新型コロナ禍でVCが尻込みする中、Clearbancはスタートアップ支援の新商品を発表

Clearbanc Runway

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってベンチャー市場が鈍化し、スタートアップの資金調達はますます厳しいものになっている。パンデミックにより市場活動が減退した。これは投資家達にとって流動性の高い取引が減り、スタートアップに回す新規資本(ドライパウダー、待機資金)が減っていることを意味している。

その結果、投資家達は既に資金援助したスタートアップに対し、ディールフローのバブルが戻るまでランウェイを引き延ばす必要があると伝えている。これには数四半期を要する可能性があると投資家たちは話している。2008年度のデータを見ると、数年かかる場合も考えられる。

カナダのClearbanc(クリアバンク)は、Clearbanc Runway(クリアバンク・ランウェイ)という新しい金融商品を発表し、スタートアップの資金確保を支援する。

Clearbancのウェブサイトでは、スタートアップ創業者が現在のランウェイ額、現金残高、諸経費、収益、マージン、成長率などの条件を入力できるようになっている。同社はそのデータを分析し、起業家の持ち分を減らさない形で資金を提供する。創業者はレベニューシェア契約を通じて現金を返済できるようになっている。企業が対象資格を得るには、毎月最低1万ドル(約108万円)の収益と、最低6カ月間の一貫した収益履歴が必要になる。

Clearbancが金融会社のように聞こえるかもしれないが、実際のところ(ほとんど)その通りだ。Clearbancはスタートアップに融資し、返済計画に上乗せして利子を請求する。ただし同社は金融会社として規制されていないため、法的には金融会社にはならない。ローンには固定返済スケジュール、複利、返済日があるが、Clearbancにはそうした要素はない。その代わり売上に対する定率を取り分とし、スタートアップの業績が下がれば、返済されるまでしばらく待つことになる。同社がスタートアップ創業者にペナルティを課すことはないらしい。

レベニューシェア契約では一律6%の手数料が課され、その返済は既に資金調達プランの一部となっている。Clearbancからの投資を受けるスタートアップの売上が前月比で伸びている場合、企業が取得できる資金調達合計額はそれに反映される。

クリアバンク・ランウェイ グラフ

Clearbanc Runwayは同社のフラッグシップ商品「20分タームシート」に似ている。

Clearbancは、20分タームシートを作り、企業がGoogleやFacebookの広告に費やせるように、希薄化しない広告資金を取得できるようにした。株式資本が関わることから、スタートアップは貴重なベンチャー投資資金をその他の経費に使用することが前提とされた。Clearbanc Runwayはさまざまな目標を実現させている。

「我々は当初、主に広告費用に重点を置いていた。今では企業を維持するためのあらゆる経費に資金供給できる」とClearbanc共同創業者のAndrew D’Souza(アンドリュー・ドゥスーザ)氏は言及した。Clearbanc Runwayでは、将来エンタープライズ、ソフトウェアビジネス、eコマースビジネスにも資金供給する。

この2つの商品におけるわずかな違いは、新商品の方がやや保守的であるという点だ。Clearbancはこのパンデミックの状況下で、eコマースビジネスに多額の資金供給を行っているため、独自の位置にいる。そうしたインターネットビジネスは、新型コロナウイルスの大流行で実店舗が閉店する中、トラフィックを増やしている。

ただしそれは「不安定で、先行きは不透明だ」とドゥスーザ氏は言及している。「我々が6カ月前よりもさらに保守的になるのは明らかだ。おそらく、より少額をより頻繁に投資する感じになるだろう」。

Clearbancはベンチャーキャピタル企業とディールフローで競ってはいない。その代わりに、小規模事業に融資を行うフィンテック企業と競うことになるだろう。そしてその焦点は珍しくもなければ、新しくもない。

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2020年3月、小規模事業が従来の融資資産の代わりにクレジットカードで経費を支払えるようにするPlastiq(プラスティック)は7500万ドル(約81億円)を調達した。決済処理大手のStripe(ストライプ)もStripe Capital(ストライプキャピタル)と呼ばれる融資商品を用意し、一律の利率でインターネットビジネスに融資している。

2020年1月、Lighter Capital(ライターキャピタル)は他のスタートアップに融資するために1億ドル(約108億円)を調達した。これはClearbancのレベニューシェア契約のフォーマットに似ている。これらすべては、融資を行う意思のある企業が多く存在することを示している。どの取引条件が最適かを決めるのは小規模事業の方だ。

ベンチャーキャピタル投資先スタートアップがすべての小規模事業ローンを利用できるわけではない。例えば米国政府が提供した2兆ドル(約215兆円)の景気刺激パッケージで用意された小規模事業への融資は3億4900万ドル(約375億円)だ。しかし新しいガイダンスでは、ほとんどのスタートアップが未だに金銭的支援から除外されている。だが先着順で配布されるため、ローンを申請する者も中にはいる。

Clearbancは、スピード感において競合するサービスと差別化できるという。

ドゥスーザ氏は「『SBA(米国中小企業局)ローン』に申請できるのはすばらしいことだが、時間がかかる可能性がある」と言及した。「莫大な未処理分があるし、取引銀行とそのシステムの設定にもよるだろう」。

ほぼ1年前に、Clearbancの共同創業者であるMichele Romanow(ミケーレ・ロマノウ)氏はIPOとユニコーンについて語っていた。会社の倒産や大量のレイオフを回避するための支援に関するドゥスーザ氏の話を聞くと、Clearbanc Runwayへの敷居は明らかに低くなっているようだ。

同社は2200の企業に対し10億ドル(約1075億円)の投資または金銭的取引を行った。

そもそもClearbancでは、従来の株式資本取引に含まれる所有権譲渡なしに、eコマース創業者がスタートアップを成長させる方法として同社を売り込んできた。現在では、世界中でベンチャーキャピタルが以前より活発ではなくなったことを受け、すべての創業者がビジネスを存続させる方法として売り込んでいる。

原文注:クリアバンクは、従来の金融会社とは異なる金融構造を有しているため、法的には金融会社とは言えないと言及している。記事はこの点を明確にするため更新されている。

画像クレジット: Malte Mueller / Getty Images

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(翻訳: Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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