今年の初めにUberの東南アジアビジネスを買収した配車サービスのGrabが、新規の資金調達を行うことを発表した。調達は自らも10億ドルを出資するトヨタによって主導される。Grabに近い関係者がTechCrunchに語ったところによれば、この案件におけるGrabの評価額は100億ドルを超えているということだ。
資金提供と引き換えに、トヨタは取締役会に席を得て、幹部をGrabのチームに送り込む機会が与えられる。Grabは新しい投資家と協力して「東南アジアの巨大都市における交通混雑を緩和するための、より効率的な輸送網を作り」、そのドライバーたちの収入を増やすことを目指すと語っている。特にそのために、ユーザーベースの保険、新しいタイプのファイナンスパッケージ、予測的な自動車メンテナンスなどの分野に取り組むトヨタモビリティサービスプラットフォーム(MSPF)との緊密な連携が予定されている。
「Grabと協力しながら、私たちは東南アジアの顧客にとって、より魅力的で安全で安心できるサービスを生み出して行きます」と語るのはトヨタ専務役員である友山茂樹である。
トヨタは昨年、次世代技術基金(Next Technology Fund)を通じて資金をGrabに投入したが、今回は親会社から直接資金が提供される。現代(Hyundai)自動車もまたGrabを後押ししている。
今回の新ラウンドは、ソフトバンクと中国のDidiが共同で主導した25億の投資ラウンドに続くものである。長期投資を行う両社は、昨年まず20億ドルの投資を行った。そのラウンドは2018年の初めに静かに終了したことをGrabは認めたが、結局誰が追加資金を提供したのかについては明らかにしていない。
同社の評価額は60億ドルであったが、Uberの取引以降、トヨタの投資を得て、さらに40億ドルが積み増しされたことは驚くべきことではない。
Grabによれば、現在シンガポール、インドネシア、ベトナム、タイなどアジア8カ国でアプリが1億回以上ダウンロードされているということだ。同社は、その年間予測収益額が10億ドルを突破したと公表したが、損益の数字に関しては回答を拒んだ。
地域の事業を買い取ることによって、Uberを排除はしたものの(ただし、その買収は当初の計画ほどは円滑には進んでいない)、その動きは新規参入を各地域に招くこととなった、特にインドネシアではGo-Jekが主要なライバルとして登場している。現在約45億ドルと評価されているGo-Jekは、最近、4つの新しい市場に拡大する計画を発表し、15億ドルに及ぶ多額の調達を行った。
こうした競争とは別に、シンガポールに本拠を置くGrabは、最近ポイントツーポイントのタクシーサービスやプライベートな配車サービス以外のサービスにも拡大を進めている、たとえばモバイルペイメント、フードデリバリー、そして(ドックレスの)レンタル自転車などだ。今月初めには、Grab Venturesを正式に発表した。これは投資とメンタリングによって、エコシステムの構築を支援することに焦点を絞った部門だ。
Grab VenturesはVC専任組織ではないが、この先の2年間で8から10件の投資を行うことを計画している。またそれは「成長段階」のスタートアップに対してのアクセラレータープログラムも提供する予定だ、ただしそこには現金による株式投資は含まれていない。当部門はまた、新しいビジネスアイデアのインキュベーションにも注力する。これには、様々な企業のオンデマンドバイクを集約し最近開始されたGrab Cycleも含まれている。
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(翻訳:sako)