9月24日に発売される第6世代のiPad miniは、5G対応iPadとして3機種目の端末。“Pro”のつかない一般ユーザーをターゲットにした無印のiPadとしては、iPadやiPad Airを差し置き、初の5G対応モデルになります。筆者が注目しているのも、この機能。そんなわけで一足先に実機を使い、iPad miniの通信関連機能をあれこれチェックしてみました。
まずはeSIMから。物理的なSIMカードを入れていない状態で「設定」の「モバイルデータ通信」をタップすると、auやソフトバンクを含む複数のキャリア名が表示されます。ただし、これはいわゆるApple SIMの名残。iPadのeSIMは、iPhoneとは異なり、eSIM以前から搭載していたApple SIMを統合した形になっています。第6世代のiPad miniでも、それは踏襲されています。
少々分かりづらいのはauやソフトバンクが残っているところで、ここをタップすると、Apple SIMとしてプリペイドプランを端末上から直接契約でる仕組みでした。QRコードの読み取りやアプリが必要なeSIMより進んでいるところではありますが、残念ながら両プリペイドプランは4Gまでの模様。しかもauは新規契約の受付をすでに終了しているため、既存のユーザーしか利用ができません。料金的にも1GB、1500円と高く、あまり利用価値は高くないサービスになってしまいました。
キャリア各社が提供するeSIMを利用する場合は、このメニューで「その他」を選択する必要があります。メニュー的に分かりづらいため、このユーザーインターフェイスはそろそろ見直した方がいいのでは……という気もしますが、後の手順は簡単。「その他」をタップするとカメラが立ち上がるので、キャリアから送られてきたeSIMのQRコードを読み込めばOKです。
今回は物理SIMで試しましたが、売りである5Gにもきちんと対応していました。5G関連の設定はiPhoneとほぼ同じ。消費電力を抑える「5Gオート」が用意されているほか、5G接続時のみ、FaceTimeなどのコンテンツの画質を上げる機能にも対応しています。ただし、初期設定でこれが有効になるのは一部キャリアのみ。オンになっていないと、せっかくの高速通信が生かせないので、忘れずに設定しておきましょう。
周波数的には、iPhoneと同様、4Gから転用したバンドも利用することができます。転用バンドで積極的にエリアを拡大しているKDDIやソフトバンクで使えば、アンテナピクトの横に5Gの文字を見かける機会が多くなるはずです。ただし、転用5Gは帯域幅が狭いこともあり、期待されているような爆速は出ないおそれもあります。例えば筆者の事務所周辺はソフトバンクの5Gエリアですが、スピードテストをすると、100Mbpsをやや超える程度。4G並みと言えば4G並みの速度です。
ここで生きてくるのが、先に挙げたコンテンツを高画質化する機能です。この自動判定機能は、接続している帯域を問わないため、爆速ではない5Gエリアでも有効になります。正直なところ、FaceTimeや動画の高画質化なら、100Mbpsを超えていれば十分。1Gbps超のスピードは必須ではありません。実際、iPad miniで5G接続時にFaceTimeを試してみましたが、その画質はご覧のとおり。肌のトーンや髪の毛の細かな部分までしっかり見えるほどになりました。思わず「おおっ」と声を出してしまったほどです。
このテストでは、筆者のiPad miniからFaceTimeを発信して、矢崎編集長がiPhoneで受けた格好ですが、両方が5Gに接続していたため、筆者の顔もかなり精細に表示されていたようです。ポロシャツに付着したチリまで写っているので、油断なりません(笑)。iPad miniはiPadの中では最小ですが、iPhoneと比べるとやはり大画面。ディテールまではっきり見えて、FaceTimeでも映像の迫力が増し増しになった印象を受けました。
特にこの機能は、iPad miniでこそ使いやすいと感じています。10インチ超のiPadの場合、利用シーンはどうしても室内が多くなり、5Gが届きにくいからです。片手でガシっと握れるiPad miniであれば、よりスマホに近い感覚で利用可能。出先でFaceTimeを着信して、そのまま通話するといったケースにも使いやすい端末だと感じました。iPad miniのモビリティがあってこそ、5Gが生かせるというわけです。
ただし当然ながら、iPadのため、VoLTEなどの音声回線を使った通話はできません。IP電話アプリはインストールできるものの、耳に当たる位置に通話用のスピーカーはなく、近接センサーも対応していないのでディスプレイも消灯しません。片手で持てるので、思わずやってしまいそうになりますが、耳に当てての通話はできないので注意してください。
ちなみに、5Gを有効化できるのは、アップルが認めたキャリアのみになります。iPadシリーズを取り扱っていない楽天モバイルのSIMカード/eSIMをセットすると、表示されるメニューが他3キャリアとは異なっていました。楽天モバイル回線だと5Gのメニュー自体が表示されなくなり、3GかLTEしか選択できません。そのため、上記のようなコンテンツ高画質化の恩恵にもあずかれません。段階制の料金プランはタブレットとの相性もよさそうなだけに、ここはちょっと残念です。
簡単な動画の編集もサクサクこなせて、コミュニケーションツールとしても使い勝手のいいiPad miniは、5G搭載のメリットが大きいと思います。FaceTimeなどの着信ができるのは、常時接続が可能なセルラーの特徴。このポータビリティを生かすのであれば、やはりWi-Fi+Cellular版一択な気がしています。
(石野純也。Engadget日本版より転載)