明日のテクノロジーはどう見えるのか、見えない人に聞いてみよう

私は2009年に法律上の盲人と宣告されたが、その頃に自分を盲人と称する人を1人も知らなかった。ましてや「ロービジョン」や「視覚障がい」だと聞くことはまったくなかった。私は現在、世界最大の視覚障がい者コミュニティのBe My Eyesを運営している。Be My Eyesは、ライブのビデオ通話を利用して400万以上の人と企業が200以上の言語でユーザーをサポートするプラットフォームだ。このコミュニティの成長は我々の生活を向上させるために重要な意味を持つステップではあるが、これは現在の状況のほんの一端だ。私は多くの人から「視覚障がい者にとって良い時代だ」と聞いている。

その理由は、ここ10年間で「Sight Tech(視覚に関するテクノロジー)」が急激に進歩したからだ。かつては「支援」や「特別なニーズ」のためのテクノロジーと呼ばれるものが主流だった。今は障がい者が障がい者のために開発したテクノロジーを、あなたや、あなたの子供や、あなたの祖父母が、自身に障がいがあると認識しているかどうかにかかわらず使っている。

Sight Tech、もっと広くいうならEyes-Free Tech(視覚に頼らないテクノロジー)は、いまや私たちの生活や、私たちにとって欠かせないデバイスの至るところに関わっている。その恩恵を受けているのは視覚障がい者だけではない。すべての人にとって恩恵がある。だから私は、12月2〜3日に初のSight Tech Globalカンファレンスが開催されることをうれしく思っている。Sight Techの世界で重要な役割を果たしている人々とともに、視覚障がい者のためのデザインがあらゆる人の生活にどう役立ち影響を与えるか、その過去、現在、未来を語るカンファレンスだ。無料で参加できるので、今すぐ登録しよう

Sight Techとは何か

視覚障がい者が「見る」ことを助ける発明は、何十年にもわたってひっそりと革新を駆り立ててきた。理想に燃える発明家が、困っている人を助けたい、あるいは失われたものを取り戻したいという慈悲深い考えをもって発明をすることも少なくなかったが、Sight Techにおける真の技術の進化は単に障がい者の回復を促すものではない。あらゆる人にとって新しい能力となり、予想もしなかった革新への新しい扉を開く。12インチシングル盤レコードやコンピュータのキーボード、そして現在のデータベースの基盤となっているテキスト認識ソフトウェアはすべてもともとは視覚に障がいのある消費者のために市場に投入されたものだ。

パーソナルアシスタント、読み上げをする人、玄関の前で待っている車は「特別」だと考えられていた時代があった。しかしいまはそうではない。現在、Apple(アップル)、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)が出荷するすべてのデバイスに、特別なボーナスではなく現在のハードウェアとソフトウェアの市場における競争に欠かせないものとして、こうした機能が搭載されている。あなたがスマートフォンをダークモードで使うときも運転中にSiriに話しかけるときも、もともとは視覚障がい者のために開発された「Sight Tech」をあなたも利用している。

視覚障がい者のための設計が、困っている人の支援をはるかに超える費用対効果をあげたことは何度となくあった。オーディオブックは、1934年に視覚障がいをもつ読者のために初めて開発されたときは出版社から激しい抵抗にあったが、現在の出版業界では唯一、成長しているビジネスだ。同様に、ウェブサイトを視覚障がい者向けスクリーンリーダー対応としてコーディングするのは余計な仕事のように思われていたかもしれないが、実際にはSEOを最適化し、標準的でないデバイスを使っている膨大な数のユーザーにとって利用しやすいウェブサイトを作ることにつながった。Sight Techの世界はこのようなうれしい驚きにあふれている。表面的には少数の人のために始まったデザインが、予期せずシンクロし広く使われていくのだ。

TechCrunchの最高執行責任者だったNed Desmond(ネッド・デズモンド)氏が2020年前半に設立したSight Tech Globalが、AIや視覚障がい者向けテクノロジー、デジタルインクルージョン、アクセスの平等に強い関心を持つ人々が集い、アクセシビリティコミュニティの優れた思想家や実践者から話を聴く新しい場としてバーチャルカンファレンスを開催する。参加は無料で、このカンファレンスの利益はすべて75年間にわたって視覚障害者を支援しているNPOのVista Center for the Blind and Visually Impairedの収益となる。

Sight Tech Globalで明らかにされ、声援を送り、議論され、夢を描くのはどんなことか、少しだけご紹介しよう。ぜひカンファレンスに参加していただきたい。全体のアジェンダはウェブページで公開されている

完璧な移動を目指す

ほとんどの人にとって、自動運転車はずっと夢見ていた贅沢だ。免許を取得できない人にとっては、これまで実現できなかったレベルで自立するための鍵となる。Waymoの研究者たちは、初の自動運転タクシーが玄関前に到着したときに、利用者が見える人かどうかにかかわらずすぐ乗車して利用できるようにしなくてはならないと考えて開発をしている。

同様に、地図も視覚障がい者にとっては単なる便利な道具以上のものだ。多くの場合、地図は自分の位置や方向を知る唯一の手段であり、自立するか依存するかを分ける。視覚障がいのある開発者もない開発者も、何十年にもわたって正確で優れたナビゲーションツールを作ってきた。現在、GOOD MapsはLiDARやデータ、高速化されたプロセッサを利用して、視覚障がい者が探している場所を正確に捉えるプロダクトを開発している。

Waymo、Waymap、Good Mapsなどのプロダクトマネージャーが、A地点からB地点への移動に関する未来を語る。

次世代の話すコンピュータ

1980年代後半以降、Freedom ScientificやHumanwareといった企業が視覚情報を音や触覚に変換するソフトウェアを開発しデバイスを作って、アクセシブルなコンピューティングの基礎を築いてきた。専用のアプリが登場するずっと前から、そうしたデバイスはコンピュータを動かし、デジタル点字を表示し、オーディオブックを読者に届けた。

現在は、アップル、アマゾン、マイクロソフト、グーグルといったテック巨大企業が、独自にスクリーンリーダーや支援デバイスを作っている。ナビゲーション、センサーの最適化、テキストと画像の認識などに関する他社製アプリがたくさん作られていることはいうまでもない。新しい機能がOSにネイティブに組み込まれていることで、既存の支援テクノロジー関連企業も進化している。

次のスクリーンリーダーを深く掘り下げる。また、AIやAR、ヘッドギア、触覚などの新しいテクノロジーが業界全体にわたってどのようにインターフェイスを大幅に刷新しパラダイムを変えるかを考える。

アップル、マイクロソフト、グーグル、Vispero、Humanware、アマゾンなどのアクセシビリティのリーダーたちから、2日間にわたって話を聞くことができる。

差別をしないテクノロジー

優れた新しいテクノロジーが、大きな新しい問題を生み出すこともある。AIが日常を良くするために舞い込んできて、視覚障がい者は仕事や社会生活の障壁を克服している。その一方でAIは、我々が想像もしなかった新たな偏見を生み出しかねない。現実の人間を認識し、分類し、やりとりをするためにシステムをトレーニングするが、その際に我々は障がいや多様なニーズをどう扱えばいいのだろうか。我々の文化にある偏見を継承しないマシンをどう作ればいいのだろうか。

障がい者コミュニティ支援に力を尽くしているLainey Feingold (レイニー・ファインゴールド)氏、Haben Girma(ハーベン・ギルマ)氏、George Kerscher(ジョージ・ケルシャー)氏らも、Sight Tech Globalで話をする。市民の権利としての情報アクセスや、AI時代のこれまでとこれからを鋭く語ってくれるだろう。

Sight Tech Globalは12月2〜3日にすべてバーチャルで開催され、無料で参加できる。スポンサーからの収入はVista Center for the Blind and Visually Impairedの収益となる。スポンサーの申し込みはまだ間に合う。詳しくはウェブページを見ていただきたい

【Japan編集部】本記事の著者のWill Butler(ウィル・バトラー)氏はカリフォルニア在住のライター、プロデューサー、ポッドキャストのホスト。19歳から法律上の盲人で、失明への適応に関する多くのストーリーを執筆し、プロデュースしてきた。サンフランシスコでLighthouse for the Blind and Visually Impairedに4年間勤務した後、2019年にBe My Eyesのバイスプレジデントに就任。バトラー氏が視覚障がいやアクセシビリティの世界のリーダーにインタビューする模様は「The Be My Eyes Podcast」「13 Letters」ポッドキャストで聴くことができる。

カテゴリー:イベント情報
タグ:Sight Tech Globalアクセシビリティ

画像クレジット:Molly DeCoudreaux

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(翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

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