から収益が倍増し始め、第3四半期と第4四半期に160%増加しました。今回、資金を集めるのは簡単でした」。

資金調達は同社の非常に力強い成長、特に昨年の急成長の後に行われた。

Carbyneのサービスは現在約4億人をカバーしており、2020年3月から10日ごとに新しく導入されている。

CTOのAlex Dizengoff(アレックス・ディゼンゴフ)氏およびエンジニアリングリードのYony Yatsun(ヨニー・ヤツン)氏と会社を共同で創業したエリチャイ氏はインタビューで、過去9カ月間にCarbyneが救急医療サービス(EMS)チームに約1億5500万のロケーションポイントを提供したと述べた。新しい製品も増えている。EMSチームがリモートで支援を提供するサービスは、その間130万分相当のビデオを蓄積したと同氏は述べた。

TechCrunchの理解によると、この資金調達によりCarbyneの評価額は「1億ドル(約104億円)以上」になる。エリチャイ氏は具体的な数値を示すことを拒否した。参考までに、同社は直近2018年に資金調達したときに「約」1億ドルと評価された。それは1500万ドル(約16億円)のラウンドで、Founders Fundがイスラエルのスタートアップに投資したのはこれが初めてだった。

2020年の成長とビジネスに対する継続的な需要は、その「以上」が大きいことを示している。確かに前回のラウンド以来、世界全体そしてCarbyne自体もいくつかの重要な変化を遂げた。

2018年や当時私たちが経験したどんなドラマも、現在の危機のいくつかと比較すると、遠い昔の出来事で、ほぼ平穏だったように感じられるだろうか。特に、新型コロナのパンデミックはCarbyneと直接関係がある。

ウイルスに起因する病気である新型コロナ感染症は悪性でしぶとい病気であることがわかっており、最も悲惨で深刻な症状(呼吸不能や臓器不全)を抱える人々を襲うことがよくある。しかも、回復しつつあるかもしれないと彼らが思い始めたときにだ(もちろん、幸いなことにすべての人に当てはまるわけではないが、それでも無視できないほど頻繁に発生する)。

それが救急対応サービスに大きな負担をかけている。それは最初の呼び出しへの対応から、患者との最初の接触、そして最も深刻な患者を病院に運び込みケアするサービスにまで至る。多くの場合、こうしたサービスに従事する人々は、対応可能な能力の限界を超えて働いている。多くの都市の状況は悲惨だというほかない。

Carbyneのテクノロジーは、より多くのデータを提供することで人々の仕事を改善するだけでなく、電話をかけてきた人々にデータを送り返す手段にもなることで、独自性を発揮している。

同社はここ数年でサービスの提供方法に大きな変化を加えた。

たとえば2018年に同社の最後の資金調達ラウンドを取り上げたときは、EMS組織に直接サービスを提供していた。だが基本的にサービスが機能するには、ユーザーがアプリをインストールするか、ユーザーに別のアプリからそのテクノロジーを提供する必要があった。

エリチャイ氏は、Google(グーグル)などの企業が提供する位置情報サービスを統合し、ユーザーがアプリからプラットフォームに接続する必要をなくしたと述べた。

同様に、同社は自治体と協力して業務を効率化するサービスを提供するだけでなく、自治体の対応能力が限界を超えるのを緩和する方法についても、しっかりとリードしている。

その流れの中を受けたプロジェクトがニューオーリンズでの最近の取り組みだ。エリチャイ氏によると、そのプロジェクトで同社はニューオリンズ市が新型コロナの発生に対し真面目に取り組み、管理するのをサポートしたと述べた。詳細は次のとおりだ。

長期的には、米国やその他の国々では、911スタイルの救急対応における多くのレガシーサービスが何年にもわたって必要としてきた刷新をいよいよ行うべきだという強い議論がある。

具体的には、2021年1月月初めに議会で承認された1.5兆ドル(約156兆円)のインフラ法案が、次世代の911サービスの展開のために120億ドル(約1兆2500億円)の資金を割り当てた。

Carbyneは2023年までに約15億人にサービスを提供すると考えている。米国ではこのような動きがあり、新型コロナかどうかにかかわらず、これほどまでに普及していないのはなぜかという点に焦点を当てている。

「市民、緊急通報センター、ファーストレスポンダー、州および地方自治体の間で透明性のある緊急通信を行う機能が緊急対応システムに統合され、確実に命を救い、結果を改善するにつれて、非常に重要であることがわかるでしょう」と元CIA長官のペトレイアス氏は声明で述べた。「Carbyneが提供するものは、最も重要な瞬間のコミュニケーションを劇的に強化します」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Carbyne医療資金調達

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。