マッキンゼーの報告書によると、2020年1月以降、遠隔医療サービスの導入は38倍に増加しており、パンデミックに後押しされブームとなっている。コンシューマーと臨床医の間の通信レイヤーを構築する企業が注目されている一方で、テレヘルス環境でモニターまたは対処できる内容を拡大するためのデバイスを開発する企業も増えている。
最近の動きとしては、東京に本社を置くヘルスケアスタートアップのBisu, Inc.(ビース)が320万ドル(約3億5000万円)の資金を調達した。Bisuは、自宅で使用できるラボグレードの検査機器を開発し、実用的な健康データに変換する診断を行っている。今回のシードラウンドは、簡単で正確な尿や唾液の検査を通じて、個人に合わせた栄養やライフスタイルのアドバイスを提供するポータブルホームヘルスラボ「Bisu Body Coach」の立ち上げに使用される。今回のシード資金により、同社の累計調達額は430万ドル(約4億8000万円)に達した。
今回の資金調達は、QUADが主導し、アシックスベンチャーズ株式会社、15th Rock Ventures、パシフィコ・インベストメンツ、SOSV Investmentsが参加した。スポーツシューズ大手のアシックスは戦略的に支援しており、健康・フィットネスサービスの取り組みでBisuと協業していく予定。Bisuは、フィットネス、ペットケア、バスルームなどの分野で他の企業との追加提携を検討していると、共同設立者兼CEOのDaniel Maggs(ダニエル・マグス)氏はTechCrunchに語った。
Bisuは2015年に設立され、2017年にHAXのアクセラレータープログラムに参加して事業を開始した。
Bisu Body Coachは、使い捨て型のテストスティックと、スマホアプリと連動するリーダーを使用する。これらのテストスティックは、マイクロ流体を活用した「ラボオンチップ(Lab-on-a-chip)」技術により、ユーザーがわずか2分でさまざまなバイオマーカーを測定することを可能にする。
マイクロ流体「ラボオンチップ」技術は、分光分析とリアルタイムのエンド・ツー・エンド測定を用いて、従来のテストストリップが抱える測定タイミングの問題を解消する。また、血液、尿、唾液、汗などのサンプルを微小な流路内で操作し、化学的または生物学的プロセスを実行する。
ラボオンチップ技術を採用している他の競合他社との差別化について質問されたBisuは、複数のバイオマーカーを同時に検査することで、ユーザーが医師の診察を受けることなく、食生活やライフスタイルを理解し、前向きに変化させることができることに焦点を当てていると答えた。競合製品は、新型コロナウイルスやインフルエンザなど、重要度の高い個別のバイオマーカーを検出して、ユーザーに医師の助けを求めるように誘導するものが一般的だ。
Bisuアプリは、水分補給、ミネラル、ビタミン、pH、尿酸、ケトン体などの主要な栄養指標に関するフィードバックを提供する。ユーザーの目標、プリファレンス、活動パターン、睡眠、体重などをもとに、Bisu Body Coachはパーソナライズされたアドバイスを表示する。Bisuは今後、亜鉛やビタミンBの測定機能を追加する予定で、犬猫用のペット健康診断キットの発売も見込んでいる。
Bisu Body Coachは現在、米国とEUでベータテストを行っている。2022年にこれらの市場での商品化を目指しており、2023年には日本や韓国などのアジア市場への参入も視野に入れて準備を進めていると、マグス氏は述べている。
同社の中核となる研究開発および生産チームは東京にあり、Bisuのソフトウェアおよびマーケティングチームは米国に拠点を置いている。
マグス氏によると、従来の在宅検査市場は、主に(何らかの疾患を持つ)患者が中心で、約50億ドル規模(約5580億円)と推定され成長を続けているという。
しかし、Bisuの在宅検査は、非患者、つまり、何か特別なことで医師などの治療を受けているわけではないが、自分の体の中で何が起こっているのか知りたいと思っている人たちにも市場を広げる可能性がある。マグス氏によると、非患者向けの在宅診断の市場は、現在約100億ドル(約1兆1160億円)と推定されている。
画像クレジット:Bisu / Bisu platform
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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)