AIを活用した中古マンションのオンライン買取サービス「すむたす買取」を提供するすむたすは3月25日、不動産仲介会社向けの新サービスとして「すむたす買取エージェント」の無料提供を開始した。本サービスの公開により、不動産売却の新たな手段を提供していくとのこと。
中古不動産の売却には通常、内見対応や価格交渉、購入者の与信調査などの業務が必要となるため、売り出しから価格決定まで1~2週間、売れるまでに3カ月から半年程度かかるのが一般的だと言われている。すむたす買取は、自社開発の価格査定アルゴリズムを活用することで、基本的なマンション情報のみから買取価格を自動算出。買取査定に最短1時間、売買契約後の入金まで最短2日を実現するオンライン買取サービス。同社によると、これまでの累計価格査定額は400億円を超えているとのこと。
すむたす買取エージェントは、すむたす買取のコアとなる技術を用いた仲介会社向けのSaaS。仲介会社が買取査定から契約までを迅速に処理できる環境を提供する。
同社によると、不動産は高額なので売り主は身近な仲介会社に相談したいというニーズがあることから、仲介会社向けのサービスを無料提供するに至ったとのこと。すむたす買取エージェントは2月にβ版をリリース。EQONが運営する不動産エージェント検索サービス「EGENT」(イージェント)経由で、複数の仲介会社で試験導入されていた。その中の1社であるセンチュリー21イズミ東京で、β版サービス導入から2週間で物件の買取が成功したそうだ。すむたす買取エージェントの利用条件は、首都圏で事業展開している不動産仲介会社。実際には、事前審査のあとに利用可能となる。
なお同社は2018年12月に、既存の投資家である500 Startups Japanのほか、新たにGunosy Capital、SMBCベンチャーキャピタル、STAUT、個人投資家1名から、サービス開発体制の強化などを目的とした資金調達を実施していた(金額は非公開)。
TechCrunch(TC)では今回のすむたす買取エージェントの提供と、2018年12月の資金調達についてすむたす代表の角 高広氏に話を聞いた。
TC:既存の「すむたす買取」のコア部分を具体的に教えてください。「すむたす買取」と「すむたす買取 AGENT」との機能差が知りたいです。
すむたす:「すむたす買取」のコア部分は2点あります。1つ目は、基本的な物件情報項目からAIにより中古不動産の買取価格を最短1時間で算出すること。2つ目は、すむたすが直接買取を行うことで、最短2日で売買契約と現金化ができること。今回発表した「すむたす買取エージェント」は仲介会社向けのサービスとなるため、上記に加えさらに2つの機能を備えています。1つ目が、基本情報項目入力の際に仲介会社が事前に持っている情報を聞いてAI算出の際に参照すること。2つ目が、仲介会社が顧客からの過去の査定依頼一覧を確認・管理できることです。
TC:「すむたす買取AGENT」での物件の現地確認は誰が担当するのでしょうか。
すむたす:AIでの査定後、すむたすのスタッフが確認します。
TC:B向けのサービス提供開始後、既存の「すむたす買取」のサービスは続けられるのでしょうか?どちらを主力事業にするのでしょうか?
すむたす:B向けサービス提供は、買取チャネルの間口を広げることを目的としており、あくまでもC向けサービス「すむたす買取」を主力事業として注力していきます。買取チャネルの間口を広げるという部分を補足すると、現在「すむたす買取」ではウェブ広告経由でユーザーと接点を持ってサービスを提供しています。オンライン経由のユーザー層は、転勤などで住み替えを希望する「ポジティブな理由」での早期売却希望が多くみられます。一方で、離婚や相続といった「ネガティブな理由」で早期売却を希望するユーザー層は、サイトには訪れず、不動産会社もしくは税理士や弁護士に直接相談をするケースが多いことがわかりました。そこで、まずは仲介会社向けに「すむたす買取エージェント」を提供して買取の間口を広げ、今後はさらなるB向けサービスとして税理士や弁護士といった士業向けのサービスの展開も検討しています。
TC:「すむたす買取 AGENT」を導入予定の企業を教えてください。
すむたす:個別の企業名は非公表ですが、今回のリリースより30社ほどへの導入を予定しています。
TC:「すむたす買取 AGENT」は利用無料とのことですが、マネタイズの仕組みを教えてください。
すむたす:「すむたす買取エージェント」経由で市場価格よりも安価に買取をした物件をリフォームやリノベーションを加えて再販します。この際の買取価格と再販売上の差分がすむたすの利益となります。なお、買取が成立した場合には、すむたすから仲介会社に紹介料を支払います。
TC:資金調達による開発力の強化について、具体的に進める内容を教えてください。
すむたす:大きくは3つの方向性を考えております。優先順位順に、税理士や弁護士向けのB向けサービス開発、既存のポータルサイトとは異なる特色を持つ物件ポータルサイトの開発、「すむたす買取」の対象エリア拡大、取扱物件の拡充となります。対象エリアについては現在の都内対象から首都圏や地方展開を、取り扱い物件については現在マンション対象から戸建てや土地の取扱を目指します。