HTML5のゲーム開発者向けディベロッパーツールを提供するBlackstorm Labsは本日、楽天との共同出資により設立した楽天ゲームズから「R Games」と呼ばれるプラットフォームを正式リリースすると発表した。日本とアジアにおけるゲームのハブとなることを目指す。
昨年の11月にBlackstormと楽天がこのプロジェクトに取り組んでいると噂されていたが、それが今日正式に発表される運びとなった。Blackstorm共同創業者のErnestine Fu氏は、楽天と手を結むことでアジアのユーザーとの接点をもつことができ、アプリのディストリビューションを強化できると話している。Blackstorm Labsの技術を利用して開発されたアプリは、立ち上げまでの時間が短く、大きなファイルをダウンロードすることなしで通常のアプリと同じクオリティを発揮できる。
「新しい配信プラットフォームをつくりたければ、まずはそこに良質なコンテンツを用意しなければなりません」とFu氏は語る。「初期のコンテンツを用意するのは私たちですが、将来のどこかの時点では、より広範なディベロッパーにも参加してもらう予定です」。
楽天ゲームズのことを「ジョイント・スピンアウト」と呼んでもいいかもしれない。Blackstormが技術開発と社員教育を担い、そのあとに楽天にバトンタッチするかたちだ。楽天ゲームズには既に十数人のゲーム開発者が所属しており、Blackstorm LabsのHTML5関連技術を利用してゲームをリリースしていく。また、同社はタイトーなどと手を組んで「バブルボブル」や「パックマン」などのゲームタイトルを配信する予定だ。
Blackstormから楽天ゲームズに移籍した従業員はいない。もし同社が追加的なパートナーシップなどを望んでいたのならば、これはスケーラブルなシチュエーションだとは言えないだろう。しかし、Fu氏によれば、昨年後半に同社はHTML5ゲームのエコシステムというチャンスが存在すると確信したようだ。
「2日足らずでバブルシューティングゲームを開発しました ― 洗練されたものとは言いがたい出来でしたが」とFu氏は話す。「私たちはそのゲームを楽天に持ち込み、彼らとの対話をはじめました。すべてが『ラフ』なものでしたが、同時に新しい配信プラットフォームの可能性を見出した決定的瞬間でした。当時、HTML5は急速に変化していて、GoogleやAppleもその動きに加わっていました」。
今でもゲームはHTML5の主要な適用分野の1つだ。忠実度が高いゲームを開発することができ、Facebook Messengerなどのソーシャル・プラットフォームにも入り込むことができる。しかし、理論上はBlackstorm Labsがもつ技術をゲーム以外の分野にも適用することは可能だ。ダウンロードされたアプリと同程度のクオリティをブラウザ上で再現するという技術は他のユースケースにも応用できるだろう。
もしそうなれば ― それこそがBlackstorm Labsの主張なのだが ―、 アプリを配信するために雑然としたApp Storeを利用する必要はなくなる。アプリ本体がNews FeedやMessengerに貼り付けたリンクの中に埋め込まれ、しかもそのアプリは通常のものと同じように動作する。
ただ、この技術を広く普及させるまでの道のりはまだ始まったばかりだ。しかも、HTML5でゲームを動作させるのはどんなアプリよりも難しい。しかし、だからこそ同社は「ゲーム」をスタート地点として選んだのだ。
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