旅行の計画を立てるとき、それを紙のノートに書きとめたり、PCのメモ帳に書きとめるという読者も多いのではないだろうか。何を隠そう、僕も先日ロンドンに旅行したときには計画をワードに書き出していた記憶がある。なかなかアナログな方法だ。
今日紹介するワンダーラストは、旅行の計画から記録までワンストップで提供するWebサービスの「Compathy」を展開する日本のスタートアップだ。ワンダーラストは本日、モバイル・インターネットキャピタルとSMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額1億3000万円を調達したと発表した。
ワンダーラストはこれまで、旅行記録を投稿と閲覧ができるSNSサービスの「Compathy」とメディアの「Compathy Magazine」(日本語、英語、中国語版)を軸にビジネスを展開していた。だが、同社は今回調達した資金を利用して、サイトから直接ホテルの予約や計画ができる新機能を追加する。また、ワンダーラストに蓄積された「旅行計画データ」を利用した新しい広告プラットフォームの構築も目指す。
ログブックは累計2万5000冊、メディアは月間300万PV
Compathyは、ユーザーが自分の旅行記を記録したり、それを外部に公開できるSNSサービスだ。ユーザーが写真を投稿すると、その場所が自動的にタグ付けされ、旅のルートや時間軸をまとめたログブック(旅行記)を作成してくれる。ユーザーは平均して一度に20枚から30枚程の写真を投稿するそうだ。
他のユーザーのログブックを閲覧することも可能だ。国や地域ごとにまとめられたログブックをお気に入りに登録しておけば、自分だけのオリジナル・ガイドブックを作ることができる。
これまでに作成されたログブックは累計2万5000冊で、月間400冊のペースで増加しているという。ワンダーラストが手掛けるメディア「Compathy Magazine」日本語版のMAUは100万人。英語版と中国版のMAUは合計で10万人だ。日・英・中あわせると、Comapathy Magazineの月間PV数は300万だという。海外ユーザーは全体の10%程だ。
ワンダーラスト代表取締役の堀江健太郎氏は、「情報がフローとして流れがちのFacebookとは違い、自分専用のページに情報がストックとして溜まっていくのが嬉しいという声をよく聞く。ログブックの閲覧はスマホで、投稿はPCでという利用例が多い」と説明する。
Compathyは以前にもTechCrunch Japanで紹介しているので、参考にしてほしい。
ドラッグアンドドロップで行きたいところを追加、ホテルもその場で予約
ワンダーラストは今回調達した資金を利用して、Compathyに2つの新機能を追加する予定だ。
まず1つ目は、旅行の予約機能と計画機能だ。これまでのCompathyは旅行を「記録」しておくサービスだったが、今後新たにサイトから直接ホテルを予約できる機能を取り入れる。
自分の行きたい観光地をドラッグアンドドロップで追加していくと、それを踏まえた旅行ルートが自動的に表示される。そのため、ルートを参考にして近くのホテルを予約することもできる。
僕の個人的な経験だが、旅行で行きたいところをピックアップして、その計画を踏まえて地理的に便利そうなホテルを探すのは面倒な作業だ。1日目に訪れる観光地の近くでホテルを探しても、次の日に訪れる観光地までのアクセスが便利だとは限らない。
だから、観光地をつなぐルートを表示してくれて、さらにホテルの予約がサイト内で完結するのは、僕にとって嬉しい機能だ。現段階では、Compathyから利用できるホテル予約サイトは1つだけだが、今後はホテルや航空予約の比較サイト「Skyscanner」のAPIを利用するなどして、さまざまな予約サイトの料金を一覧で表示していくそうだ。
「旅行版のGoogle Adwardsをつくる」
旅行の予約と計画はユーザーに向けた新機能だ。それに加えて、ワンダーラストはその旅行計画データを利用した収益施策も新たに展開していく。具体的には、ある旅行計画を立てたユーザーに対して広告を表示する権利に、企業が入札できる「リバースオークション」だ。Google Adwardsでは、あるキーワードが検索されたときに広告を表示する権利に入札するという仕組みだが、ワンダーラストが目指すのはその旅行版である。
堀江氏によれば、特にオンラインの旅行会社では、ほとんどの広告費をキーワード広告に費やしているという。しかし、旅行業界ではその費用対効果はそこまで高くない。
例えば、あるユーザーが「ハワイ」と検索したとしても、そのユーザーがハワイに「行きたい人」なのか、「行ってきた人」なのかという時系列は分からない。一方、Compathyが企業に提供するのは旅行の計画データなので、旅行会社にとってはこれから旅行する見込み客に直接アプローチすることが可能になる。
「ネット上には”どこどこに行ってきた”というデータは大量に存在するが、”どこどこに行くつもりだ”というデータはあまり存在しない。そのデータを活用することで、売りたい人に直接売れる仕組みを作りたい」と堀江氏は語る。
この入札機能に対する業界の反応を聞くと堀江氏は、「大手の旅行会社は、まだあまり興味を示してくれていないのが現状。しかし、新しい仕組みも柔軟に取り入れるオンラインの旅行会社は高い興味を示してくれている」と話す。堀江氏は、ホテルの予約機能で実績をつくることによって入札に参加する企業を増やしていきたいと語る。同社が狙う市場の規模は「国内で2700億円」だという。
ホテルの予約と旅行の計画機能は今年4月から正式に公開予定。リバースオークションの仕組みは今年中にも公開したいと堀江氏は語っている。